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勇者スイッチ  作者: 阿弥登
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第14話 憧れへの第1歩

自分の弱さをねじ伏せてチープ・ドラゴンに立ち向かうフルクト。迫り来る脅威に打ち克つ時は来た!

 誰かの助けになれる人間になりたい――そう思い始めたのはいつからだろう。

 物心ついたときには既に俺はヒーローに夢中だった。5人ほどの仲間たちが一致団結して人々を救うヒーロー集団、ベルトで変身して大切なものを守るヒーロー、見ず知らずの人類のために立ち上がる光の巨人。どれもこれもかっこよくって何度も何度もなりきり遊びをしたのを覚えてる。

 小学5年生の頃、俺は母さんと行ったショッピングモールで事故に遭った。謎の大爆発によって中にいた人たち全員が閉じ込められてしまったのだ。もう一生出られないのかと不安と恐怖でたまらなかったとき、一筋の光が差し込んできた。


「救助に来ました! もう大丈夫です!」


 出口を塞いでいた瓦礫の奥から現れた人は――


「よく頑張ったな、ボク。もう大丈夫だ!」


 変身はしてなくても、特別な力が無くても――ヒーローだった。



 テレビや漫画の中じゃない現実にいるヒーロー。俺もそうなりたいと、人を助けられるようになりたいと思い始めたのはそのときからだ。

 ただ俺にはたったひとつだけ、だけど最も重要なモノが足りなかった。ヒーローの根幹たる心――勇気が。そのおかげで21年間ずうっと1歩を踏み出せなかったよ……


 でも今俺は、ここにいる! 誰かのために戦えてる!! ようやく進めた!!! この1歩は無駄にしない!!!!


――ガキイイイィィン!!!


「――って、かっっってええ~~~~~~!!!」


 なんじゃこりゃ?! いくらなんでも硬すぎだろ!!

 ドラゴンの横っ腹に向けて斧を振り下ろしてみたものの鈍色の鱗にはキズひとつ付かない。さっきみたいに斧が壊れるくらいの魔力を込めればダメージを与えられるけど残りはこの1本だけ……確実に決まる保証が無いことにはリスクが高すぎる。

 これじゃあせっかく攻撃をかいくぐって接近しても意味ねえじゃん!


「バカがッ! そんなハンドメイド武器でチープ・ドラゴンに勝てるわけねえだろうが!」


「ガアアアッッ!!」


「うおわあああ……ッ!!」


 ドラゴンの巨大な前脚が俺の真横の地面を砕いた。直撃しなくとも風圧で息が詰まり、飛び散る石や砂が当たるだけで皮膚が裂ける。


「もういいだろ。このままだとうっかり殺っちまいかねねえ。な? もう諦めろ」


「グルルルル……!」


 ドラゴンの唸り声が腹の底に響き全身の鳥肌が立つ。気持ちだけじゃ覆せない圧倒的実力差がそこにはある。


「…………やだよ」


 上ずった声が自分でも分かるくらい震えてる。でも大丈夫だ。怖い、最高に怖いけど、俺はまだ――


「勇者ってのはぁあ……諦めねえんだよ」


 負けてない!


「そうか、後悔すんなよ?」


「ガアアアアアッッ!!」


「行くぞおおおお!!!」


「うっ……くっ……あなた一体……何を? そのままぶつかったら…………」


 まだだ、ギリギリまで引きつけろ!


「グアッ!!」


 ドラゴンが前脚を振り上げた。何度も体験した恐るべき破壊力、でもそれをした後には隙が生じる!!


「ここだッッ!!!」


――ドゴオオオ!!


「地面をひっくり返した? そんなモンすぐぶっ壊して――って、いねえ!? どこだッ!!」


「! あれは……!」


 感謝するぜドラゴン野郎。お前がバキバキに地面を割ってくれたおかげですげえ楽だった!


――バゴッ!――ズズウゥゥン!!


「何ィ!? こいつは――落とし穴!?」


 おいでませ大チャンス!



「決めるぞ――」


《「最大出力!!!!!」》


――ブワアッッッッ!!!!


「な??!!?!?」


「なにこの魔力……有り得ない!?」


「おおおりゃああああああ!!!!!」



――バッギャアアアアアアア!!!!!



