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さて、まずはなにからはじめましょうか?

 



 昨夜は随分遅くまで盛り上がってしまった。

 まだ眠いがムクリと身体を起こしふぁぁっと背中を伸ばす。



 -おはようルーシャ

 -おはようございます、りい



 窓から差し込む光は随分明るい。

 昼…まではいかないが日はだいぶ登っているみたいだ。


 いつも通りコップ1杯の水を飲み、ベッドから降りる。



 -おぉ…さすがに身体重い気がする…。

 -あの量でしたからね。かろりーというのも高そうでしたし。

 -でも美味しかったし、このお屋敷のみんなと仲良くなれたみたいで楽しかったよ。

 -はい!りぃと一緒になってから初めての経験ばかりです!あんなに大勢の人とおしゃべりするの楽しかったです。



 クルーシャが満足で良かった。この子、根っからの引きこもり人嫌い性格じゃないみたいなのよね。

 結構人好きだし、おしゃべりも好き。ただちょっと人見知りと、人が怖いって思っているのかも。



 柔軟、ヨガと順に行い身体を動かしてから、チリリンとベルでドロシーちゃんを呼ぶ。

 いつもなら朝起こしてくれるが今日はゆっくりしてくださいと起こさない宣言を貰っていた。



「おはようございます、クルーシャ様。ゆっくりおやすみ出来ましたか?」

「おはようドロシー。えぇすっかり朝寝坊してしまったわ」



 ワゴンを押しながら入室したドロシーちゃんは素早くテーブルに紅茶とパン、サラダ、スープを用意してくれた。



「さて本日から早速作戦開始いたしますね。お昼は多めにご用意します」

「えぇ、代わりにお夕食を少なめにお願いしますね」



 爽やかな香りの良い紅茶をゆっくり飲みながら昨日話し合った内容を思い出す。


 メイドさんの中には美容について熱心な人も何人かいて結構充実した話し合いだった。


 そこでやはり目下体重を落とすべきだと相成った。



「そうかの?わしはクルーシャはそのままでもよいと思うがな。ぬいぐるみのように愛らしい」



 それがダメなのか?とおじい様。

 別に痩せなきゃ美人じゃない!ということを言うつもりはあまりない。

 私自身、前世界で太っていても可愛い人綺麗な人は見てきたし、それを魅力的に感じることもあった。



「見返すためには一目瞭然で分かる見た目が変わるのがよいかと」



 うんうん、と周りとメイドさんも頷く。男の人は単純な所もあるし、と共感できるらしい。


 確かにあの第3王子は単純そうだった。見た目で左右される軽い男の空気を感じたわ。


 だからまずは分かりやすく体型を変える。

 多分クルーシャの身長は180cm近くあるから、理想体重としては…どれくらいかな?

 確か、憧れていた海外のスーパーモデルさんは183センチに54キロだったかな?スリーサイズも見た時には目を疑ったけど上から81-59-84。お胸の大きさにウエストの細さ、ヒップラインの美しさに思わず見ていた雑誌を握り潰したわ。


 でも目標は高く!ハッキリさせなきゃダメ!

