第12.5話 VSギヤン━━裏視点━━
VSギヤンの別視点verです。
新しく現れた男、明らかにさっきの男とは違う……
(これは彼には荷が重いわね。それに様子も少し変だったし……)
「……あなたは下がってなさい、私がやるわ」
(他の魔法を見せるのにもちょうどいいわ)
「ふんッ」
――ビシュッ!!
(早速来たわね)
魔力を空中の一点に集中させ密度が均等になるように拡げていく。そうすれば――
――ガガガンッ!!
――防御魔法が出来上がる。
(すごく不思議そうな顔してる……流石に1回じゃ分からないか。まあしばらく見せようかしら)
攻防を続けていると次第にフルクトの顔つきが変わり、しっかりと防御魔法の存在に気づいている――
(――気がする!)
「どうやら気づいたみたいね」
「えっ?」
(上々上々)
「それじゃそろそろ――攻めようかしら」
手を高く挙げ得意技の火球を作り出す。試験はいくら手を抜かないと言っても合格できる難易度に収めるため同時に作る火球は30個を上限としていた。しかし今はそんなことを気にする必要がない。
(ざっと2倍くらいでいいか)
「はぁッ!」
「マジか…………ぐッこのッ――おあああァァ!!」
手応えあり。しかし天使は油断していない。決着を確認するまでは警戒する……していたはずだった――
「違う! そこじゃない!! 後ろだッ!!!」
反射的に振り向くと黒煙の中にいるはずの男が自分の喉元に刃を突き立てんとしていた。
――ヒュンッ――ブシッ!
「痛ッ……!」
咄嗟に上体を反りつつ飛び退く。肩に攻撃は受けたが大した傷ではない。
「大丈夫か!?」
「へーきよ」
(ふむ、今のがコイツの能力か。言ってもらわなかったらやられてたわね。……ここで考えるべきはなぜ彼には気づけて私には無理だったのか。魔力探知等の敵を感知する能力が彼の方が高い――ってのは考えにくいわね。となると……視界かしら? 私は土煙ばかり警戒していたけど彼は遠くから広い範囲を見ていたはず)
「はァァーーー……ガキを痛めつける趣味はねえんだよ。今ので殺られてくれりゃお互い楽だったのによぉ」
「ならそこのお仲間さん連れて帰ったらどう?」
「無理だ、仕事だから――な!」
今までの戦い方では埒が明かないと思ったのか男は距離を詰め、近接戦闘へと攻め方を変えた。
(やっぱり視ていないと感知できないっぽいわね。でもこんな強い能力、絶対に弱点はある。それを見つけなくっちゃ)
男のトリッキーな動きに対応しつつ天使は勝利の糸口を探す。
(能力発動中は身体能力も上がるのか。何としてもこの能力を攻略しないと……!)
――ヒュンッ!――ガキンッ!
――ドゴッ!
「おぐッ!」
ナイフを腕で防御した隙にガラ空きだった腹部へと蹴りが叩き込まれた。男の見立ては正しく近接戦闘においては天使よりも優位に立つことができていた。
「ハァ……ハァ……へっ、ほらほらまた守りに回ってんぞ?」
挑発を絡めて戦いを自分のペースに持ち込む。いくら強くとも子どもは子ども。多少の才能はあっても今まで何度も修羅場をくぐり抜けてきた自分が遅れを取るわけはない。男は勝利を確信し口角を上げた。
しかし男は知らない。目の前でうずくまっている少女が同じ笑みを浮かべたことを――
「おおりゃあああ!!」
――ズドドドド!!
天使は掛け声と共に魔力弾を乱射する。
(おいおい、さっきそれが通用しなかったのを忘れたのか? ま、結局ガキはこの程度ってことだ)
男は能力を発動し煙の中に姿を隠す。視られない限り感知されない能力にとって視界を遮る煙幕など魚にとっての水、鳥にとっての空、所謂ホームグラウンドである。
弾幕を躱しつつ魔力を頼りに天使に近づく。
(こっちから高密度の魔力を感じる――見つけたぞ!)
魔力探知は戦いの中で大きな、そして様々な役割を持つ。相手との力量を測ったり、魔力の流れから相手の動きを予測したりもできる。そしてこの男のようにある程度の手練となれば魔力探知によってどこに何があるのかが分かるようになる。よってたとえ目が見えずとも戦うことが可能なのだ。
(ククク……大丈夫だ。魔力の動きからしてもこちらに気づいていない。これで終わりだ!)
――ズバッ!!
魔力の中心を切り裂く。だいたい魔力の中心は身体の中心であるのでこれで天使は真っ二つになったことだろう。男は能力を解き、横たわっているであろう死体を確認する。
(??!!! なんだ!! どういうことだ??!!?)
地面に散らばっていたのは天使の残骸――ではなく魔力塊の破片であった。
それに気づいた直後、天使の気配が背後に現れた。
「あなた、能力発動中は目が視えてないでしょ」
「?! な……んで…………」
男は驚きのあまりこれ以上の言葉を出せなかった。
「さっきお腹蹴ったでしょ? あの時気づいたのよ。もしかして能力発動中は視覚を失い、魔力探知で周囲を知覚してるんじゃないかってね」
――天使が蹴りを食らった直後
(ふぅんなるほど。私は今あいつのナイフ攻撃を魔力をを集めて強化した腕で受けた。逆にお腹の魔力はかなり薄かった。そこをピンポイントで突いてきたってことは……目じゃなく魔力で世界を見てるといったところかしら。それなら能力のメリットデメリットのバランスも取れる)――
「それに気づいたからこの魔力塊作戦を立てた」
「デコイ……そういうことか」
「ええ。まず煙幕であなたの能力を使わせる。あなたの気配が消えたら魔力塊に魔力を注いで自分は極力魔力を抑える。あとはあなたが現れるのを待つだけってワケ」
天使は得意気に作戦の概要を話す。
「まああなたにもっと慎重になられたりなんなら最初から能力を使って奇襲されてたりしたら勝てなかった。つまり――」
天使の手に魔力が集中していく。
――ドゴオオオ!!
解き放たれた魔力は今までで最も高速の魔力弾となり男を吹き飛ばした。
「ガッ……ハッ…………!」
「――あんたの敗因は子どもナメすぎ」
天使と男の激闘はここに決着した。
天使・・・戦い慣れしている。魔法の腕前はかなりのもの。
ギヤン・・・指名手配犯。格闘術は天使よりも上。以下能力全容
不意打ち放題 《サプライズ・キル》
右手に逆手でナイフを構えている間、身体能力が上昇し他人から視覚以外で感知されなくなる。一種の認識阻害魔術。代償として術者は能力発動中視覚を失うが魔力探知技術によって補っていた。




