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2人っきりで話すのは初めてですね

 


 よく泣いてよく食べて、よく寝る。よく育つ子の条件だよね。



 部屋に帰ってきたクルーシャは少し疲れた様子だった。



 -ルーシャ、あれなら寝てもいいよ?

 -いえ…まだ夕方ですし、寝るにはまだ早いので…。

 -でも今日の予定全てやめたし、多少早くてもいいんじゃない?

 -いや、でも。・・・。

 -それでもさ、・・・。



 何度か寝る、寝ないの押し問答の末寝てくれることになった。

 夕飯は不要ということだけお茶を入れに来ていたドロシーちゃんに告げる。



「本当によろしいのですか?」



 心配そうだけど、パンケーキ沢山食べたし今日はもう充分だ。

 それに、やっぱり少しだけ精神的なのか食べ過ぎたのか、胃が痛むので夕飯は遠慮させてもらった。

 まだ心配そうなドロシーちゃんに身体を拭いてもらって、スキンケアもどき、ヘアケアもどきを施していたら、クルーシャがうとうとしだしそのまますんなりと夢の中に落ちていった。



 -…るーしゃちゃーん…。



 返事はない。おぉ、すっかり熟睡だ。

 そして朝と同じ私は寝ていない。私はまだ考えたいこともあったし、ちょうど良いとばかりに紙を取り出して頭の中にある計画を記しておくことにしておく。


 こう書き出すとやること多いし、上手く進めないと計画に支障をきたす可能性があるな。

 お風呂…いつ出来るかな?そうしたら半身浴とかやれることは増えるんだけどな。その前に石鹸とか準備しなきゃだね。

 よし、何としてでも作戦は成功させたいし、私が頑張らなきゃだね!

 気合いを入れ直し、計画書は折りたたんで机の引き出しの中に閉まっておく。

 こういうのは目に見えるところに貼っておく方がいいんだけどさすがにドロシーちゃん他色んな人が入る部屋だし。



 さて、まだ時間が空いてしまった。まだ私自身は眠くないし、何をしようかな?


 とか言いつつ、じゃーんと裁縫道具を取り出す。

 ふふふ、実は既にやりたいことはあったのだよ!

 と、何故かちょっとテンション上がり気味。

 クルーシャと一緒にいるのはもう何も感じないけども、完全に1人っきりという状況が久しぶりでなんだか楽しくなってきた。



 ちょっと鼻歌混じりでドロシーちゃんに用意してもらった布切れをザクザクと切っていく。

 小さな長方形を作ったら1辺だけを残して周りを縫い合わせていく。


 ふふ、私お裁縫得意なんです。

 まぁ、例の極貧時代に身につけたスキルで、ちょっとしたカバンとかも100均で材料買ってきて作ったものよ。

 もちろん編み物も得意なんです。100均毛糸豊富なので、マフラー、手袋、セーターなんかもガシガシ編んでやったわ!

 しかもご近所さんから腕を見込まれて、編み物、縫い物を頼まれ、出来高でお小遣い貰ってたわ。浴衣とかも手縫いしたなー。

 手元を見ると既に10個ほど小さな袋がいくつか出来上がっていた。


 このままじゃなんか寂しいし、と軽く刺繍を入れる。私の好きな椿をモチーフにした柄を刺していく。

 ふむ、結構いい出来では?!



 -随分と夢中で何をしているんだ?

 -ドライフラワーを沢山貰ったからポプリでもって?!え?!

 -やぁ、こんばんは。これでも随分前から声をかけていたんだよ?



 え?なぜ?なんでのリードだ。この状況でリードの声が聞こえるんだ?

 また不法侵入かと辺りを見渡すがこの部屋にも、一応窓の外にも人影はなし。



 -ふふふ、驚いているな。俺は闇魔法使いで、なおかつ魔力が潤沢だからな。魂抜けなんて造作もない。しかも、お陰様でよく寝れたしな。ありがとう。



 おや?お礼を言われているはずなのにトゲのある言い方をする。

 まぁ、気絶させた原因は私にあるらしいけどあんな程度で意識を失うリードもリードだと思う。



 -それで?なにしにきたんですか?

 -…冷たいな。もっとなにかないのか?さすがです!とか、かっこいい!とか。

 -かっこいいは無い。リードは可愛い派。これは死んでも譲らない。わかった?

 -…なんだ、その意味のわからないこだわりは。まぁいいか。クルーシャは?

 -いいんだ!ルーシャなら今寝てるよ。リードが意識失ってからちょっとひと騒動あってね。疲れて寝ちゃってる。



 リードと話していても起きてくる様子のないクルーシャはよっぽど疲れていたんだろう。



 -リイナが起きているのにか?…魔力の使いすぎ?

 -まりょく?

 -知らないのか?魔力とは魔術の源であり、魔力を糧に様々な…

 -それは知ってます。私が起きているのと魔力が関係するの?

 -というか、寝ているクルーシャが、だな。魔力は睡眠でしか回復しない。そのため、酷い魔力不足に陥ると昏睡状態に陥ることがある。

 -こわ。でも、最近魔力なんて使ってないよ?多分疲れて寝てるだけじゃないかな?



 実際に、あの日魔物に襲われた時以来魔力は使っていない。

 でも、リードの説明で少し合点がいった。

 あの時火事を抑えるため水を降らせたあと、馬車の中で寝ても寝足りなかったのはそういう事か。



 -疲れて寝ている。…子供みたいだな。

 -ね、可愛いよね。

 -そうだ…。んんっ!ところで何をしているんだ?!



  誤魔化し方下手だなー。でもいいんです。この2人にも口出ししないって決めてますから。



 -作戦立てたり、内職したり。眠くなるまでの暇つぶしだよ。リードは何しにきたの?

