第4話 戦士は最速で戦死させろッ!
――【平原 フィールド】
「15歳のピンク髪僧侶がレベル3って舐めてんのかお前!!」
「うっ、うるさい! アンタだってレベル3でしょ!」
罵声を浴びせながらも、モンスターから視線は外さない。
「……勇者の名前は何て言うの?」
「俺の名前は『あ』だ! そんなことより目の前の敵に集中しろ!!」
今のところ2人パーティーだが、通常プレイだとここにもう一人加わっているはずだった。
「『あ』!? そんな名前つける親がどこにいるっていうの!?」
「絶対に逃がすんじゃ……集中しろオラァン!!」
そう、この小さく素早いメタリックスライム狩りがこの先の攻略には必要不可欠なのだ。
そしてロッティオの町を出る前に9個購入したこの聖水こそが、最短攻略の糸口となる。
「よし、いまだ!!」
ビンに入っている聖水を勢いよく浴びせる。
一滴でもモンスターに触れれば、その動きを封じることが出来る最強のアイテム、それが聖水。
通常まともに狩ることのできないレアモンスターを余裕で仕留めた。
「ッフゥー! 経験値が美味いぜ!!」
「なんか私の魔力一気に増えたような……」
この一匹だけで、ゴブリン100匹に相当する経験値を獲得できる。
レベリングに最も適したモンスターだけを狩るのはRTA走者として当然の行為だ。
「いいか、残り8本。確実に当てろよ。敗北は許されない」
「私のロッドを売って買った聖水なんだから、そっちこそ外さないでよね!」
――《バオー城 城下町》
広大な平原の中心部に、この城がある。
道中スルーした城だ。
レベリングを終えた俺たちは、豪華な石造りの通りを走った。
やることは決まっている。
「イルル、この店の前で服を脱げ」
「なぜに!?」
道具屋にて、この先必要になる重要アイテム『音爆弾』を1つ購入した。
勇者の威嚇に負け、身を削って。
「あぁ……さよなら私の魔法のローブ」
勇者には敵わない、とイルルは悟った。
よく考えたら勇者も最初から肌着のみだったのだ。
「さぁ、強行突破だ!!」
――《バオー城 城門》
ボカァァン!!
「ナンダ、何ガ起キタ!?」
城の兵士は音のする方へ散った。
音爆弾により、警備が手薄になった頃合いを見て城内へ侵入する。
――《バオー城 城内》
「えっ、城の様子がおかしい!」
説明しない! 俺は説明しないぞ!
ただ俺は既にゴースト系モンスターが城を占領していたのを知っていただけだからな!
「イルル、ついてこい! 全逃げだ!」
――《バオー城 王の間》
「ギャオオォォ!!」
俺はシルバーソードを全力でぶん回し、銀に弱いゴーストキングを倒した。
「レベチ(レベルが段違い)なんだよ雑魚が」
ツバを吐き捨てている間に、憑りつかれていた王は正気を取り戻した。
展開を知っている俺は、王の感謝の『か』の字も聞かずに、側近である戦士の手を引いた。
「吾輩、名をカイムと――」
「いいからさっさと全部脱げ!!」
冷や汗と共にイルルは何かを察し、金貨袋をぎゅっと握った。
――《平原 フィールド》
「よし、お前の腕前を見せるんだ」
パンツ一丁の戦士『カイム』 VS 初級モンスター『キノコマン』。
当然ながら、レベル5の戦士は素手でも倒せてしまう。
「吾輩の雄姿を見せるであるな」
無駄な経験値は分配したくない。つまり、こうだ。
背後から、勇者の会心の一撃が決まる。
戦士は戦死した。
今後は幽霊化した状態でついてくることになった。
「吾輩、このスタイルでいくのであるな?」
中身はゴツいおっさんだけど、なんとも可愛らしいチョビヒゲの幽霊がその場でくるくる回っている。
ちゃんと憑いてこれるようだからペットみたいな雰囲気になった。これでよし。
「大丈夫、魔王戦で復活させっから!」
「道中は出番無しであるな?」
【現在のタイム 0:27:33】
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