【カラスになれなかった小鳥】
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♂3:♀2:不問0
うるさい小鳥 ♂ セリフ数:28
怠惰な猫 ♀ セリフ数:17
年老いた烏 ♂ セリフ数:15
あっちゃん ♀ セリフ数:26
こゆきくん ♂ セリフ数:20
[あらすじ]《10分半程度》
Q,何で烏になりたいの?
A,カラスって、かっちょいいから!
【うるさい小鳥】
ねこ! ねこ! ねこねこねこねこ!! タイヘンだ! タイヘンだよぅ!
【怠惰な猫】
あー…? 何だい、うっさいねぇ。
【うるさい小鳥】
ボク、あと『いっしゅうかん』でおとなになっちゃう!!
【怠惰な猫】
……? 目出度い事じゃないか。
【うるさい小鳥】
ちっがう! このまんまじゃだめなの! ボクにはあと『いっしゅうかん』でカラスになれる『びじょん』がうかばないよ!
【怠惰な猫】
あ〜…そういやそんな事言ってたっけね。まだなるつもりかい。
【うるさい小鳥】
まだもなにも、ずっと『カラス』になりたいよ! はれでも、あめでも、ゆきでも、ずっと!
【こゆきくん】
こら、ぴーすけ。うるさいぞ。
【うるさい小鳥】
あ、こゆきくんだ! おはよう!
【こゆきくん】
にゃんごろー、お前。ぴーすけ食うなよ。
【怠惰な猫】
こんなの食ったって腹の足しにもなりゃしないよッ
【うるさい小鳥】
こゆきくん! こゆきくん! きょうははやおきだねー!
【こゆきくん】
さて、飯の準備せんと。
【うるさい小鳥】
ゴハン!? うれしい! きょうはなにかな!?
【怠惰な猫】
やっかましいね。あと『一週間』で大人になる奴とは到底思えんな。
【うるさい小鳥】
あ! そうだった! あと『いっしゅうかん』でおとなはこまるんだった!
ねえ、ねこ。ボクがおとなは“ちょっとまって”したら、あと『いっしゅうかん』のびないかなー?
【怠惰な猫】
『一週間』が『二週間』になったところで、お前の青い羽は黒には染まらないし、アタシが丸呑みに出来そうな体も、デカくはならないんだよ。
【年老いた烏】
何だ、楽しそうだな。
【うるさい小鳥】
あっ! じっちゃ! おはよう!
【年老いた烏】
はい、おはよう。今日も元気だな、小鳥。
【うるさい小鳥】
げんきだよ! あ、でもね。じっちゃ。ボクね、あと『いっしゅうかん』でことりじゃなくなるの。
【年老いた烏】
ほう、目出度い事だな。お祝いは何がいい?
【うるさい小鳥】
んもう! ねことおなじこといってる! ちがうの! ボク、じっちゃとおなじ『カラス』になりたいの!
【年老いた烏】
おや、生まれたばかりの頃にもそんな事言っていたな。懐かしい。
【怠惰な猫】
じーさん。5ヶ月前はそんな昔じゃないよ。
【年老いた烏】
んん、そうか。駄目だなぁ、年を取ると昨日のご飯もまるで思い出せやしない。
【うるさい小鳥】
あ、そうだ! もうね、こゆきくんおきてるから、あとちょっとでゴハンだよ!
【年老いた烏】
そりゃ楽しみだな。
【こゆきくん】
お前ら、飯だぞー。お、クロ起きてんじゃん。
【年老いた烏】
虎雪、おはよう。
【うるさい小鳥】
わーい! ゴハンだ、ゴハンだーっ! もぐもぐもぐ、うん! きょうもおいしい!
【怠惰な猫】
鳥ってのは貧相な舌してんだね。そんな乾いた野菜なんか、食っても美味くないだろ。
【うるさい小鳥】
おいしいよ! ねこもだまされたとおもって、ひとくちどーぞ?
【怠惰な猫】
要らないよッ! 逆に具合が悪くなっちまう!
【こゆきくん】
お前もそろそろ巣立ちだな、ぴーすけ。
【うるさい小鳥】
そうだね、こゆきくん! 『おとな』って、しろいかごをとびだして、おそらをじゆうにとべるんでしょ! たのしみだよ!
【こゆきくん】
お前、そんなにピーピー鳴いてっと、カラスにでも食われちまうぞ。
【うるさい小鳥】
はっ! そうだ! わすれるところだった! こゆきくん、ボクね、あと『いっしゅうかん』でカラスになれるかな!?