 体重計というものはこちらには無いそうなのでとりあえずリボンでウエストとか目指していくことにした。



「あと、出来れば作戦決行日、ざまぁする日はあちらに戻ります建国記念式典の際にしたいと思っております」



 クルーシャから聞いた所、夏季の大体3ヶ月程こちらで過ごし、お義兄様が舞台へと上がるこの式典に合わせて帰るのが通例らしい。


 約3ヶ月でなんとか出来るかは本当に私の努力次第かも知れないが、王族の方々や学校の関係者等も集まる大きな式典みたいなので作戦決行日としては最適だ。

 あとちょっとづつ変化する姿を見せるより、ビフォーアフターのように完全に変わってからの方がいいリアクションだと思うのよね。



「クルーシャ様、本日午後からはお買い物の予定でよろしいですね」

「えぇ、あと出来ればジェイの様子を見に行きたいわ」



 食べ終わった食器を片付けてもらいドレスに着替える。

 相変わらずなデザインに思わず乾いた笑いがこぼれる。このお屋敷にある服もお義兄様からかー。



「…やはり好みも変わってしまったのですね…。フェルト様からはお好きに買うようにと資金はお預かりしておりますのでお洋服も本日見に行きましょう?」



 王子の好みに合わせた服を着るのもお辛いでしょうと切なそうなドロシーちゃん。

 この人の体型無視したフリフリヒラヒラ可愛らしいデザインは王子の好みでしたか。

 でもこの悪趣味とも思える色のチョイスはお義兄様。うん、どっちもどっちね。



 -よし!私がルーシャにピッタリな素敵な洋服選ぶわね!

 -私なんかに似合う服があるとは思いませんが…是非お願いします。



 さて、お昼ご飯まで少し運動をと思ったがさすがにフリフリドレスで動き回るのはどうかと思うよね。

 さて、どうしようかしらね?



 -ではりぃ!りぃの世界のものがこちらでも作れないか考えてみませんか?!

 -ルーシャ!ナイスアイデア!石鹸とかシャンプーリンス、そうあとお風呂とか!ちょっと考えてみましょう。

 -では屋敷内を少し探索してみましょう?利用出来るものがあるかも知れません。



 お昼ご飯の用意に出ていったドロシーちゃんに言伝を頼み屋敷内を散歩することに決定。


 三階建てのこのお屋敷内を散策するのは骨が折れそうなので、今回は何かありそうな厨房やランドリーなど、クルーシャも行ったことのない所を中心に見て回ることにした。



 -さて、まずは1階に降りないとね。

 -あっ確か階段の昇り降りでも運動出来ましたよね。

 -そうなんだけどさすがに今のルーシャの体力じゃ無理だなー。



 素晴らしい事にクルーシャが夢の中で私が必死になってみていた美容関係の雑誌テレビの内容なんかを全て理解してくれているのだ。

 元々頭がいいこともあって、なんで痩せるのか、なんでこの食品がいいのか理由まで理解して私のサポートをしてくれる。

 正直私が忘れていることも覚えていてくれるので本当に助かっている。



 -石鹸作りはりぃが学校の宿題で提出していましたね。頑張ってるりぃ大変愛らしかったです!

 -あぁ!夏休みの自由課題で作ったことあったね!あのころは孤児院にいたからお金もなくて結構苦労したわー。



 監禁事件後私は孤児院に入った。保護者はいなくなってしまったが、事件の際助けてくれた警察官のおば様が支援してくれたおかげで結構辛い思いもしたがなんとかやってこれた。



 -孤児院のりぃは可愛らさの塊でしたよね!思い返してもうっとりしちゃいます…。



 これも自分で言うのはなんだけど、幼い頃から可愛いと評判ではあったけど、孤児院に入った小学高学年ぐらいから地元ではちょっとした美少女として有名になった。

 おかげで数回変な人に攫われそうになったけどさ。

 でもこの頃から応援してくれた警察官のおば様からの勧めもあって芸能界を目指し始めたんだよね。



 -さて!まずは厨房に到着ー!



 白いエプロンを着た人が何人も忙しそうに働いている。

 ここではおじい様、私。あと、従業員や寮に住んでいる人達の食事も全て賄っているんだって。

 大量の料理が次々に作られては各所に運ばれている。

 そんな中、邪魔にならないようどうやって中に入ろうか検討する。



「クルーシャ様?!こんな所に如何しましたか?!」



 こっそりしてようと思ったがすぐに見つかってしまった。まぁ入口付近にあった小さな棚の陰に隠れて様子を伺っていたから、恐らく身体はみ出していたんだろうな。



「すみません、邪魔にならないようしますので少し見学してもよろしいですか?」

「も、もちろん大丈夫ですが、楽しい所ではありませんよ」



 先程から指示を出しているおじさん、料理長さんから許可が下りたので、壁際にあった小さな木の椅子に腰掛けて邪魔にならないように配慮しながら様子を伺うことにした。



 -植物性の油がオリーブ油以外にもあるといいんだけどな。

 -植物性…カメリアとかですか?

