4 神、再び
その日の夜。
俺は太郎を押し入れの中にしまい、布団に入って眠りについた。
昨日の夢を信じた訳じゃあねぇけど、一緒に寝てまた夢に太郎が出てきても嫌なので、何となくそうしたのだ。
そしてほどなくして俺は、
ぐぅ・・・・・・。
ガラッ。
何かが開く音がした。
「音寿」
俺を呼ぶ声がした。
しかもその声は、俺が聞いた事のある声だった。
「音寿よ、目を開けよ」
おいおい嘘だろ?
昨日の夢の続きか?
そう思った俺がパチッと目を開けると、そこに広がった光景は、昨日の夢の背景と全く同じものだった。
辺りは真っ暗で、目の前に太郎が居る。
太郎の背後から昨日の時みたく電気スタンドによる神の光がチカチカと点滅していて、その点滅の度合いは、昨日よりもひどくなっていた。
そんな中太郎は、重々しい口調で言った。
「我は、耳鳴り」
「耳鳴り?いや、あれだろ?三回目に神なりって言うんだろ?それはもういいよ」
「違った。我は、蟹なり」
「いやだからもういいって、オチが分かってるから」
「と見せかけて、我は、神なり」
「わかってたよ!お前が三回目に神なりって言うのわかってたよ!何が『と見せかけて』だよ⁉何でオチがバレバレのネタをまたやるんだよ⁉」
「そんなもの、言ってみたかったからに決まっておろうが!言わせよ!」
「言わせよ!って、そんな命令初めてされたわ!」
「御主は我の祟りを受けたにも関わらず、未だ我を神としてあがめる気はないようだな」
「当たり前だろ!何でお前みたいないい加減な神様をあがめなきゃいけねぇんだよ⁉」
「失礼な!御主は我の聖なる神のお告げを愚弄する気か⁉」
「聖なる神のお告げで、言ってみたいだけの言葉を言ってんじゃねぇよ!お告げをするならもっとちゃんとしたお告げをしろよ!」
「昨日したではないか!なのに御主はちっとも我とスキンシップをとろうとせぬし、電球もサーモンのお刺身も買って来てくれぬし、挙句の果てに我を押し入れに閉じ込めるとはどういう了見だ⁉ジタバタしながら泣きわめいてやろうか⁉」
「わかったよ悪かったよ!朝になったら押し入れから出してやるから!それより、やっぱり俺の鼻のニキビはお前のしわざなのか?」
「当たり前だ!我が神通力をもってすれば、そのくらい造作もないわ!」
「鼻にニキビを作っただけでイバるな!一体お前は何がしたいんだよ⁉何で俺の夢に出てくるんだよ⁉」
「だから昨日から言っておろうが!我をあがめよ!とうとべ!供物を捧げよ!」
「それを要約すると、もっとお前の相手をして、電球とサーモンのお刺身を買って来いって事だよな?」
「そうだ。さもなくば御主は恐ろしい祟りに見舞われるであろう」
「それが昨日の鼻のニキビなんだな?」
「いかにも。どうだ?これで我の恐ろしさと、偉大なる神の力を体感したであろう?」
「しねぇよ!誰がお前みたいなしょうもない神様の言う事なんか聞くかよ⁉」
「この愚か者めが!御主にはさらなる祟りが必要なようだな!」
「どうせまたしょうもない祟りだろうが!そんな事じゃあ俺の態度は変わらねぇからな!」
「しょうもないとは何だ!よぅしいいだろう。御主には我のとっておきの祟り、いや、天罰を与えてやる」
「天罰って、どんな天罰だよ?」
「首筋から肩にかけて、何やら重だるい、雨の日によくあるあの嫌~なズキズキジンジンした違和感でお前を苦しめてやる」
「だから天罰の内容がしょうもなくてインシツなんだよ!どうせやるならもっとズバーンと来いよ!」
「ええい黙れ黙れ!御主のようなしょうもない男にはこれで十分だ!我の天罰に苦しむがよい!」
・・・・・・そして俺は、目を覚ました。
むくっと起き上がると、首から肩にかけて何やら重だるく、痛いようなズキズキするような変な違和感があった。
そして押入れの方に目をやると、そのフスマが少しだけ開き、その間から太郎がこちらを覗いているのが見えた。
俺はとりあえず今日、電球とサーモンのお刺身を買ってくる事に決めた・・・・・・。