はじまり
はじめまして!
初投稿なので緊張ですが、誰か一人でも読んでいただけたら幸いです!
うーん、思ってたよりあっさり死んじゃったんだな。
独り言をボソリと呟いたつもりだったが声にはならなかった。
まぁそうか、声帯ないものね。ってか、この場合肉体すらないのか。
ぼんやりと薄白く明るい場所に漂っている。優しい光でいっぱいでなんだか落ち着く場所。
これからどうしたらいいかよくわかんないけど、誰かが教えてくれるのかな?
と、考える事は出来るんだと改めて思う。
死んだら全てが無くなる訳じゃなくて、絵本で読んだみたいに魂になって天に昇っていくのかな?それともお星様にでもなるのかしら?
上を見ようとするがどちらが上か下か、左右前後の感覚はない。
さてと、どうしよう。
結構落ち着いているけど享年は19歳と若い。念願の初映画出演が叶ったその日に交通事故に合った。
痛みを感じずに死んでしまったのは有難いのか、少しでも意識があれば多少身辺整理等出来たのではないかと無念なのかちょっとわからない。
けど、概ね満足の行く人生だった。あれだな、我が人生に一片の悔いなし。
…いや、正直ちょっと物足りないがこれはこれで運命だと納得する。
今まで苦労することも多い人生もあり、私自身で言うのもなんだが結構達観した考えを持っていた。
そのおかげでこんな状況でも落ち着いている。
ここにずっといるのは退屈だなーと感じている程度に。
漂うような感覚にも慣れ、これからどうするか教えて欲しいのだけどもと辺りをキョロキョロする。
…泣き声?
今までの聞こえなかった泣き声が聞こえた。実際には泣いている気配を感じた。
どこから?と再度付近を確認すると思ったより近くに泣いている存在に気づいた。先程までは何も無かったから突然現れたことになる。
不思議空間だ。
することも無いし、とふわりと漂いそちらに近づく。
この状況で声ってかけれるのかしら?
「どうかしたんですか?」
これは声が掛けれたというか意識が伝わった感じだな。
ふむ、声が出なくても意識の疎通はできるんだね。便利ー。
どうかしたかって聞いてはみたものの、そう言えば死んじゃうとここに来るみたいだし泣いていても当たり前なのかもしれないと思い当たるが返事を待ってみる。
「?!どなたですか?」
「驚かせてすみません、あなたより少し前にここにたどり着いたんですが声が聞こえたので思わず声をかけてしまいました」
「あぁ…そうだったんですね、驚いてしまいすみませ…うぅ…」
言葉の途中で泣き出してしまった。
声の感じから女の人かな?私と同じ結構若めかも。
悲しい別れだったのかな?
詮索するつもりは無いけど、とりあえず落ち着くまでそばにいよう。
あっでも…
「あの、もしおひとりの方がいいのであれば私はここから離れますが…」
1人で泣きたい人もいるよね。ちなみに私はあまり泣かないけど泣く時は1人っきりで真っ暗闇に閉じこもるタイプ。
でも彼女(仮)から頭を振り拒絶する感覚がしたので一緒にいることにする。
視覚聴覚とかを感じるっていうのにもだいぶ慣れたなー。
一緒にいることに決めたがやることも特にないので気晴らしになるかと少し自己紹介をすることにしよう。
「えっと、私は本宮李奈と言います。性別は女。享年は19歳でした」
「…19歳…お若いのですね…。私はクルーシャ・カルフェーネと申します。性別は同じ。年齢は17です」
あ、涙声ながら少し話してくれるみたい。良かった、これが泣き止むきっかけになってくれるといいな。と少し砕けた調子で言葉を続けることにした。
クルーシャさん、日本人ではないのね。
「ね、自分でもちょっと若すぎかな?とか思ったけど、自分の不注意で死んじゃったので仕方ないかなって割り切ってます」
「不注意…」
「そう、よくあるうっかり信号無視して交通事故」
「シンゴウ…コウツウジコ…?」
ん?単語がわからないのかな?確かに国によっては知らない可能性もあるのかな。
「そう、車っていう鉄の乗り物にすごい速度でぶつかって死んじゃったの」
「…チャリオットのようなものでしょうか?そうであれば…酷い…可哀想に…」
「ごめん、チャリオットが何かわかんないや。でも可哀想って感じてくれてありがとう」
「!?すみません!哀れんだ訳ではなく、貶したわけでもないのです…!」
