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【完結済】魔女ヘテラは、聖女への復讐を完遂する  作者: 不揃いな爪
04.魔女の毒薬と級友を名乗る少年
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04-08 魔女の毒薬と級友を名乗る少年




「よし、じゃあこれは俺が依頼機関に持っていく。お疲れ様」


 フォルドが出来上がった薬を丁寧に布で包むと、それを鞄に入れて背負う。

 ちなみに私が作っていた毒薬は、先程完成した。


「やっと納品終わったなー」

「結果って、いつ分かるんだ?」


 今回は魔力も枯渇することなく、無事に調合することができた。

 しかし毒薬を作るのにはかなりの集中力がいるようで、終わった瞬間に疲労感に襲われる。

 エスターも似たような感じらしく、今は二人揃って机に突っ伏していた。


「基本納品が終わったら、よっぽどな事がない限りは連絡なんてないぞ。気になるなら、新聞とかで確認する感じだな」

「そうか、じゃあ後で調べてみる」


 私は机から顔を上げると、今度は椅子にもたれかかりながら返事をする。

 するとフォルドは、少しだけ不思議そうな顔をした。


「やっぱり気になるものなのか」

「俺だってちゃんと薬が効いたか気になるから、調べるよ」


 前線に立って直接結果を見れるフォルドと違い、私たちはなかなか自分の成果が分からない。

 だからエスターも私と同意見だが、どうもフォルドには理解しづらいようだった。


「何を心配しているのか知らんが、そんな焦った顔をするな。それより報酬のことでも考えてろ」

(……そうか、ちゃんと私のお金としてもらえるのか)


 頭では分かっていたが、今まで搾取されたり施されたりしていたせいで実感がない。

 しかし、この世界で初めて自分で稼いだお金だ。

 しかも正当な評価としてもらえると思うと、改めて嬉しさがこみ上げてきた。


「私は初めて作ったしし、そんなに高くない感じか?」

「そうでもないだろう。毒の納品は少ないし、問題もなさそうだからな」


 毒の納品の相場がどの程度か知らないが、私の予想よりは高そうだ。

 危険手当なども入っているのかもしれないが、それでも高いに越したことはない。


「へテラ、お金が出たら街に行ってなんか買ってこようぜ」

「でも、教会の奴らとかに遭ったりしないか?」


 エスターの提案に不安を覚え、思わず聞き返してしまう。

 フォルドも最近は魔物狩りに出ることが多くなり、必然的に私たちは二人だけになることが多い。

 けれどフォルドは今までの警戒心はなんだったのかと思うくらい、あっさりとしていた。


「おおっぴらに紋章を見せなきゃ平気だ。それに教会にも、俺の保護下だっていう根回しは済んだ」


 元とはいえ勇者であるフォルドを敵にまわせる者は少ないのだろう。

 教会がどれほどの力を持っているかは知らないが、確かにフォルドと対立して無傷でいられるとは思えない。

 だから少なくとも表立っては、私たちが襲撃される可能性は低くなったと考えていいらしい。


「それと暗くなる前に帰れば大丈夫!」

「その通りだ。今まで過敏になりすぎていたからな。近くの街までなら自由に行動していい、あそこは学園からも教会からも遠いしな」


 確かにここから一番近い街から、他の建物群は見えなかった。

 だから学園にいるカルティと偶然会うことはないだろうし、教会の人間には脅しが効いているなら襲われることもないということなのだろう。


「じゃあお金が入ったらすぐ行こうぜ! 行きたい店がたくさんあるんだ!」

「分かった分かった」

「気をつけていってこいよ」


 エスターの勢いに押されつつも、私は笑みを浮かべて答える。

 するとエスターは嬉しそうに笑い返し、フォルドも穏やかに微笑んだ。




 それから私たちはまた、二人で近くの街を訪れた。

 既に何度か来ているが、その度にエスターは私と手を繋ぎたがる。

 もはや逃げる気などないことは、分かっているはずだが。


(もう慣れてしまって、振り払う気も出ない)


 最初はエスターが手を繋ぐ度に嫌がっていたのだが、今はもう当たり前のように受け入れていた。

 街の人にはもしかしたら、似てない兄弟くらいに思われているかもしれない。


「なぁなぁ、先生に土産買ってこうぜ!」

「いいけど、ついたばかりだぞ」


 お土産は買い物の最後に買うものではないのか、それとも忘れないようにということだろうか。

 エスターの気持ちがよく分からず首を傾げながらも、私達は適当なお店に入っていく。


「だって先生がくれたことはあっても、俺が渡した事なかったし」

「なるほど。確かに、私も世話になってるしな」


 家に住まわせてもらっている分や、買ってもらったもののお金は少しづつ返していこうと思っていた。

 だがお礼の品というのは、まだ考えられていなかった。


「じゃあ一緒に選ぼうぜ!」


 そう言うとエスターは、目を輝かせて店内を歩き出す。

 そしていくつかの商品を手に取りながら、どれがいいかと聞いてくる。


 そんな穏やかな時間を、私たちはようやく過ごせるようになってきていた。

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