表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/75

10-05 復讐の、その後は

「僕の方が先に好きだったのに!!!」

「イ、イノス!」


 タイミングを見計らったように、部屋の入り口が騒がしくなる。

 振り返れば部屋に乗り込んできたイノスが、不機嫌な眼差しを向けてきた。


「カルティに刺される前に言ったじゃん! 僕、ヘテラちゃんが好きだって!」

「そ、それはそうだが」

「そうなの!?」


 慌ててエスターを押し退けながら、イノスの言葉に反論しようとして失敗する。

 そしてそのことを何も知らなかったエスターが、顔色を青くして慌て始めた。


(くそ、失敗した。確かにイノスの方が先なんだから、こっちに答えてからにすればよかった)


 こんなことになるとは思っていなかったとはいえ、エスターを先に呼び出したのは悪手だった。

 けれどイノスは慌てる私たちを一通り眺めた後、仕方ないなと肩を竦める。


「なんてね、脈なしなのは分かってたからいいよ。二人とも、お幸せに」

「私もヘテラさんをお慕いしていましたが、ヘテラさんが幸せなら問題ないです」

「……みんな見てたのか」


 イノスがしゃべり終わると、今度は領主が部屋の中に顔を出す。

 そしてフォルド、レタリエ、コンヴェルトも続いて部屋の中に入ってきた。


「仕方ないだろ、どんどん集まっちまったんだから」

「だが器の未来は明るいぞ、恋をしたんだ」


 本気でのぞき見する気はなかったらしいフォルドが言い訳をし、レタリエが私達を祝福する。

 コンヴェルトは幼馴染の告白シーンという微妙なものを目撃してしまったせいで、なんとも言えない表情で黙っていた。


「紋章の器は、普通恋をしないものなのか?」

「全くないことはないが、少ないんだ。紋章の器は基本、作られるものだから」


 フォルドによると紋章の器は生殖機能自体はあるものの、基本的には薬瓶の中に命を吹き込んで作られる。

 それは紋章の器が誰一人いなくなってもまた作れるようにと考えた、人間の邪悪さの一つだった。


「つまり性愛が絡みにくいんだ」

「利点はあるがな、腕とかが取れても部分的に作れるから」


 当たり前のことのようにフォルドとレタリエが話しているものの、そんなこと知らなかった私達は顔をしかめるしかない。

 魔王討伐時には必要なことだったのだろうが、平和な今となっては徹底した器の道具扱いに反吐が出る。


「聞いたことはありますが、本人を目の前にすると生々しいですね」

「あ、やっぱそういう感じなんだ」


 苦々しい顔をする領主に、紋章の器であるエスターも自分のずれに気が付く。

 イノスは既に分かっていたのか平然としているが、それでも渋い顔が隠しきれていない。


「でも紋章は初代聖女と共に消えたから、器が作られることももうないよ。けどヘテラちゃん、危なかったね」

「なにがだ」


 イノスから急に話題を振られるが、意味が分からずに聞き返すしかない。

 私はなにか、見落としていた危機があったのだろうか。


「魔女の紋章って、魔王が現れない場合の代わりでもあるんだ。紋章発現者に恨み辛みを募らせて、魔王の紋章を顕現させて殺す場合がある」

「それであんなわざとらしく迫害したりしてたのか」


 今になって聖女派閥がさっさと私を殺さなかった理由が判明する。

 顕現していなかった魔王の紋章を私に現わさせてから、処刑するつもりだったらしい。

 残念ながら魔王になってしまったのは、彼らが抱え込んでいた聖女だったが。


「でも魔王の紋章も、もう現れないんじゃないかな。聖女と一緒に異世界にいっちゃったし」

「そうですね。魔力のない世界では、紋章はただの痣でしかありません」


 初代聖女の紋章も、魔王の紋章もこの世界からなくなった。

 だからもう、紋章が悪用される心配などない。


(良かった、本当に)


 迫害された日々は消えない、壊れた心は戻らない。

 けれど前向きに進むことも、再びできるようになった。


(こういう風には、もう思えないと思っていたが)


 召喚された時は、世界そのものが憎くてしょうがなかった。

 元の世界にも帰りたいと思えず、どこにも居場所なんてないとさえ思っていた。


(けれど今は、帰りたい場所がある)


 故郷と呼ぶには馴染みがなくても、私を待ってくれている人たちがいる。

 共に過ごした時間はまだ短くとも、心を許せる存在ができた。


「これからもよろしくな、ヘテラ」


 私に向かって笑いかけるエスターにつられて、自然と頬が緩む。

 だから私は復讐を終えて、この世界で生きることに決めた。

あとがき:


