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プロローグ

 ……目が覚めると、いつもの小汚い部屋が俺の視界に入った。どうやらネトゲをしたまま寝てしまったようだ。パソコンの電源がまだ点いている。これは結構痛い支出になりそうだ……


 部屋を出ても、当然誰も居ない。



 ……何故こうなったのか説明するために、少し昔話をしよう。


 歯車が狂い始めたのは俺が高校生だった頃。当時の俺は、仕事で忙しいのにも(かか)わらず、仕事は仕事で上手くやる一方で、俺や妹の為にあれこれと尽くしてくれていた親父に対して、特別に好意を抱いていた。


 親父にはいつも、


「今はとにかく頑張って勉強しろよ。努力は必ず報われるからなー」


と言われていたので、クラスの誰にも負けないくらい勉強し、毎回総合成績で学年トップ5を取れるほどには頑張っていた。

 俺がここまで熱心に勉強に取り組んだのは、勿論、親父のことが好きだったためでもあったが、それ以上に、親父自身、幼少期から抜かりなく努力を重ねた結果、その頃にはそれなりに名の知れた会社の役員にまで登り詰めていたという現実が有ったからでもあった。


 ……でも、その後、親父の会社は()()く倒産した。しかも、何故かその責任は親父にあるとされ、結果として、一人で抱えるにはあまりに多額の借金を父が背負わされることになった。


「何で、よりにもよって父さんが……父さんは何も悪くないし、それに、誰よりも頑張ってた筈なのに……」


 その後、債務整理なんかをして、どうにか借金の問題は大きくならずに済んだみたいだけど、親父自身、色々と責任を感じてしまっていたらしく、それ以来次第に俺と話すことも無くなっていってしまった。そして、終いには、親父は突然首を吊ってしまった。

 親父の足元に置いてあった遺書には、家族宛にこう書かれていた。


「俺みたいにはなるなよ」


と。

 それから「家族」は崩壊した。


 その後、俺は段々自分の部屋に引き篭るようになり、いつしか一日中パソコンをいじり倒すような日々を送るようになった。また、お袋は親父の自殺や俺の引き篭りのせいで精神が参ってしまったようで、それが余りにも酷かったために、妹の判断で彼女を精神病院に通わせることにした。結果として、俺と妹の二人で暮らすことになった。


 本当は行こうと思っていた大学の受験もせずにネトゲに異常にハマり、一日の大半をパソコンに費やしていた俺に腹を据えかねた妹は、いつの間にか他所(よそ)の男と結婚し、家を離れていってしまった。


 ……そして、もうなんか色々とどうでも良くなってきてしまっていた俺は、当然一人暮らしなど真面(まとも)に出来る筈も無く、部屋は滅茶苦茶なまま片付けず、働かず、親父の貯めていたなけなしの金を切り崩して生活を続けていった。

 


 ……そうした経緯で今に至る。


 「努力すれば必ず報われる」

 

 聞こえは良いが、そんなに上手くは行かないらしい。何せ過去の出来事がそれを証明していた。

 でも、それでも俺は、心の何処かで、何処かで間違えてなければ、例えほんの少しであったとしても、何かしらの形で報われていたんじゃないかと思うことが偶に有るのだ。


「人生、どうにかやり直せたらな……」


 いやいや、そんな事は不可能だ。もう俺の人生は誰の目から見ても明らかに()()()いる。神に見放されたのだ。俺は、もうこんな事を考えるのはやめだと、取り敢えず朝飯を食うことにした。


 ……適当にご飯を作って食べようと冷蔵庫を開けた途端、目の前が真っ暗になった。



 …………すか?


 ……?何かの声?が聞こえてくるが、よく聞き取れない。


(まこと)……私の声が聞こえますか?」


 俺は(ようや)く目を覚ました。何やら真っ白な空間に居るようだ。そして、目の前に居たのは、本物の「女神」だった。


 ……どうやら神は俺を見放してはいなかったらしい。


「えっと……俺は、死んだのでしょうか?」

「いえ、冷蔵庫を開けた時に栄養失調で倒れたようですね」


 どうやら、一人暮らしによる極度の偏食が続いたことにより倒れ、病院に運ばれたらしい。


「……では、何故俺には女神様が見えてるんでしょうか?ひょっとして、幻覚?」


 やはり、現実は甘くないのかもしれない。もし今見えている神が幻覚によるものであるならば、俺は、神にさえ(すが)ろうとしている廃人ということになってしまうのだろうか。