 -俺は…ちょっと確かめたいことがあってな。

 -ふーん、なにを?

 -…お前たちの魂の形。



 魂の形?

 私、魔法なんてない電化、化学の世界からやってきた一般人なんですよ。そんな魔法の事をパッと言われてもわかんないんですよ。

 特に今はクルーシャ寝てるし。



 -伝えるのが難しいんだが、普段は近くで直接話しているから分からないんだが、俺自身が魂抜けして、お前たちの魂を外から見れる…みたいな感じか?

 -…よくわかんないや。まぁいいや。後でルーシャに聞くよ。

 -…説明したのに。



 ごめんね、リード。ルーシャの説明のがわかりやすい。

 あと今は声しか聞こえないから君の可愛らしい姿が見れず私がリードに甘くすることはない。

 もし、上目遣いできゅーん…と見つめられたら頭フル回転で考えるけど、無理です。



 -それで?確認できた?

 -うん。リイナ、お前の魂ビックリするぐらいキラキラだな。

 -そうなの?まぁ、芸能人でしたし、人気もあったからね!

 -ゲイノウジンがなにか分からないが、それほどの輝きだ。人を引き付けていたのは分かる。



 なんか、オーラ鑑定みたいだね。じゃあクルーシャはどうなんだろう?



 -ただ、肝心のクルーシャは、はっきり分からない。黒くモヤがかかっていて本来の姿が見えない。

 -それって…。

 -あぁ、多分精神的なことだろうな。



 だよね。だってあんなに傷つけられてボロボロにされていたんだ。

 出会った時のクルーシャを思い出してグッと胸が痛む。



 -でも、所々モヤは薄まっているな。…きっとリイナのおかげだろう。

 -そうかな?…うん、そうだったらいいな。そう思っておこう。



 私がこの世界にやってきた理由。まぁ無理やりだったんだけど、クルーシャを救いたいという気持ちは大きかった。

 まぁ、今もだけど。いや、改めてクルーシャの人となりを知って更にその気持ちは大きくなったけどね。



 -そっか。じゃあ確認は出来ないな…。

 -ねぇ、リードは何をそんなに確認したかったの?

 -…俺は昔同じ闇魔術師に助けられたことがあるんだ。年齢的には違うと思ったが、闇魔術師の魂を確認できるチャンスなんてそうそうないから思わず見に来たんだ。



 残念がっていたリードの話によると、闇魔法保持者はこの世界に確認できるだけで30人ほど。

 そしてほとんどの保持者はそれぞれ国に保護されている。

 そのため、勝手に干渉すると攻撃とみなされ国家問題になるらしい。



 -闇魔法は巨悪な存在だし、なかなかに難しいんだ。他の魂を調べたりするのは。

 -…直接お願いしに行ったらどう?リードの可愛さならよその国でも通用すると思うよ。

 -いや、俺自身も国の保護の中だから勝手に出来ない。今回はソフィー…、第1王子の許可があって、お前たちとも面識があったから出来ただけだからな。まぁいいんだ。クルーシャの年齢や魔法発動の歳なんかを鑑みると可能性は低いし。って、なんだ、お前のその可愛さあれば全て行ける!みたいな考えは。



 いや、そんな呆れられ風に言われてもそれが世界の心理よ?



 -子猫が可愛いとちょっとしたイタズラも許せたり、そんな感覚よ?分かるでしょ?

 -わからない。俺を子猫扱いするな。

 -するわけないでしょ?!リードは子猫よりもっと可愛いわよ!私が認める可愛いナンバーワンよ?!ふざけないで!



 子猫も可愛い!でも、リードの方がもーっと可愛いんです!!!

 全人類の中で1番と言っても過言ではないと思う気がする!



 -はぁ、そうか。わかった、わかったから喚くんじゃない。じゃないと、

 -…りぃー…?なにかあったんですか…?…リードさまもいらっしゃるのですか?



 あっ、クルーシャ起きちゃった。

 ほらな、といった様子のリードの存在にすぐに気づいたクルーシャが慌てている。

 大丈夫、近くにはいないってよ。



 -魂抜けですか。魔力を豊富に使うのに軽々とご使用なさるなんてさすがです。

 -いや、俺はただ魔力が多いだけだ。クルーシャは多魔法使いじゃないか。そちらの方が素晴らしい。



 いえいえなんのそちらこそ、と往来が始まった。このままでは永遠に終わらないかもしれない。まったく、と口を挟むことにする。



 -私から言うと2人とも魔力チートって言うのよね。…本来は私みたいな異世界来訪者がなんかチートとか持ってるべきだと思うのに。

 -魔力ちーと?

 -りぃ、チートとはなんですか?



 私もよくわかんない。けど流行りの小説とか読んでるとよくでてきた言葉だから覚えている。

 確か意味は…。



 -元々の意味とは外れるんだけどイカサマしてるんじゃないかと思うぐらい能力が凄いこと…かな?



 芸能界にいる身として様々なエンタメをかじった程度なので間違っているかもだけどさ。



 -まぁ!では私たちりぃに認められてるということですね!

 -そうだろうな。チートか。いいな。



 どうなんだろ?いいのかしら?

 と少し疑問に感じながらも2人とも気に入ったみたいなのでまぁ良しとしましょう。


 何だ、この2人和むなー。



いつもお読みいただきありがとうございます!

今回ちょっと短めでございます。すみません。


また別件ですが100Pt達成致しました!これも皆様のおかげでございます。記念SSは誠意製作中でございますのでしばらくお待ちください。

どうぞこれからも応援お願いします!

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