「?そういう意図じゃないって言うのは分かりますよー。むしろ、突然死んじゃって誰ともお別れ出来なかったのであなたが私の死を思ってくれるだけでも嬉しい」
ニコリと分からないだろうけど微笑む。
本当に嬉しかった。ただ、ここで会っただけの存在の人に私のことを思ってもらえるだけで。
正直、最後のお別れがあったとしても悲しんでくれる人がいたか微妙なところだし。
「あなたは…少し変わった方ですね…」
「はは、そうかな?私よりもずっと泣いているあなたの方が変わっているというか、興味ある」
「あ…」
泣いていたのを思い出したのか少し空気が暗くなる。
「ねぇ、クルーシャさんさえ良ければ何があったか話してみない?人に話すと楽になるし」
「き、聞いて楽しい話ではありませんよ…?」
「いいよ。あなたが少しでも楽になってくれる方がいい」
どうも私はこの何も無い世界で出会えた彼女ともっと仲良くなりたいと思っていた。
なぜだろう?生きていた時にはあまり経験した事の無い思いだ。
多分、突然死んじゃってひとりぼっちになって、寂しいんだろうな、私。
今までもひとりぼっちだったけど寂しいなんて感じたことないじゃないというかセリフツッコミはそのまま飲み込んだ。
「わ、わたし…まだ死んでいないのです」
意を決した様子でゆっくり言葉が紡がれる。
そっかそっかー、死んでなかったんだね。…死んで…なかったの?!
てっきりここにいる=(イコール)死んだ人と思ってたよ!勘違い勘違いー。
「そうなんだ!良かったー。ここは死んだら来る場所だと思ってたからクルーシャさんも死んじゃったんだろうなって勝手に思ってた。ごめんね」
「あ、いえ、合ってます!器を失った魂が来る場所、そしてここから転生するまで休む場所です」
どいうこと?
今度こそ私の頭の上にクエッションマークが乱れ飛ぶ。
「ごめんね、私は頭の出来は良くなくてクルーシャさんが言ってることよく理解出来てない」
義務教育もほとんどほっぽり出して来たから人より頭の出来が悪いのは自覚ある。それだからか、クルーシャの言っている意味が理解できなかった。
「異世界の方は闇魔法等ございませんからこちらの存在を知らなくて当然だと思います」
「イセカイ…ヤミマホウ…?」
おや、これでは先程と逆な展開だ。
でもとんでもなくファンタジー用語が聞こえてきたが聞き間違えかしら?
キョトンとした空気を読んでくれたのかクルーシャが補足説明してくれる。
「はい、闇魔法は身体を離れ魂だけの存在できます。そのためわたしたちはこの死後の世界を訪れることが出来ます。そしてごく稀にあなたのように魂だけで意思疎通のできる方がいらっしゃいます。そういった方から話を聞き、わたしたちとは異なる世界がいくつもあると認識しております」
ぐぬぅ、話難しくない?
せっかくの説明ほとんど理解出来てないよ。
「まほうがあるの?」
「そうです」
思わず子供みたいに尋ねてしまったがクルーシャはバカにすることなく返事をしてくれた。
「えーっと、その魔法の力でこの場所まできたってこと?」
「…正確には違うかもしれません。闇魔法保持者は魂抜けが出来るのですが、今回は意図的にこちらに来たのではなく…」
死にそうになるほどショックなことがあり魂が抜け出てしまった。
そう聞こえないほどの小さな声で呟いた。
何があったんだろう?気になるが聞いていいか分からない。
「お話いたします。…実は婚約者に暴言とともに婚約を破棄されました。お相手は私のお友達でした」
簡潔に自分の気持ちが言葉に乗らないように話してくれたが、声は震えていた。
不安定なクルーシャとの距離を詰める。手とか握れたらぎゅっとしてあげるのに…。
「そんなにすきだったの?」
「…恋愛感情があったかわかりません。ただ、私の容姿を罵しり、幼い頃から嫌いだったと言われ…悲しくなりました」
よく聞くと幼少時に相手からの希望で婚約を交わしたこと。
同じ学校に入ってから態度が急変し避けられるようになったこと。
それに伴い周りの人からも避けられていたこと。
新しい婚約者は信じていた友人だったこと。
その友人も家の権力で従っていただけで、不細工な友人がいることを汚点として思っていたことを話された。
