サラリーマンドラゴンの配達日記。
【なろうラジオ大賞2】参加作品です。
◇キーワード◇
「サラリーマン」「ドラゴン」
俺は普通のドラゴン。サラリーマンだ。人間に変身できる訳じゃない。今の時代は、ドラゴンは荷物運びの仕事をしている。正社員なんだ。そこそこ給料が良いから続けている。
──しかし、働いていると変な荷物を運ぶこともある。葉っぱとか、粉とか、軽いもの。あれはなんだろう。直接渡せば良いのにな。こちとら体が大きいもので、口の中に荷物を入れざるを得ない。時々酔った感覚になるのだ。出来れば運びたくない。
上司の人間は時に腹立たしい。踏み潰してやろうかと思うこともあるが、クビになれば俺の役目は無くなる。仕方ないから働いてやってる。忘年会のシーズンだが、俺は呼ばれない。ドラゴン用の座敷のひとつでも用意したらどうだ。
そういえば、もうそろそろクリスマスか。最近は、俺のような大きなドラゴンが荷物を運ぶようになったから、重宝がられる。でもよく考えたら不公平だよな。働いてる俺には誰もプレゼントをくれねぇんだから。
そんなことを思ってたら、突然雪だまを顔面に当てられた。最悪だ。近所の悪ガキだろう。タワーマンションから見える奴等を食ってやろうと牙を見せたら、
「お仕事頑張れー!」
だってさ。
ふん、言われなくてもやるよ。やりますよ。やりゃ良いんだろ。尻尾に積もった雪をこれでもかというほど浴びせてやった。ざまあみろ。
最近は副業もし始めた。人間を目的地まで運ぶ仕事。パートだ。結構稼げている。ちょっとムカつく奴が居たら、わざと大回りしてメーターを回してやるんだ。
ところで、儲けた分は税金で引かれるのだが、給料を使ったことがない。俺たちドラゴン、なんか人間に騙されてねぇか?
とか思いながら、今日も出勤だ。まぁ、何かの役に立つことは良いことだ。ここの空気は旨いしな。汚れてきたら辞めちまおう。あまり難しいことを考えるのは、性分じゃない。
俺は自分に適した仕事をして満足だ。人間は……どうなのだろうな。知ったこっちゃないが──