第7話 新チャートを最速で構築しろッ!
――《アメイジス平原 フィールド》
新大陸は広く、更には船も所有しているので行動の自由度が高い。
いわゆる正規ルートはこの辺りから情報収集メインで冒険することになるのだが、ドラスペ3のあらゆる知識がある俺は、このタイミングで新たにフローチャートを構築していた。
「いいかよく聞け、今から大事な話をする。足は止めるんじゃねぇぞオラァン!!」
トラッカの町からはるか東に位置する巨大な神殿を目指し、俺たちは爆走していた。
「ほらミュミュ頑張って! 手ぇ繋いであげるから、アイツから離れないで!」
「ひ、ヒィィ……!!」
新入りのドジっ娘魔法使いミュミュは、モンスターから逃げるたびに傷を負い、半死半生の目に遭いながら必死に走っていた。
回復担当のイルルがミュミュの面倒を見てくれているが、だいぶ勇者の影響を受けているようだ。
そう、魔王より恐ろしい勇者に逆らうとどうなるか、全身の細胞が理解しているのだ。
「まず、神殿に着いたら『賢者の本』をミュミュに持たせて『賢者』に転職。そしてイルルは『戦士』に転職しろ。あとホーリーローブは転職直後にミュミュに着せろ」
「うわあああん勇者のバカあああああ!!!!」
僧侶イルルにとって、これが精一杯の反撃だった。
乙女心を盛大に傷付けられ泣きながら走るイルルの肩に、なだめるようにカイムが乗った。
「次に、イルルとミュミュのレベル上げを二人だけでやってもらう。俺はチョビヒゲと他の大陸を巡ってアイテム回収してくるから、レベリング地点へ着いたら一旦別行動だ」
これが俺の作った新チャート、つまり今後の流れ図だ。
画面越しに動かすゲームと、現在の状況は似て非なるもので、今までの最速チャートが一部通用しない。仲間とリアルに意思疎通ができるため、作業を分担することで効率化を狙う。
「いいか、必ず俺たちの手で魔王を討つんだ。 返事は!?」
「「「イエス、サー!!!!」」」
――《リクルト大神殿》
「うぅ、さよなら僧侶だった私……」
「イルル殿、戦士は良い職業であるな」
既に賢者になったミュミュとは対照的に、絶望するイルル。
しかも大神官から与えられたレッドメイルは、イルルの身体にはフィットしなかった。
「筋肉はいつだってイルル殿の味方であるな」
「おのれ魔王……この恨みはヤツにぶつけてやるうぅぅ!!」
こうして、勇者・戦士(僧侶)・戦士(戦死)・賢者(魔法使い)の4人パーティーが誕生した。
――《カツ火山 ダンジョン》
神殿から北に真っ直ぐ進んだ火山の入り口でレベリング開始。
「ここに出るキングメタリックスライムは美味いから確実に仕留めろよ。イルルもミュミュも、お互い回復し合ってしっかりレベルを上げろ」
「あ様とカイム様もお気をつけて……」
幽霊戦士はぷるぷるしている。こいつはもう気をつけようがないな。
神殿内の店で購入したありったけの聖水を彼女らに渡した。もちろんレッドメイルは売った。
俺は「20分で戻る」と伝えて移動魔法を唱えた。
――《バオー城 城下町》
移動魔法と船を駆使して、ものの20分弱で勇者シリーズ装備、賢者シリーズ装備を集めた。残る戦士シリーズ最後の鎧はここバオー城にある。
俺はイルルたちを回収後、城へ走った。
「私たち4人ならきっと魔王を倒せますよ!」
希望の眼差しを向けるミュミュ。
「たった4人……不安ね。あと早く鎧着たい……」
転職以降ずっと肌着姿のイルル。先陣を切って城へ向かっている。
「いや、仲間は全部で8人いるが、時間と俺の都合上、省略しただけだ」
「!?」
俺は無表情で話を続ける。
「馬車とか面倒だし、どうせ最終戦も4人しか参加できねーからな!」
「!?」
勇者に選ばれた3人の中でカイムだけが、まんざらでもない顔をしていた。
【現在のタイム 1:01:49】
評価「ぜったい」
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