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第2話 囚われの子供を最速で救えッ!!



 ――《ヴァルハラン城 王の間》


 まず俺は、王様のそばに置いてあった宝箱を高速で開けて、中からブロンズソードとブロンズシールド、そして50ゴールドを取り出した。


「よく来た勇者あよ! そなたの父、勇者パパテロスは未だ行方が――」


 王様と一切目線を合わせず、俺は着ていたブロンズメイルを脱ぎ、シールドだけを装備して町へ向かおうとした。


「では大臣よ、勇者あに冒険の支度金と装備を与えるのだ」


 おせーよ雑魚が!! もう取ったわ!!

 去り際に大臣が「武器や防具は装備しないと効果を発揮しませんぞ」とか言っていた気がするが、そんなお約束は超ベテランRTA走者の俺には全く不要のものなんだよ。


「そなたの旅の無事を祈っ――」


 ガチャガチャと武器防具を抱えたまま俺はダッシュした。



 ――《ヴァルハランの町 道具屋》


「いらっしゃい」


「おいオヤジ! 盾以外全部売るから薬草7個よこせ! 早くしろオラァァン!!」



 ――《草原 フィールド》


 スライム! キラーホーン! イヌソルジャー!

 一切相手にせず、基本的には全逃げ一択。俺はレベル1のまま次の目的地を目指して駆ける。



 ――《ゴブリンの洞窟》


 ヴァルハランの町より北にある、ゴブリンどもの巣窟へとたどり着いたが、俺の足は止まらない。

 迷路のように入り組んだ洞内を迷うことなく全力疾走だ。


「おっし、やっぱりドラスペの世界そのままだ。洞窟なのにしっかり明るいぜ」


 最短ルート、最短距離を通り、瞬く間に最深部へと到達した。

 ここでは誘拐された子供を救出する目的があった。


「ギギッ!? ナニモノダ!!」


「ふんぬっ!!!!」


 俺は全力でゴブリンをぶん殴った。剣は最初に売ったから、拳と拳のぶつかり合いだ。

 奥では、子供が檻に入れられている。


「おじちゃん、気を付けて! ゴブリンがいるよ!」


「会話がワンテンポおせーんだよオラァァァ!!!!」


 ゴブリンを2発殴って、殴られたら薬草で傷を癒す。これを数ターン繰り返した。


「ギギャー!!!!」


 親玉ゴブリンを討伐した俺は、檻を蹴破って子供に話しかける。


「おっし、お前の村へ帰るぞ!」


「ありがとうおじちゃ――」


 子供をわしづかみにして再び地を蹴った。重量だのなんだのを無視した全力疾走である。



 ――《ムーラの村 民家の前》


 村人たちが慌てていた。

 俺は子供を抱えたまま民家の前にいる母親に近づくと、泣きそうな顔で声を掛けられる。


「あぁ、私の息子がゴブリンにさらわれてしまいました! どうか、お助けください!!」


「……うん!」


 よく見ろや! あんたの息子抱えてるだろが!!


「あぁ、おかえり坊や! ありがとうございます! ありがとうございます!」


 実際のゲーム進行を大幅に無視したため、母親のセリフが追い付いていなかった。

 そう、RTAにおける重要なテクニックがここにある。


「おじちゃん! たすけてくれてあり――」


「おう、気にすんな! じゃまたな!」


 ――『フラグ』とは、後に特定の展開や状況を引き出すスイッチのようなもので、これを『立てる』ことによりイベントが進行するというものだ。逆に、立てる必要のないフラグは無視するのがRTAのセオリーである。


 つまり、『村で事情を知ってから洞窟で子供を救出して村に戻る』のではなく、『洞窟で子供を救出してから村に向かう』が最短ルートとなるのだ。


「フハハハ!! 待っていろよ魔王!! 1時間後に会おうぜ!!」


 だいぶノリノリになってきた。



【現在のタイム 0:07:42】

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