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この気持ちはどちら向き?

更新停滞して申し訳ございませんでした!


今週に入り体調不良プラス文章が書けなくなっていました…。

スランプに落ちかかっているようなのでなるべく早く復帰出来るよう頑張ります…。




■リードside



もう休むとシャーレを下がらせ寝台に横たわる。

大きな寝台、恐らく屋敷の主に併せて用意されたものだろう。大の字に転がっても随分と余裕がある。



「さて、今日も行きますか」



ここの所機嫌がいい。それは自分でも分かっていた。


ソフィーに命令され、渋々ここまでやってきた自分はどこに行ったのだろう?

あの子、いやあの子たちに会い、話す。それだけで心浮かれる。


何故だろう?


同じ闇魔法保持者だからだろうか?

多魔法使いだからだろうか?


いつくか理由を探すがどれもピンとこない。



「ただ、惹かれてるだけなんだろうな」



そう、自覚はある。

自分が恋に落ちていることに。


ただ、相手が分からない。

リイナか、クルーシャか。

2人は1人だ。でも、個人だ。だからこそ分からない。



俺は、どちらに惹かれているんだろう?



-ねぇ、リード…、私いつまでここにいられるんだろう。



普段の声色とは違う、深く沈んだ声。消え入りそうな声で問われる。



-それは…。



前例のない事だ。狭間の世界からやってきた魂。

話を聞く限り生は尽きている。

それなのに、別世界であるここに今存在している。

答えが出せず思わず黙る。



-ふふ、ごめんね。ちょっと聞いてみたかっただけなんだ。

-いや…。

-前例ないイレギュラーって聞いてるし、大丈夫!いやー、今こうしておられるだけでラッキーなんだよね。リードみたいなかわい子ちゃんに会えたし。



眼福だわ、といつものような明るい声が響く。多分気を使われた。

それが悔しい。年下の女の子、しかも好意を寄せているかもしれない子に。



-俺も、お前に会えて良かったよ、リイナ。

-そっか、うん、それなら良かった。…ねぇ、今度会ったら上目遣いでそのセリフお願いしていい?

-まったく、お前は。



2人で笑う。笑うしか無かった。

リイナの不安を俺は無くしてあげられない。どうしたらいいのか分からない。



-あっ!そうだ!リードに聞きたいことあったんだ!



ルーシャの居ない隙にさ。と寝ているクルーシャに気を使ってか、途端小声で話し始める。



-リードの初恋って?



そこか。そうか、それを今聞くか。



多分目の前にいたら興味津々と瞳を輝かせているリイナの姿が思い浮かび自然と口元が笑む。



-そんなこと聞きたいのか?

-うん、ちょっと気になることがあってさ。

-闇魔法保持者って所だろう?でも年齢的にクルーシャは違うんだよ。

-まぁまぁ、一旦お姉さんに話してみ?



何がお姉さんだ。

こっちのが年上だろう。



-はぁ、長くなるから説明は端折るぞ。

-お願いします。



わくわくといった様子の声が返ってくる。

仕方がない、別に隠すようなことも無いし、語るとしよう。



そうだな、まず俺が平民出身という所から話始めようか。



家族は父母兄、それと俺。ジェイの暮らしていた街に住んでいた。

父親は街の門番、母親は近所の料理屋に働きに出ていた。そう、本当に一般的な家庭だった。


ある日、俺が留守番の暇つぶしにいつも行く港に行った。そこで船を動かす魔術具に事故的に触れた。

確か、転んだか一緒にいた友達にふざけて突き飛ばされたか、イマイチ覚えていない。ただ、魔術具が起動した。それがきっかけだった。


そこから気づけば魔術師団に連行され、真眼の儀

を行われた。

真眼の儀?ああ、魔力の有無と属性について調べるだけの儀式だ。

魔力を持たない、はずの平民は行わないが魔力を持つ可能性の高い貴族は数え七になるとこの儀式を行うんだ。

まぁ、そこで俺は桁外れの魔力と、闇魔法保持者だと判明したんだ。


そんなある日、この国の第1王子が他国からの闇魔法によって倒れた。

闇魔法に対抗するには闇魔法。しかも相手より強くなければ打ち勝てない。

そして国に属していた闇魔術は軒並み相手に勝てなかった。まぁ相手が強すぎたんだ。


そこで俺が召喚された。命を賭しても王子を救えと命を受けて。


まぁ、平民と王子だったら王子の命をだよな、と自分でも納得して王子を救った。


ただ、俺は強すぎたんだ。魔力が膨大に膨れ上がり暴走し、完全に魂と肉体は離れた。


肉体を見失った俺はただたださまよった。


そして、そこで何も無い世界でぼんやり死を待つんだろうと思ったよ。ボロボロに壊れつつある自分を感じながらね。



-どうしてこんなところにいるの?



