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あなたってばなんてものをもっているの?

 



 目覚めるとそこは見知らぬ天井でした。



 柔らかな布団を捲り半身を起こし、背筋を伸ばし深呼吸をする。

 恐らく太陽が顔を覗かせたぐらいだろう。まだ辺りは朝の静けさで満ちていた。


 怒涛の1日を終え、バタンと眠りに落ちたのであっという間に朝になっちゃったな。



「ルーシャおはよう」

 -あっ…りぃ…お、おはよう、ございます…。



 クルーシャの様子が少し変だ。でももしかすると寝起きが悪いかもしれないし。ってか、中にいるクルーシャも寝るんだろうか?



「ルーシャも寝てた?それともずっと起きてた?」

 -寝ていた…と思います。



 よかったー。ひとりぼっちにして私はグースカ寝てたなんてクルーシャに悪いよね。


 ベッドサイドのチェストの上に水差しとコップが置いてある。

 昨晩ドロシーちゃんが用意してくれたものだ。

 コップに水を注ぎゴクリ飲む。

 食べ物、飲み物等あまり向こうと変わらないみたいで安心した。

 異世界ならではのヘンテコ食べ物とか出てきたらどうしようかと思ってたし。



 さて、と辺りを見渡す。

 床は土足でウロウロするタイプだからこのままベッドの上でいいかと、軽くヨガを始める。

 むっ足とか筋肉痛だ。…もしかして昨日の階段ダッシュのせい?昨日ちゃんとマッサージしてから寝ればよかったな。



 -りぃ?何をしているのです?

「あぁ、ヨガって言って体幹なんかを鍛えてるんだ。私は毎朝このヨガとランニング、筋トレとかするんだ」

 -朝から運動をなさるのですか?!

「朝活だねー。結構いいんだよ。目を覚めるし」



 驚愕しているクルーシャはほっておき黙々とヨガのポーズを決めるが…、いくつか出来ない。関節が硬いのと邪魔なお肉のせいだな。

 あとベッドの上のせいで立って行うポーズは出来ないな。



「ねぇ、見返すためにまずはダイエットをしようと思ってるんだけどいいかな?」

 -…恐れながら、ダイエットとは?

「痩せること、かな?ちなみにただ痩せるだけじゃなくて綺麗に健康に痩せるからね!」



 ふふふ、私のノウハウをもってすればクルーシャのダイエットは完璧だ。

 それに。



「せっかくの高身長だもの。スーパモデル級に綺麗にする」



 私が叶えられなかった夢。

 ティーンモデルから女優に転身した理由。

 低身長。そう言っても155センチはあったけど、モデルとして活躍するには難しかった。

 体型維持など努力できる所は全て努力した。けども身長は無理だった。藁にもすがる思いで民間療法的な物も試したがモデルとして活躍することは出来ず、女優としてデビューするまで随分悩んだものだ。



 -スーパモデルというのがなにかはわかりませんが、私はこの背の高さで随分、苦労してきました。

「だよね。何となく分かる」



 あの王子の言葉が蘇る。

 小さくなる努力をしろ…だったね。多分それはほんの一部だろう。クルーシャは他の人からも色々と言われてきているんだろう。



「人と違うものも貶めたり、差別するのはこの世界も一緒なんだね。でも、私はこの身長が欲しかった」

 -何故ですか?…いいものではありませんよ?

