【待てば甘露の日和あり】
声劇タイトルは
【まてばかんろのひよりあり】と読みます。
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♂2:♀2:不問1
気怠げな賢者の弟子 ♂ セリフ数:7
生意気な賢者の孫 ♂ セリフ数:14
男勝りな冒険者 ♀ セリフ数:7
猫人族の冒険者 ♀ セリフ数:6
ナレーション 不問 セリフ数:11
[あらすじ]《8分程度》
ある年、偉大なる賢者が一人死んだ。その賢者の為人を知るのはたった一人の弟子のみ。賢者の孫らしい少年はその弟子に逢いに行く事にした―――。
【生意気な賢者の孫】
だーかーらーっ! その賢者の弟子に会わせろって言ってんだろ! ……ああ!? べ、別に知り合いとかじゃねえけどさぁ!
【ナレーション】
冒険者ギルドの受付前。薄汚いローブを身に纏った少年は、受付嬢に吠えていた。内容を聞くに、どうやらつい最近死んだ賢者が可愛がっていた弟子に会いたいらしい。
受付嬢は吠える少年に困り果てていたが、泳がせた目線の先に見知った冒険者を見つけ、助けを求めた。
【生意気な賢者の孫】
なぁ! 聞いてんのかよ、ねえちゃん!
お・れ・は! 賢者の弟子に会いてえんだ……ぐぇえっ!
【男勝りな冒険者】
ピーチクパーチクと煩ぇのがいるな。おい、小僧。冒険者でもないと見た。アタシらの天使に何してんだ?
【猫人族の冒険者】
なんかぁ〜賢者様のお弟子様に会いたいらしいにゃ〜?
【生意気な賢者の孫】
お、おい! 何すんだオバサン! 離せよ!
【ナレーション】
目の合わない受付嬢に焦れた少年は、更に吠えようとした所で、誰かにグッと持ち上げられた。
少年のローブをまるで汚いものを持つかのように摘み上げたのは、Sランクの冒険者と名高い男勝りな女だった。
【猫人族の冒険者】
そのお弟子様に会いたいのはよぉぉぉぉく分かったからぁ、ちょぉぉっと静かにしようにゃ〜?
【ナレーション】
その少し後ろに居るのは、彼女とパーティーを組んでいた猫人族の少女だった。ちょこんと生えた耳と尻尾はとても愛らしい。
言わずもがな、彼女もSランクの冒険者である。
【男勝りな冒険者】
だぁれが、オバサンだ小僧! 喧しく喚いてないで、とっととお家に帰んな! ここは子供が来ていい場所じゃないんだよ。
【生意気な賢者の孫】
だから〜! 賢者の弟子に会うまで帰らねえって…わっ、うぉっ! うぎぃ!
【猫人族の冒険者】
うにゃ〜、顔面から豪快ダイブ〜
【ナレーション】
ポイッと男勝りな冒険者に放られた少年は、べちょんっと床に落ちた。顔から落ちた少年は痛みに悶えながらも、ギッと二人を睨んだ。
【生意気な賢者の孫】
何だよ! アンタらに関係ないだろ!?
【男勝りな冒険者】
ここが道端だったなら、そのセリフはご最もさ。ただここは冒険者ギルドだ。
そんでアンタは、アタシらの天使である受付の嬢ちゃんを困らせてた。それでも関係ないって?
【生意気な賢者の孫】
うるせぇな! 冒険者ギルドだろうが、部外者は部外者だろ!? 俺は賢者の弟子にだな……!
【猫人族の冒険者】
ずっと気になってたんだけど〜、どぉして賢者様のお弟子様に会いたいにゃ?
【ナレーション】
そう言って少年の傍にしゃがみ込んだ猫人族の冒険者。少年は少し迷ってから、ボソボソとした声で答えた。
【生意気な賢者の孫】
……俺、賢者の孫なんだ。
【猫人族の冒険者】
え……!?