これにて「魔女ヘテラは、聖女への復讐を完遂する」完結となります。

ここまでお付き合いくださいました皆様に、心より御礼申し上げます。


今回は今までで最長の文字数となっていたため、推敲が地獄でした。

毎回同じようなことを言っている気がしますが、でも本作も書き上げられてよかったです。

あと今回はほぼ書き直しはしていますが、AIのべりすとを使用しながら制作しました。

第一稿が上がる速度がめちゃくちゃ早くなったので、おすすめです。課金勢となりました。(ただしプロットやセリフ入れ、推敲は完全に人力です)


次の作品はいくつか手をつけているので、完成次第投稿していきます。

もし見かけた際には、また読んでいただけると励みになります。


最後にこの作品を気に入って頂けたら、ブクマ、評価、感想、レビュー、いいねなどをして頂けるとありがたいです。


---


以下、登場人物紹介という名のおまけ


・ヘテラ

由来は heterodoxy(異教) を崩したものから。

異世界で異教徒どころか異教の象徴そのものにされてしまったため、そう名付けた。

本作主人公。異世界転生したものの、同じく転生したいじめ相手に聖女の座を奪われ、魔女の烙印を押された少女。その割にポンコツな部分も多い。けど復讐は完遂した。

ブチギレ主人公を書くのが好きなため、今までの作品の中では一番楽しく書けた主人公でもあります。

外見は黒髪黒目で、完全に日本人の外見だが物語序盤で髪を短く切っているので、少年に見える。

もちろん目は鋭いし、常に機嫌が悪く見えるが、きちんと彼女と話した人だけ、そう怖くないのが分かる仕様。

カルティとバトルするより、エスターに告白された時の方がよっぽどパニックになった奥手でもある。


・エスター

由来は Easter(復活祭) から。

序盤にヘテラが立ち直れるよう歓迎会を計画するような青年である為、そう名付けた。

本文で貴婦人だの天使だの彫像だの言われた美青年、中身は大型犬か子供。

無邪気に見えるが、長年安寧の家に軟禁されていたせいで、ヘテラとはまた別の闇を抱えていた。

ヘテラと行動し始めてからは普通に明るくなり、苦手な剣を持つ覚悟までできるようになった。

地味に肝心な時の決断がうまいので、最も物語をハッピーエンドに導くことができた要因でもある。ただし人質を取られてしまうと、非常になり切れない面あり。

あと書いてる人は最終章であんなに糖度が上がるとは思わなかった、びっくりした。推敲で見直してる時もびっくりした。

身長はフォルドより高く、レタリエよりも小さいので割と高身長。

筋力も薬草庭園での作業で、実は成人男性程度にはある。

隣がフォルドなので非力に見えているだけ。

髪は長く、溶かした黄金のような色をしている。


・フォルド

由来は Hold(抱え込む) を崩したものから。

ヘテラやエスターを保護しているのもそうだが、同時になんでも一人で抱え込んでしまう人だったのでそう名付けた。

見た目は怖いが、世話焼きな人。

ヘテラと気質が似ていて、内面が分かりづらい。会話が下手。

先代魔王討伐で勇者と務めており、先代聖女が死亡後にレタリエと二人で先代魔王討伐。直後に勇者の紋章は消滅。

その後は人間を守りたいフォルドと、紋章の器のために人間を滅ぼしたいレタリエで対立した。

勇者の紋章を顕現させかけたエスターを引き取った後は、紋章が完全覚醒しないように再び戦いへと赴く。

自我が生まれたのは遅めで、それからも自身のことを疎かにしがちだったので、レタリエが細かい世話をすることが多かった。戦うことに特化した男。

外見は痩せていて背も高くないが、紋章抜きでもとにかく力がある。あと長く戦っているので、経験値が豊富。

戦うのに長い髪を放置しているのは、単純に面倒だから。

急に短くしてはエスターに驚かれる。


・カルティ

由来は Cuit(狂信) を崩したものから。

とにかく信者を作るのがうまい少女、というコンセプトが最初にあったのでこの名前をつけた。(ただし雑なので長続きしない)