「背が低いせいで憧れていた仕事が出来なかったんだ。モデルって言って売りたい、流行らせたいお洋服を着て宣伝する、みたいな感じかな?そして雑誌…本とかでその綺麗な衣装でかっこよくポーズを決めるんだ。…羨ましくて仕方なかった。なんで私はこんなに身長低いんだって。だからね、ルーシャ」

 -はい。

「私、この身体好きだよ。色んな人が嫌なこと言ってきたかもしれないけど、私にとってすごくすごく欲しかったものなんだ」



 だからありがとう。この身体に連れてきてくれて。


 クルーシャは何も言わずに黙り込んでしまった。

 身体的特徴で虐められていたクルーシャに対して無神経なことを言っちゃったかな…。



「そういえば、今日の朝早いみたいなことを言ってたけど、ドロシーちゃんは来るのかな?」

 -あっええ、毎朝私の身支度のために早くに来ますのでそろそろ来るのでは無いですかね。

「そっか!じゃあこんな運動してるの見られたらビックリされちゃ」

「クルーシャ様?!何をなさっているのですか?!」



 場の雰囲気を変えることには成功したが、四つん這いになって背筋を伸ばすの猫のポーズを行っている所をドロシーちゃんに見られた。



「ふぅ…おはよう、ドロシー。朝早いのですね」

「く、クルーシャ様こそ普段はわたくしめが起こさない限り寝ていらっしゃるのにお目覚めお早いですね」



 -朝弱いの?

 -そこまでではないかと…。でも夜遅くまで書物を読んだりしていてなかなか起きれないことが多いですね。



「たまには気分転換に早く起きて身体を動かしたくなったのです」

「そうですか…。はっ!そうですよね!わたくしめが気づかず申し訳ございません!やはり、昨日の一件がショックだったのですよね!」



 なにやら私の独り言を含む不思議行動は婚約破棄のショックのせいだと片付けられた。

 それはそれであの王子を引きづっているみたいで解せぬが、多少クルーシャらしからぬ私の言動が飛び出しても誤魔化せるだろう。



「では身支度を致しましょう。まずはお召し物から」



 寝衣にと着ていた膝丈のワンピースシャツを脱ぎ用意してもらった黄緑色のフリルたっぷりワンピースドレスに着替える。


 黄緑て。



「ど、ドロシー、このドレスは?」

「アルフレッド様からのものでございますがいかがいたしましたか?もしや別のものがよろしいですか?」

「…いえ、今日はこのままでよいです。確か朝早くに出発するのでしたね」



 あのお義兄様趣味わるっ!

 黄緑色1色のドレスしかもバルーンスカート!膝丈!


 内心毒づきながら用意してもらった水で顔を洗いドレッサー代わりの机に座る。

 そういえば、毎朝必要な分をドロシーが井戸からここまで運んでいるって聞いて水道、蛇口を捻れば水が出るって本当に便利な事だったんだねとしみじみ思った。異世界生活大変そうだ。



「おっしゃられていた鏡、ご用意いたしましたのでどうぞ」



 手渡された鏡は楕円形のそこまで大きくない一般的な手鏡だったけど、木で彫刻された花などのモチーフが綺麗な鏡だった。



「まぁ、素敵な鏡ですね!…これもお義兄様ですか?」

「いえ、こちらはフェルト様からの贈り物です」



 そうだよね、こんな趣味のいいものを贈れないよね。多分。

 でもフェルト様って?



 -おじい様です!こんな素敵なものを贈っていてくださっていたんですね!



「まぁ、おじい様からでしたか。それは今度お礼をしなくてはいけませんね」

「えぇ、是非お戻りになられたらお伝えください」

「そうですね」



 戻る?家にいるのかな?



 -ねぇルーシャー、おじい様に会う予定があるの?

 -領地を今治めているのがおじい様なので領地に戻れば会うことになります。



 ふむふむ。ってか、やっぱりクルーシャの周りの人間関係の把握ちゃんとしなきゃな…咄嗟に演技が剥がれそうになっちゃう。



 そう心に書き留め、鏡を再び手に取る。

 さて、ここからが重要です。

 昨日からクルーシャの顔がどんなものか見ていない。魔物図鑑みたいなのであだ名の由来は見せてもらったから正直どんな感じなのかなーと怖くはある。

 でも、この世界にメイクとかあればある程度技術でカバー出来るし。今後どんな感じにしていくのかもわかるよね。

 今のままじゃ服も何が似合うか分からないから悪趣味義兄様チョイスの服しか着られない。



 -よしっ!