 この戦いの中で最大の轟音が森を貫く。静寂の余韻の次に聴こえてきたのはドラゴンが倒れる音だった。

 チープ・ドラゴンはピクリとも動かなくなり身体の端からは光の粒子が漏れ出している。後ろにいたギヤンも巻き込まれたのか意識を失っているようだ。



「……ッ!」


 天使が体を引きずるように歩いてきた。


「うおっと! 大丈夫なのかよ!?」


 倒れかかった彼女を支え、とりあえず座らせた。


「どうして……逃げなかったの?」


 俺の肩を掴む手に力が籠る。


「こんな危険な真似をして……分かってるの?! 勇者が死ねば世界の危機を誰が――」


「だからだよ。勇者であるために逃げなかったんだ」


 だんだんと手から力が抜けていき、再びしかし今度はゆっくりと肩をさすられた。


「それより……何アレ??」


「アレ?」


「さっきの! 明らかに異常な魔力だったでしょ!?」


「ああハイハイアレな。……俺もよく分かんないや。とにかく出せるだけ出そうとしたらああなってた」


 天使は「なによそれ」とでも言いたげに睨んでくる。


「なによそれ」


 ほらね。


「うーむ……だよな――ってそうじゃなくてお前の怪我の方が大問題だっての!!」


「大丈夫よこのくらい大したことゲボェアアッ!!」


「うおおおおお!?!?」


 案の定、爆発でもしたかと思うほど勢いよく吐血した。当たり前だけどな! あんだけボコボコにされといて無事な訳あるかよ!


「ままま待ってろ今俺が回復魔法を――って使えねえわ! どーするどーする!?」


「……ふっ、ふふふ」


「ッ…………ははっ、まったくよぉ」



「あのさ、その、ありが――」



――ドオオン……


 天使の声をかき消して後方から聞き慣れた、しかし二度と聞きたくなかった地鳴りが響いた。何かの間違いであってくれと叶わない希望を抱きながら振り返る――


「グルルル……」


 絶望は期待を裏切らない。そこにはもはや消えるのを待つだけだったはずの竜の姿があった。

 なんで……なんでだ!? 倒しきれなかったのか?!


「ぐああッ……ああッがァ!」


 うめき声を上げたのはなんとギヤンだった。見るとヤツの持っている召喚石が苦しんでいるかのように不規則に明滅している。


「暴走!? やっぱり、あんな上級召喚獣を制御できるわけなかったのね!」


「暴走!?」


「術者の支配下から召喚獣が外れかけてる。このままだと暴れて手が付けられなくなる……!」


 天使の口から恐ろしい事実が提供される。払い除けられたかに思えた魔の手はまだ諦めていないらしい。

 もう武器は無いし魔力も底を尽きかけている、が――

 勇者は諦めない――俺自身の言葉を今一度噛み締める。


「なんか、手はないのか?」


「あなた…………」


 天使はまじまじとこちらを見つめる。何度も何かを言いかけて、止めてを繰り返している。そしてしばらくして肩を握る手が力強くなり確かな口調で話を始めた。


「召喚獣が暴走した場合、1分すれば安全機能が発動して強制的に術が停止する。だから1分間逃げ切るのがベストね」


「でもそれじゃ――」


「村が危ない、でしょ。解ってる。だから私たちのやることは1分間チープ・ドラゴンを引き付けつつ村から離す」


「だな! ……お前も!?」


「いいから! 信じなさい!」


――バチィッ!!


「ぐああッ!」


 とうとう召喚石が破裂した。完全に光は失われている。ギヤンは再び気を失ったようだ。


「――来るわよ!」


 ドラゴンが吠えながら突進してくる。もはやさっきまであったの知性が感じられない。


 さあ最後の関門だぞ、俺! 集中ッ!!

フルクト・・・主人公。憧れ続けた勇者になるため戦う。


天使・・・今はメイデと名乗っている。最も得意な魔法は回復魔法。


ギヤン・・・裏稼業を生業とする指名手配犯。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

魔法・魔術は下級、中級、上級に区分される。その中でも召喚術は特異で何を召喚するかで難易度が変わる。さらに、召喚獣にはチープ、リーズ、エクスに分かれています。こちらも難易度、強さは変わる。

(例)召喚獣:ポーン→下級→エクス・ポーン

→リーズ・ポーン

→チープ・ポーン


*題名、付け忘れてました。

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