 -そうそう、椿油!あれ髪にいいんだよね。ひまわりとかでもいいんだけどな。



 油を使う場所なんて厨房しかないと思ったけど、あまり油を使うシーンはないようだった。ちょっとガッカリだ。仕方がない、チラチラと視線も感じるし邪魔になる前にお暇しましょう。



「あ、あのクルーシャ様、良ければご意見頂きたいのですがよろしいでしょうか?」

「え?あっはい。わたしでお答えできることであれば…」



 立ち去ろうと決めた矢先声をかけられた。先程の料理長だ。



「クルーシャ様のお食事についてですが肉全般は控えるようにとの事でしたがどの程度でしょうか?全く使わない方がよろしいのでしょうか?」

「ああ、そうですね。赤身のお肉や豚肉、鶏肉も適度に使っていただいて大丈夫です。その際脂身を外していただければありがたいですね」



 タンパク質や、コラーゲン、ビタミンもお肉は含まれているし全く食べないのでは栄養が偏りすぎるからね。

 そのためお肉を焼いて出すだけではなく、蒸したり湯通ししたり、スープの出汁として使って欲しいと軽く説明をする。

 それをサッと取りだしたメモ帳に聞き漏らしのないよう書きとっている。

 うん、出来る人だね!そういえば以前お仕事でメモを取らずに何度も同じ質問を繰り返す人がいて、なんて効率の悪い人なんだと思ったこともあったな、なんて少し思い出した。



「はぁ…クルーシャ様のその知識には驚かされます…」

「あっ!?えぇ!たまたま本当に偶然なんですが読んだ本に記載がありましたので!!!」

「そうなのですか!?是非私もその本を読んで知識を深めたいのですがどのような本でしょうか?」



 そんなキラキラした眼差しで見ないでください。

 私のいた世界の本ですよーとは言えないし、どうしよう?



「…お見せしたいのは山々ですが王城で見かけた異国の本でしたので持ち出したりするのは難しいですね…」

「そうなんですか…。いえ、無理を言ってすみません。お話伺えただけで十分です。これから早速作ってきますね」



 ナイスクルーシャ!とっさの機転でなんとか誤魔化せたが、あまりあちらの世界の知識を出すのは後々大変なことになりそうだ。

 できる所は人に頼らず自分で何とかしよう。



「クルーシャ様ー!こちらにはおいででしたか」

「ドロシー、如何しましたか?」



 ドロシーに呼ばれ、とりあえず厨房を後にする。お昼には部屋に戻ろうと思っていたけどもうそんな時間になっちゃった?

 廊下に出たところで背伸びしたドロシーちゃんにそっと耳打ちをされる。



 リード様がクルーシャ様を尋ねていらっしゃっています、と。



 -リードって黒服の人よね?どうしよう?会わなきゃダメよね?

 -会いにいらっしゃっているなら逃げられませんね…でもちょうどお礼もしようと思っていたのでは?

 -あぁそうだった。すっかり忘れかけていたわ。



「報告ありがとう、ドロシー。彼は今どちらに?」

「応接の間にお通ししてあります。ただ現在フェルト様が不在にしておりますのでいかがいたしましょう?」

「大丈夫ですよ。私に会いにいらっしゃったんですよね?私が対応します」



 大丈夫ですか?と不安そうなドロシーちゃん。

 来客ぐらい問題ないんだけどな。話をきけばいいんだし、こちらもお礼言いたいし。



 -ねぇ、ルーシャ?ドロシーちゃん心配しすぎよねぇ?

 -…いえ、お恥ずかしながら今まで私は来客全て断っていたのでドロシーの心配も最もかと…。

 -へぇ…。



 クルーシャってばどんだけ引きこもっていたのさ。

 ちょっとだけクルーシャに呆れながらも、ドロシーちゃんに先導してもらい応接の間に足を運ぶことにした。




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