2 太郎との暮らし
次の日の夜、俺はコンビニでのバイトを終え、アパートに帰った。
「ただいまぁ」
なんて言ってみるが、返事はない。
靴を脱いで部屋に入ると、丸いちゃぶ台と二十インチのテレビと、一匹のクマのぬいぐるみの太郎。
太郎は朝出る時と同じく、壁際でゴロンと横たわっている。
クマのぬいぐるみは家賃も払わなくていいし、メシを食わなくても腹は減らない。気楽なもんだ。
そんな事を思いながら俺はコンビニでもらってきた売れ残りの弁当を食べ、風呂に入って床に就く。
酒は飲まない。飲まないと言うか、飲めない。
成美は酒が好きだったなぁ。
よく『音寿は下戸だからつまんない。生きてて何が楽しいの?』って言われたもんだ。
そう言われる度に、
『そりゃあお前、楽しくは、ないよ。楽しくなくても、生きて行かなくちゃいけないんだから、しょうがないだろうよ』
としか言い返せない自分が、甚だ情けなかった。
その事も、成美が出て行った原因のひとつだろう。
でもそれも、しょうがない事だ。
俺の人生は、しょうがない事しかないんだから。
そして今日も一日が終わり、俺は眠りにつくのだった。
ぐぅ・・・・・・。