あと自身を異常に信じている面もあったので。

前世ではヘテラをいじめた結果、屋上からの自殺に誘い込まれて異世界転移した少女。

異世界ではすぐさま聖女として立候補し、ヘテラを仮想敵とする事で場を支配した。

だが聖女としての信仰がヘテラに集まるにつれ、聖女の紋章が壊れていき、人々の不信が募っていく。

それから信仰を取り戻そうと聖水を作ろうとするものの、録なものはできず最終的に人々を異形にする薬を作り出した。

外見は愛らしい少女で、髪は腰までの緩いウェーブだが、実は暗い青色に髪を染めている。

身長はヘテラと同じくらいで、笑顔は人を騙す魔性。

だが内面が激しすぎて、だまし続けることができない。

仮に彼女が魔女とされて安寧の家に引き取られても、エスターとうまくいかずフォルドに追い出される。


・コンヴェルト

由来は convert(改宗) を崩したものから。

彼は最初からカルティからヘテラの方へ移動することが決まっていたので、そう名付けた。

前世では、ヘテラとカルティの幼馴染だった青年。

両方を大事な幼馴染だと思っていたが、カルティに引きずられてヘテラとは疎遠になっていく。

二人の転落死を止めようと思ったが、巻き込まれて死亡し、異世界転移。

直後に勇者と名指しされ、その後はカルティと行動を共にしてボロボロになった。

ちなみに勇者はエスターだったので、彼は本当にただの一般人。

本作ではずっと被害者だった人。

背丈はほぼエスターと同じくらいで、髪は現代では割と長めの肩までで少しくせ毛。

染めていた金髪は放置により、だんだん黒髪に移行中。

序盤は勇者の鎧などを着ていたが、追放後は村人が着る軽装になっていた。 


・レタリエ

由来は Retaliation(報復) を崩したものから。

彼も最初から人間への報復が根幹にあったキャラだったので、そう名付けた。

紋章保持者保護部門の代表であり、魔王であるイノスとつながっていた人。

過去にフォルドと魔王討伐をしたことがあるものの、人間を守りたいフォルドと、紋章の器のために人間を滅ぼしたいレタリエで対立。

その後人間を内部崩壊させるために教会に潜伏して、同じく潜伏していたイノスを魔王だと見抜いて自らの仲間とした。

その後フォルドとは疎遠だったが同郷のエスターに勇者の紋章が顕現しかけていることに気づいて、彼をフォルドに預けることとなった。

髪は真ん中分けのまっすぐで肩まで、教会の法衣を着用している。

身長はフォルドよりも高いが、彼も癒しの一族なのでそんなに力はない。

物語終了後は多数の紋章を刻んでいた後遺症により、更に無力になってしまった。それでも日常生活はぎりぎりできるレベル。

先代魔王討伐の際は、フォルドにしょっちゅう雑に扱われていた。

また表情は豊かでないものの、昔馴染みのフォルドが関わると途端に崩壊する。

昔は薬草を「葉っぱ」と言われては、よく怒っていた。


・イノス

由来は Innocent(罪なき者) を崩したものから。

本作では最も大きな罪を犯した者が魔王になるシステムであり、そうなれなかった彼はこの名前がついた。

キャラ作成当時は名前通りもっと無垢な感じだったものの、物語が始まってからは色々作戦を立てて立ち回ったので、今考えるとそこまで無垢ではない。

人間に化け、教会に潜伏する魔王だったが、人間側に情がわいてしまった人。

教会でも割とうまくやっていたので、ヘテラだけではなく、人間そのものがそこまで嫌いじゃない。

ヘテラの事は確かに好きだったが、自分でも同族として好きであることには気づいていた。

なので後半は諦め気味で、エスターに対してはからかい交じりの行動が多くなっている。

今では教会で結構えらい立場にあり、なんだかんだで領主たちと共に人間界の復興を行っている。

魔族が人間と戦争しないようにもしてるため、やっぱり多忙。

外見は何度か記載した通り、愛らしさが一番に来る少年。

身長は女の子であるヘテラと並んでも同じくらいしかない。

体重はもしかしたらイノスのが軽いかもしれない。


・領主

変異した村のみで登場予定だったのが、いつのまにか準レギュラーくらいの頻度で出てた人。

ただ役柄で呼ばれることが多かったので名前は付けませんでした。

子供たちで並ぶと一番背の高い青年。(さすがに大人組には負ける)

田舎の出なので華美な装飾はないものの、基本的に清潔な印象を持たれることが多い。

描写はないが長い髪をまとめていて、糸目で眼鏡という外見設定が実はあった。

あと本作で最も行動に躊躇がない人間でもある。

あんなすぐに水の魔石を割るとは、書いてる人も思わなかった。


---


長いおまけも見ていただいた方、ありがとうございました!

最後にこの作品を気に入って頂けたら、ブクマ、評価、感想、レビュー、いいねなどをして頂けるとありがたいです。


ここまでお付き合いいただき、本当に感謝いたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます。 魔王城侵入時に銅像持って走るフォルドさんが良かったです。 歳が口癖の不死身の脳筋フォルドさんに、仕事のし過ぎで死にかけてるイノス、どこにでも出没する領主さん。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