【こゆきくん】
はいはい、飯はこれっきりだ。これ以上あげるとデブ鳥になるからな。
(二匹の様子を窺って)
クロもにゃんごろーも・・・、食べてるな。よし、自分の飯作ろ。
【うるさい小鳥】
あ! こゆきくんいっちゃった〜…。
ねね、じっちゃ! じっちゃはどうやってカラスになったの?
【年老いた烏】
んん? 爺ちゃんは昔からカラスだったさ。それこそ生まれた時からな。
【うるさい小鳥】
ええっ!? それすっごいね! うまれたときからカラスになれたの!? じゃあボクは!? ボクはいつになったら、カラスになれる!?
【あっちゃん】
その願いは来世まで御預けだな、小鳥。
【うるさい小鳥】
(嬉しそうに)
あああ!! あっちゃん!!
【怠惰な猫】
おや、何だい。随分久し振りじゃないか。
【あっちゃん】
やあやあ、猫。相変わらず不貞腐れた態度だね。こゆきくんに迷惑掛けてないか?
【年老いた烏】
朱子。爺が死に絶えるまでに会えないかと思ったぞ。
【あっちゃん】
おう、烏。その分じゃあ、まだまだこっちには来ないだろうな。
【うるさい小鳥】
あっちゃん! あっちゃん! あっちゃんだー!
なんであいにきてくれなかったの!? ボク、あと『いっしゅうかん』でおとなになっちゃうんだよ!?
【あっちゃん】
小鳥が『あと一週間で大人になる』から会いに来たんだろ。地獄に申請出すの大変だったんだぞ。
【怠惰な猫】
よくもまあ、そんな嘘っぱちが口から出るもんだね。そろそろお迎えなんだろう? 良かったじゃないの、小鳥と一緒にお祝いだなこりゃ。
【あっちゃん】
心にもない事言うなよ、猫。饒舌に寂しさが乗ってるぞ。
【年老いた烏】
そう意地悪を言ってやるな、朱子。久し振りに顔を合わせたっていうのに、口喧嘩なんて勿体無い。
【あっちゃん】
久し振りに顔を合わせたから喧嘩するってもんだぞ、烏。
それよか、もう飯か。今日はこゆきくん早起きだったんだな。
【うるさい小鳥】
あっちゃん、あっちゃん! ボク、どうしたらカラスになれる? 『おとな』んなっちゃったら、カラスなれない?
【あっちゃん】
んー・・、お馬鹿で五月蝿い小鳥は、大人になってもカラスにはなれないぞ。小鳥はカラスじゃないからな。
【うるさい小鳥】
そこをなんとか!
【あっちゃん】
ならないのが世の理だ、小鳥。ワタシに足が無いように、猫が動けないように、烏が年老いてしまったように。
そうなるべくしてなった者達には、奇跡は何一つ起きない。自然の過程で現状が少し変化する程度だ。
だから、小鳥のお前がカラスにはなれないんだよ。
【うるさい小鳥】
・・・うぅ、ひっく。
【怠惰な猫】
あーあ、泣ーかせた。
【年老いた烏】
大人げないぞ、朱子。少しくらいは希望を見せてやりなさい。
【あっちゃん】
えっ、待って。これワタシが悪いのか!? 二匹だって小鳥の夢が叶わない事ぐらい知ってたし、遠回しに伝えてたろ!?
【怠惰な猫】
この子はアンタの言う事しかまともに聞いてないからね。アタシらが何か言ったところで、何にも響かないのさ。
【年老いた烏】
それにしても、朱子がそんな風に真っ向から否定するなんて珍しいな。拾った責任というものか?
【あっちゃん】
(少し遠い目をして)
まあ・・・、世知辛さは子供の内から知っておかないと。それに、
【こゆきくん】
悪い、にゃんごろー! 脚の包帯替えるの忘れ―――、・・・あ。
【あっちゃん】
おや、今日は勢揃いだな。
【うるさい小鳥】
(泣きながら)
あっ・・・こゆきくんだぁ。
【こゆきくん】
おまっ、お、お、お前っ!!
【あっちゃん】
皆の衆、耳を塞げ。コイツ今から叫ぶぞ。
【こゆきくん】
お前、成仏したんじゃねぇのかよっっ!!!!!!
【あっちゃん】
ほらな。
って、成仏? 何の話だ? そんな感動的な別れをした覚えは無いんだが。
【こゆきくん】
…お前普段からわざとらしい喋り方すっから、本気なのかネタなのか分かんねー時あるんだよ。
【あっちゃん】
失礼だな、ワタシはいつだって本気だぞ。
【こゆきくん】
そういうトコだよ。
【うるさい小鳥】
(泣きながら)
あっちゃんとこゆきくん、ケンカ?