 -不快に感じる顔かと思われます…。醜いと散々言われて参りました…。本当にごめんなさい。



 そんな醜い顔の身体に魂を入れてしまって…とネガティブモードのクルーシャ。



 -大丈夫!私に任せて!失礼だけどある程度は覚悟してるし、そこから綺麗になって見返すなんてストーリー的に盛り上がるところだし!



 くるりと鏡をこちらに向け覗き込む。


 後ろではドロシーちゃんが髪の毛を頑張って櫛で解いてくれている。


 そんななか、私は不覚にも見とれてしまった。



 なんて、鮮やかな赤の瞳なんだろう。

 宝石を見て綺麗だと感じる。そしてこのクルーシャの瞳も同じだ。

 赤の中に虹彩色が混ざり、角度によってキラキラ光が揺らめく。

 瞳を彩る金色のまつ毛は長く頬に影を落としている。

 鼻筋をしっかり通っており高すぎず低すぎず。

 唇はまるで薔薇のような血色をし、ぷっくりしている。



 まじか…。



 何このパーツのポテンシャルの高さ。日本人離れしているどころか人間離れした美しさを持ってる。


 うん、でもさ…

 頬の肉はたっぷり。浮腫もあってパンパン。顎のラインは消え失せ首と一体化。むしろ首どこ?全部顎じゃないって感じだ。

 さらに肌はボロボロ、ニキビが至る所に存在している。



「もう!!!なにこれ!クルーシャってば!?」

 -はい!!すみません!

「え!?クルーシャ様?!いかがいたしました?!」



 おっと、あまりの宝の持ち腐れっぷりに声を荒らげてしまった。

 ドロシーちゃんがビックリしてる。でも仕方ないじゃない。こんな酷いことってない。人間離れした美しい瞳を筆頭に美人要素満載なのに、こんな…、なんだか泣けてくるわ…。



「ごめんなさい…。やっぱり昨日のことがショックで…突然騒いで驚かせてしまったわね」

「はっ!?そうでしたね!心的障害というやつでしょうか…、うぅお労しい…」



 うん、当面これで切り抜けよう。ってか、ドロシーちゃん、ちょっとチョロすぎない?大丈夫?


 心配になりながらも身支度を整えてもらう。


 髪の毛をまとめてもらっている最中も私はクルーシャの瞳に夢中になっていた。



 -はぁ…本当に綺麗な瞳ね…。見たことの無いぐらい輝いてる…。

 -お義兄様からは異質だ、ヴィンセント様からは気持ち悪いと言われました…。

 -見る目のないヤツらばかり!ルーシャの瞳宝石か星みたいにキラキラしてて本当に素敵だね。

 -ありがとうございます。…実は亡くなった母も同じ瞳だったんです。昔はその事を誇りにも思っていたのに色々言われてすっかり忘れていました。



 クルーシャ自身もこの瞳は母を思い出すから好きだった。でも悪意の言葉でその気持ちを見失い、異質だと言われた瞳を前髪を伸ばして隠し、自分でも鏡で見ないようにしていた、と教えてくれた。


 多分クルーシャが語ってのは一部の悪意だろう。もっと沢山言われて、心的に病んでしまっているんだろう。



 再度決意を新たにする。



 絶対に見返す。



 見返す材料はこんなにも揃っている。

 復讐する理由はたっぷりある。


 飛びっきりの美人にして今まで怪物だと罵ってきたヤツら全員後悔させてやる!

 あのバカ王子もついでに婚約破棄なんてするんじゃなかったって泣いて後悔させてやるからね!





いつも読んで下さりありがとうございます。

本当は旅立ちまで書きたかったのですが、ちょっと長すぎかなと次回に回すことにしたのですが、本文長すぎですかね?

私が短いものよりまとめて読める方が好きなので長めにしているのですが、もしかして読みづらかったりしたらすみません。


あと評価頂きありがとうございました!

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