何も無い世界でぼんやり輝く魂に出会った。

そしてそれは俺を救ったんだ。

魔力を分けてくれ、帰り道を示してくれた。



-きみは?お礼をしたい!

-おれい?さっきからありがとうってなんかいもきいているわ



そう言い残し、去っていった。

無事肉体に戻って色んなことがあったが、あの光を決して忘れないように度々思い出している。



-ぼんやりと輝き、春の日差しのような光の持ち主に俺は会いたいってだけなんだ。面と向かってお礼を言いたい。だから、これを初恋というのかは分からない。

-そっか。命の恩人、ってやつね。

-闇魔法保持者なんてそうそういないが居ても他国だ。なかなか確認に行けず、お礼も言えないまま今に至るってわけさ。



ふーん、と黙って話を聞いていたリイナが何かを考えていた。

まぁ、魔力のない世界から来たんだ。理解するのも難しいだろうな。



-ねぇそれってクルーシャじゃないの?

-いや、俺が10歳になる頃の話だ。魔力覚醒は7歳からだから、年齢的にクルーシャは対象外になる。

-でも、陽だまりのような光って、クルーシャのことよね?



それにはびっくりした。そうなのか?

俺が見た時にはモヤがかって見えなかったが、リイナには見えていたんだろうか?



-狭間の世界?だっけ?そこで見たんだよ。初対面、震えて小さくなっていたけど陽だまりみたいだったよ。



そうなのか?ありえるのか?いや、でも…。



-そんなの1回聞いてみたらいいんじゃない。



うじうじ悩んでても仕方ないでしょうと背中を押すリイナは先程の面影はなかった。

そうか、とだけ返事をする。



-リイナは強いな。

-そう?そうかもね。前の世界でも基本バリバリ仕事こなしてきてるし!

-仕事?それは幼いのに大変だったな。

-ねぇ、私19歳だったのよ?

-…てっきりクルーシャと同じぐらいかと思っていた。いや、でも俺は22歳だから俺のが年上。

-嘘!その顔で成人してんの?!世も末ね…。

-何言ってんだ?


たわいない会話を楽しむ。

のんびり時間が過ぎていくが、夜も随分ふけたようだ。



-そろそろ俺は休むよ。

-そう、私も休むわ。明日も朝から忙しいし。

-そうか、また会いに行くよ。

-まったく、ドロシーちゃんに行ってリードたちの朝食も準備してもらうわ。



文句を言うような言い方だが言葉からはそんなニュアンスは伝わってこない。

一見冷たいのに優しい。なんか、いいな。



-ルーシャも喜ぶし、あと、ルーシャが起きてる時に来なさいな。

-分かった。じゃあお休み。

-うん、お休みなさい。いい夢を。



小さなランプの光だけが部屋の中を照らす。

寝台から身を起こし、ガラスのコップに水を注ぎ一気に煽る。



「喜ぶ…か」



俺が会いに行って喜んでくれるならそれは行かなければならないだろうな。


口元に笑みを浮かべ、執務で利用している机を見る。


団の本部から移転陣を使って次々に書類やら試作品やらが届くためまた机の上はもので溢れかえっている。

いつもなら文句を言いながら仕事をするが、今日はもう休もう。


明日会って文句を言われたくないし。


懐にしまってあった香袋を取り出し、枕元に置く。ラベンダーのいい香りに包まれ、瞼は重くなってくる。


魔術具か?と訝しむほどよく寝れるこの香袋。後生大事にしているとシャーレにバレていたんだな。



取り留めのない事を考えながら重くなった瞼を落とし、眠りに落ちた。





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