「いえ、幻覚ではありませんよ。私は、(しば)しの間、貴方を天から見ていたのですが、余りにも貴方の生き様が不憫に感じられて仕方なかったので、どうにかして貴方を救ってあげたいと思っていたのですよ」


 ……どうやら神は俺を見放してはいなかったらしい。(二回目)


「『救う』と言っても……具体的には何をしに来たのですか?」

「いいですか?このまま行くと、貴方は何一つとして努力の報われないまま生涯を終えかねません。そこで、私から一つ提案があるのです」

「……と、言いますと?」

「貴方は、人生をやり直したいと思っていましたよね?」

「まぁ……出来るのであれば……」

「私の力をもってすれば、貴方を所謂(いわゆる)『異世界』に『転移』させることなど容易いのです。折角の貴方の人一倍努力出来る『才能』を、第二の人生で活かしてはみませんか?」


 ……どうやら神は俺を見放してはいなかったらし(殴


 ……兎に角、女神様が言うには、俺の人生が見ていてあまりに可哀想で、何とかして救ってやりたいので、もし俺が望むのなら、「異世界」に「転移」させてあげたいということらしい。


「一言に『異世界』と言っても、そこはどんな世界なんですか?」

「それを言ってしまったらつまらないと思いませんか?大丈夫ですよ。きっと貴方なら楽しめるでしょうから」


 他にも、此方の言語が通じるのか、所謂「魔物」のように、此方の世界には存在しない生物は存在するのかなど、聞きたい事は山ほどあったが、それ以上に、異世界へ転移できることへのワクワクが止まらず、


「是非異世界へ転移させて下さい!」


と、大声で女神の提案に応えた。

 俺はやる気に満ち溢れていた。不可思議な空間に居るせいだろうか、暫く出していなかったはずの大声が、いとも簡単に出た事に少し驚いた。


「分かりました。最後に一つ、重要なことがあります。それは、一度異世界に転移すると、()()()()元の世界に戻れなくなります。それでも良いですか?」

「『()()()()』と言いますと、つまりはどういうことなのでしょうか?」

「少なくとも、私自身に貴方を元の世界に戻せるほどの力は無いのです。恐らく他の神であれば可能な場合もあるのでしょうが、大方、戻って来れないという認識で大丈夫です」


 ……つまり、一度転移すると戻れる可能性は限りなく低いということか。「他の神であれば〜」云々言っていたが、そもそも、転移先の世界でもこんな感じで「神」に会えるとは思えない。よって、基本的には帰れないと思っておくべきだろう。


 (しばら)く迷ったが、現世に留まっていても、これから大きく人生が好転する可能性が一切無いという悲しい結論に至ったので、


「大丈夫です」


 と、少し控えめに肯定した。


「それでは、良い第二の人生(セカンド・ライフ)を!」

「え、いきなり!?心の準備とk」







 ………………転移できたようだ。


「……ここは、どこだ?」


 どうやら、辺りを森に囲まれた平地に居るらしい。

 ……近くに人気(ひとけ)はない。困ったものだと辺りを見回すと、もう使われていなさそうな小屋を発見した。


「取り敢えずあそこに行ってみるか……」


 ……ここからが地獄の始まりだった。


「痛ってぇ!」


 そう、病院のベッドに横たわっていたところからそのまま転移したせいで、靴を履いていなかったのだ。そしてここは整備された道ではないようなので、足が痛むのは必然的だった。


「不親切な女神様だな……服装も病院で着てた物のままだし……」


 ここから小屋まで恐らく百メートルくらいは有るだろう。このままでは痛すぎて死んでしまうと思ったので、近くに誰も居ない事を再確認したところで、半ば匍匐前進(ほふくぜんしん)に近いような形で小屋へと向かった。

 こんな姿を誰かに見られでもしたら黒歴史入り確定だが、痛みに耐えるためだ、仕方ない。



 ……そして、何とか小屋の前まで来る事が出来た。

 その後、小屋に入るために立ち上がろうとした時のことだった。


「……何してるの?」

「えっ!?……あっ、こんにちは……」



 ……これが彼女との最初の出会いとなった。







私が投稿する初の連載小説になります。今後の参考になるので、楽しめたという場合は評価をお願いします。

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