【男勝りな冒険者】
……小僧。嘘まで吐くとは何事か。
【生意気な賢者の孫】
う、うう嘘じゃねぇよ!
……ただ、一回会いてえだけなんだ。会って、爺ちゃんがどんな人だったか聞きたいだけ、なんだけど…。
【ナレーション】
少年の言葉に、猫人族の冒険者と男勝りな冒険者は、顔を見合わせた。そんな現場にある一人の人物が近付く。周りの冒険者や少年の対応をしていた受付嬢は、その正体に気付き、驚きに目を瞠る。
【気怠げな賢者の弟子】
先生の孫? 確かに目元は似てる…けど、タレ目の奴なんて死ぬほどいるしな。
【生意気な賢者の孫】
な、何だよお前!!
【男勝りな冒険者】
おや、驚いた。暫くこっちには戻ってこないんじゃなかったかい。
【気怠げな賢者の弟子】
予定が急に変わっただけ。
それで? 先生の孫だって証拠でもあんのか。
【ナレーション】
少年は、突然自分に話しかけて来たその気怠げな青年が《賢者の弟子》なのだとやっとこさ理解した。
受付嬢に吠えている時には気にしてなかった周りの目が、一気にこちらに向いたような気がして、少年は少し萎縮する。
【生意気な賢者の孫】
これ……死んだ母ちゃんに、持ってろって…
【気怠げな賢者の弟子】
……。……ああ、先生の魔力が込められてる。それに古代アーギの文字も…。
何で俺に会いたかったんだ。
【ナレーション】
少年が差し出した青い宝石の付いたブレスレットに触れた青年は、そこに流れる魔力を読み取り、彼が本当に自分の師の孫なのだと理解したようだった。
【生意気な賢者の孫】
し、信じてくれるのか?
【気怠げな賢者の弟子】
あの人はこういう手の凝ったモンは滅多に作らなかったし、作ったとしてもそれは俺や自分の子供にやるだけだった。
血ってのは侮れないからな。ブレスレットを着けれてるって事は、血縁者って事だ。
そんで? 何で俺に会いたかったんだ?
【生意気な賢者の孫】
……。俺、爺ちゃんの事何も知らないし…喋った事もあんまし無いし…。でも…爺ちゃんがどんな人か知りたかったんだ。
《賢者》と呼ばれた…、俺の爺ちゃんの事を。なあ、教えてくれよ…! アンタ、賢者の弟子なんだろ!?
【ナレーション】
少年は立ち上がって青年の前へ立った。
彼の眼差しを受けた青年は、溜息を吐いてから首を振った。
【生意気な賢者の孫】
え…………。
【気怠げな賢者の弟子】
賢者を知るなら賢者の道を志すべし。……つーのがまぁ、俺の師の教えでね。
15になったらまた会いに来てくれ。
それまでは魔法の練習でもしてろ、小僧っ子。
【生意気な賢者の孫】
な、何だよ……! 今の流れって絶対教えてくれる流れだったじゃんよ……!
…………15…。……15だな!? 言った事は守れよな、賢者の弟子!!
【ナレーション】
そう言い残して走り去っていった少年を見送った賢者の弟子である青年は、受付嬢に向き直って金貨を一つ受付へ置いた。
何の金だと慌てる受付嬢へ、青年は静かに言う。
【気怠げな賢者の弟子】
迷惑料だ。死んでも尚、あの人が俺にしがみついてくるとは思わなかったけど。
【男勝りな冒険者】
てっきりアタシは、とっとと追っ払っちまうのかと思ったけどね。
【猫人族の冒険者】
そうそう〜、あたしも思ったぁ。
賢者様に似てきたんじゃにゃぁい?
【気怠げな賢者の弟子】
冗談でも止せ。
……あんな、約束を死んで違えるような人に似たくなんてねぇよ。
【ナレーション】
そう最後に言った青年はじゃあな、と面倒臭そうに手を振って、冒険者ギルドを後にしたのだった。
STORY END.