「確かに私の容姿は自分でも分かっているほど酷いものだと思います。彼らの言うことはもっとも…。ショックでしたが少しづつ受け止めてきています」
「だめよ」
無理に笑おうとする気配を感じて思わず声が出た。
クルーシャが突然の否定に驚いているようだ。
「暴言は吐いた方が悪いの。クルーシャさんの容姿がどうか私は分からない。でもそのまま受け入れてしまってはその人たちが言っていることが正しくなる、人を傷つけた人が正義になる」
それはだめだ。
1度でも認めてしまえばそれ以降、何も言えなくなる。強くなれない、弱い人間のままになってしまう。
「で、でも、本当に私の姿は醜く…真実なのです」
「じゃあ綺麗になって見返そう!見た目なんてちょっと努力すれば綺麗になるよ?」
「!?わ!わたしは!わたしは…そんなに強くないのです…傷つけられて魂が逃げ出すほど弱い人間なのです…!」
「…じゃあ元に戻ってこれからも傷つけられて生きていくの…?」
ぐっと息を飲む音がする。
私の言っていることは無責任だと思う。頑張れ、見返せ、なんとかなる!という言葉は確かに弱い人には辛い言葉かもしれない。
「私は…最後かもしれない出会った人の今後が辛いものなんて…いやだな」
「……」
「そのまま相手の負の感情を受け入れないで。クルーシャは優しいいい子、そんな子が今後虐げられて行くなんて私は絶対に嫌」
私のわがままかもしれない。
私は死んで悲しんでくれたクルーシャのことを何故か凄く好きになっていて、そんな彼女のことが心配で仕方ないんだ。
でもなんでこんなにクルーシャのことが心配なのだろう。
生前、外面だけで付き合ってきたせいで友達なんて居なかった。
でも数刻だけ、それでも魂っていう外面なんて存在しないこの場所で出会ったからなのかな?
私に他人をここまで思う心があったことに自分でも少し驚いた。
でもこの発見はちょっと嬉しかった。
「…1人は無理です…」
「…え?」
クルーシャは私がちょっと自分の世界に入っていた間に何故かプルプル震えていた。
「1人でなんか無理ですー!一緒に!一緒に来てください!一緒に見返してくださいー!!!!本当はこのまま死んじゃっていいかな?とか思ってるんですー!!!」
プルプルしながら豪快に泣き、がしっと私を拘束する。
肉体のない世界で掴まれるって、魂が掴まれたってこと?こわっ!
「な、なにするの!?」
「だって見返し方なんてわからないんですー!だから一緒に!ね!?お願いしますー!!!むしろ私が代わりに転生しておくのであとお願いしますー!!!」
泣きながら叫ぶクルーシャ。
あぁヤケになると泣きながらすごい力を発揮する人っているよねー…。
大人しい子だって思ってたら突然泣き出して、全てを放棄して家に帰ったり。びっくりするよね、あれ。
って、ちょっと落ち着いている場合じゃない!
「後をお願いしないで!そもそも一緒って?!そんなこと出来るの?!」
「わかんないですー!だって私だってこの場所で話したりするの初めてだし!連れて行けるかわかんないです!でもなんだか行けそうなので連れて帰りますー!!!」
先程まではのふわふわと漂っていた感覚から一気に何かに掴まれどこかに引きずり込まれる感覚に変わる。
「ちょ?!連れていかないで!?私は転生待ち?状態じゃないの?!」
「ごめんなさいー!本当に1人であちらに戻るのなんて無理なんです!耐えれない!死んじゃう!」
「死んじゃうって!むしろ死んだ人を攫ってどこに連れていくの?!」
泣き叫びながら自己主張するクルーシャ。なんて言う強引な子なの?!
抵抗らしい抵抗は一切できずクルーシャに連れていかれる。
ぼんやりと光っていた世界が遠く離れていく。
引きづられ狭い通路のような場所を通り過ぎ光の届いていない闇の世界。そこにぽつんとある眩い光の中に飛び込まされた。
そこで一旦意識は途絶えた。
私本宮李奈(享年19)は死んで、転生待ちの世界で泣き虫で強引な彼女と出会い、攫われて、
「…おい…おい!おい!!?聞いているのか!クルーシャ?!」
「…え…?」
私が彼女として転生させられていました。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字等ございましたら恐れ入りますがご一報お願いします!