最悪のバッドエンド①
ここからしっかり始まってゆきます、お楽しみにー
地獄の始まりは3日前、7月24日。
青い空、白い雲、辺り一面生い茂る草花の草原。まさに夏といった、素晴らしい景色の真ん中にぽつんとある『Jewel Ice』と書かれた看板を貼り付けた小さな白基調の屋台。そこで黄と青の縞模様が施された店の制服を着た緑髪の男は、瞼を擦り、ゆっくりと目を瞑ろうとして――
「アホか、何やってんだよラル兄」
と、20歳前後の紫髪と紺色の目が特徴的な青年が、緑髪の店員へ声を掛ける。
「ん〜、ねみい……あと30時間〜」
「長ぇよ、後ルビ兄に呼ばれてんだろ?怒られるぞ?」
「あ〜……なら起きた方がいいか。怒られるのは勘弁だわ」
紫髪の男の説得により、緑髪の店員は瞼を擦りながら起きる。そこへ
「今日で五連勤……しんどい、疲れた、アイスをよこせ、エメラルド」
と、蒼髪と桃色の目、白基調の制服を羽織った男性が心底疲れ果てた顔で緑髪の店員――エメラルドへとアイスを要求する。
「あーはい、わかりましたよ、リオンさん……つーか五連勤とかヤバいですね……お疲れ様です……」
「ラル兄が珍しく店員してる……」
「俺でも仕事くらいやるからな?」
「ははっ……お前らマジで仲ええな……んじゃ、席座ってるから。……あと注文はチョコミント一択だからな?」
その後、エメラルドはアイスの用意に取り掛かり、紫髪の青年はリオンという男と共に席へと腰を下ろす。
「……なぁ、タンザナイト、この世界には能力やら術式やら宝具やらあるじゃねえか。……お前はなんでそんなもんが〜とか考えたことは無いのか?」
「いきなりっすね……けど、あんま無いかなぁ……」
と、紫髪の青年――タンザナイトは答えた。
そして、その話の深く掘り下げようとした時。
「……ほい、チョコミントです」
というエメラルドの声を聞いてリオンが笑う
「サンキュッ……しかもコーンとは……気が利いてるじゃねぇか」
「ははっ、ありがとうございます」
そう言ってエメラルドが笑い、その直後、顔が青ざめる
「げぇッ……忘れてた、タンザナイト、店番よろしく!5分も遅刻とか完璧兄貴に怒られるじゃねえか」
絶叫し、店の制服を脱ぎ捨ててタンクトップ姿でアイス屋の裏にある自然林の中へと走っていった。
「……アイツも仕事あるのか」
「そうです」
そんな会話でタンザナイトとリオンは彼を見送るのだった……
「5分遅刻……あのな、ラル……俺は何回も口を酸っぱくして言ったよな?この仕事は誇張抜きで世界救う仕事なんだから、遅刻は許さんぞって……ん?」
燃えるような赤髪と赤眼が印象的な、先程のリオンと同じ制服を着た青年が、頭に青筋を立てながら説教する。
「あー……えっとその、す、すみませんでした……」
エメラルドは縮こまって謝罪し、その状況を見かねた黒と紺の入り交じった髪の男性が
「……そこまでにしましょうよ、ルビーさん、時間ないですし」
と止める。それに対し、後ろにいた黒髪の青年が尊敬の色を蒼穹の瞳に込めて
「ステライト様……流石っす」
などと言い放つ。
そんな会話の後
「ちっ……しゃあねえなラル、次はないぞ」
そう言ったのだった。
「んで、何するんですか?」
とエメラルドが3人に対して疑問を投げかけると、代表して
「あー、会議だ、それもとびきり大切な……な」
と黒紺髪の男性――ステライトが答える。そして、その事に向けてどんな会議なのかと疑問をなげかけようとしたその時。
「全員伏せろッ!! 敵襲だ」
とルビーが絶叫し、能力を解放して迎え撃つ。
「「「ッ!?」」」
3人は地面にうつ伏せになり、その直後得物不明の斬撃が空を薙いだ。
「ありゃ、外れちまったか」
そういうのは、飛び跳ねた赤髪が特徴的な、黒い外套に身を包んだ狂人。その後ろには、黒い笑みを浮かべた、桃髪の男と、1層強い気配を宿す、不吉な男がそこにいた。
「俺は黒と赤の髪の男とやる。お前らはほかとやってくれ」
「「「おうっ!!」」」
全員が闘志を瞳に宿し、それぞれが宝具。武器を構える。
絶望の地獄、第一の死闘が始まるのだった――
もしも面白いと思ってくださったら、星、ブクマ登録よろしくお願いします!