【怠惰な猫】
痴話喧嘩は余所でやっとくれ。甘すぎて毛玉を吐きそうだよ、う゛ぇ。
【年老いた烏】
甘い要素は一欠片も感じなかったぞ。
虎雪は猫の包帯替えか。そう言えば飯の後にやっていかなかったな。
【あっちゃん】
小鳥、喧嘩ではないぞ。
猫、甘くなくても毛玉は吐くだろ。
烏、こゆきくんの忘れん坊は今に始まった話じゃないぞ。
【こゆきくん】
お前…、それまだ出来んのか。
【あっちゃん】
ん? それとは?
【こゆきくん】
『動物の言ってる事が分かる』ってやつ。
【あっちゃん】
あはは、まあな。
それよか、こゆきくんも相変わらず『幽霊が見える』ようで安心したよ。
【こゆきくん】
安心していいのか分かんねえけどな。
ほら、にゃんごろー。脚上げろ。
【うるさい小鳥】
ねえねえ、こゆきくん…。
ボク、カラスにはなれないんだって…。
【こゆきくん】
・・・あ? 何かぴーすけ、静かだな?
【あっちゃん】
あー・・・、小鳥はカラスになれなくて落ち込んでるんだよ。ほら、あと一週間で巣立つらしいから、その前にカラスになっときたかったんだと。
【こゆきくん】
あ? カラス? つーか、何だその三歳児みたいな思考。話の全部がイコールで繋げねぇぞ。
というか、最近特に五月蝿かったのそういう事かよ。何だ、カラスになりてえって。アホかよ。
【あっちゃん】
まあ、ワタシも最初聞いた時は耳を疑ったよ。
若い烏に襲われて巣から落ち、偶然通り掛かったワタシに拾われたから助かったものの、そのままだったら死んでいたというのに。
まさか此処に来る原因の、烏になりたいとは。
【怠惰な猫】
襲われた時の事を覚えていないんだから、しゃーないだろうけどね。あの子にとってのカラスは、この老耄だから。
【年老いた烏】
こんな爺を見て、なりたいとなるのも些か疑問だがな。もうこの羽では飛びも出来ないというのに。
【あっちゃん】
ま、無理なもんは無理って諦めさせたから良しとしよう。ほら、小鳥。もう泣き止め。あと一週間で大人になるんだろう? それだけでも目出度いからさ。
【うるさい小鳥】
・・・ひっく、・・・うん・・・。
【怠惰な猫】
こりゃ暫く立ち直らないね。
落ち込んだまま大人になっちまうんじゃないかい?
【あっちゃん】
あらら、あの五月蝿かったのが嘘みたいだな。
【こゆきくん】
・・・次はいつ来るんだよ。
【あっちゃん】
ん? さあ? 次はいつ地獄の申請が通るのか分からないからな。
【こゆきくん】
・・・ぴーすけの巣立ち、厳密にはあと一週間とちょっとだからさ。次の水曜日くらいか…。そん時には来いよ、絶対に。
【あっちゃん】
(微笑んで)
………善処するよ。
【こゆきくん】
・・・・。
さてと、俺もそろそろ大学行かんとな。
じゃあ、また夜にな。三匹とも。
・・・じゃーな、姉さん。
【あっちゃん】
うん、じゃあな。こゆきくん。
【怠惰な猫】
・・・難儀な姉弟だよ、全く。
【年老いた烏】
それが二人の良い所でもあるんだけどなぁ。
【うるさい小鳥】
んん? ふたりはなかよしでいいなーってこと?
【あっちゃん】
あはは、……そういう事だよ。
(間)
【あっちゃんN】
と、言う訳で。
ワタシが結局、小鳥の巣立ちに間に合ったかどうかは・・・君達の考察とやらに任せようかな。
全く、天国の申請に時間が掛かるのがいけないよな・・・あれ、地獄だっけ。あー・・・あはは、忘れてくれ。
昔っから、こゆきくんには苦労掛けてばっかりで、駄目なお姉ちゃんだよなぁ。
でも、足が無くなってから初めて目が合った時は…ふふ、嬉しかったなぁ。
私が拾ってきた動物達の世話、ちょっと忘れっぽいけど、上手にやってくれてるみたいで安心だし。
猫の言う通り、そろそろお迎えが来てもいいかも。なんて。
まあ、それも。なるようにしかならないよな。
それじゃあ、これを聞いてる君達も。
頑張り過ぎないように気を付けて、生きていってくれよ。ワタシみたいにならないようにな!
STORY END.




