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五人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
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16/16

【カラスになれなかった小鳥】

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※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂3:♀2:不問0


 うるさい小鳥 ♂ セリフ数:28


 怠惰たいだな猫 ♀ セリフ数:17


 年老いたカラス ♂ セリフ数:15


 あっちゃん ♀ セリフ数:26


 こゆきくん ♂ セリフ数:20


[あらすじ]《10分半程度》

 Q,何でカラスになりたいの?

 A,カラスって、かっちょいいから!

















【うるさい小鳥】

 ねこ! ねこ! ねこねこねこねこ!! タイヘンだ! タイヘンだよぅ!


【怠惰な猫】

 あー…? 何だい、うっさいねぇ。


【うるさい小鳥】

 ボク、あと『いっしゅうかん』でおとなになっちゃう!!


【怠惰な猫】

 ……? 目出度めでたい事じゃないか。


【うるさい小鳥】

 ちっがう! このまんまじゃだめなの! ボクにはあと『いっしゅうかん』でカラスになれる『びじょん』がうかばないよ!


【怠惰な猫】

 あ〜…そういやそんな事言ってたっけね。まだなるつもりかい。


【うるさい小鳥】

 まだもなにも、ずっと『カラス』になりたいよ! はれでも、あめでも、ゆきでも、ずっと!


【こゆきくん】

 こら、ぴーすけ。うるさいぞ。


【うるさい小鳥】

 あ、こゆきくんだ! おはよう!


【こゆきくん】

 にゃんごろー、お前。ぴーすけ食うなよ。


【怠惰な猫】

 こんなの食ったって腹の足しにもなりゃしないよッ


【うるさい小鳥】

 こゆきくん! こゆきくん! きょうははやおきだねー!


【こゆきくん】

 さて、めしの準備せんと。


【うるさい小鳥】

 ゴハン!? うれしい! きょうはなにかな!?


【怠惰な猫】

 やっかましいね。あと『一週間』で大人になる奴とは到底とうてい思えんな。


【うるさい小鳥】

 あ! そうだった! あと『いっしゅうかん』でおとなはこまるんだった!

 ねえ、ねこ。ボクがおとなは“ちょっとまって”したら、あと『いっしゅうかん』のびないかなー?


【怠惰な猫】

 『一週間』が『二週間』になったところで、お前の青い羽は黒には染まらないし、アタシが丸呑まるのみに出来そうな体も、デカくはならないんだよ。


【年老いた烏】

 何だ、楽しそうだな。


【うるさい小鳥】

 あっ! じっちゃ! おはよう!


【年老いた烏】

 はい、おはよう。今日も元気だな、小鳥。


【うるさい小鳥】

 げんきだよ! あ、でもね。じっちゃ。ボクね、あと『いっしゅうかん』でことりじゃなくなるの。


【年老いた烏】

 ほう、目出度い事だな。お祝いは何がいい?


【うるさい小鳥】

 んもう! ねことおなじこといってる! ちがうの! ボク、じっちゃとおなじ『カラス』になりたいの!


【年老いた烏】

 おや、生まれたばかりの頃にもそんな事言っていたな。懐かしい。


【怠惰な猫】

 じーさん。5ヶ月前はそんな昔じゃないよ。


【年老いた烏】

 んん、そうか。駄目だなぁ、年を取ると昨日のご飯もまるで思い出せやしない。


【うるさい小鳥】

 あ、そうだ! もうね、こゆきくんおきてるから、あとちょっとでゴハンだよ!


【年老いた烏】

 そりゃ楽しみだな。


【こゆきくん】

 お前ら、飯だぞー。お、クロ起きてんじゃん。


【年老いた烏】

 虎雪こゆき、おはよう。


【うるさい小鳥】

 わーい! ゴハンだ、ゴハンだーっ! もぐもぐもぐ、うん! きょうもおいしい!


【怠惰な猫】

 鳥ってのは貧相ひんそうな舌してんだね。そんなかわいた野菜なんか、食っても美味くないだろ。


【うるさい小鳥】

 おいしいよ! ねこもだまされたとおもって、ひとくちどーぞ?


【怠惰な猫】

 要らないよッ! 逆に具合が悪くなっちまう!


【こゆきくん】

 お前もそろそろ巣立ちだな、ぴーすけ。


【うるさい小鳥】

 そうだね、こゆきくん! 『おとな』って、しろいかごをとびだして、おそらをじゆうにとべるんでしょ! たのしみだよ!


【こゆきくん】

 お前、そんなにピーピー鳴いてっと、カラスにでも食われちまうぞ。


【うるさい小鳥】

 はっ! そうだ! わすれるところだった! こゆきくん、ボクね、あと『いっしゅうかん』でカラスになれるかな!?


【こゆきくん】

 はいはい、飯はこれっきりだ。これ以上あげるとデブどりになるからな。


(二匹の様子をうかがって)

 クロもにゃんごろーも・・・、食べてるな。よし、自分の飯作ろ。


【うるさい小鳥】

 あ! こゆきくんいっちゃった〜…。


 ねね、じっちゃ! じっちゃはどうやってカラスになったの?


【年老いた烏】

 んん? 爺ちゃんは昔からカラスだったさ。それこそ生まれた時からな。


【うるさい小鳥】

 ええっ!? それすっごいね! うまれたときからカラスになれたの!? じゃあボクは!? ボクはいつになったら、カラスになれる!?


【あっちゃん】

 その願いは来世らいせまで御預おあずけだな、小鳥。


【うるさい小鳥】

(嬉しそうに)

 あああ!! あっちゃん!!


【怠惰な猫】

 おや、何だい。随分ずいぶん久し振りじゃないか。


【あっちゃん】

 やあやあ、猫。相変わらず不貞腐ふてくされた態度だね。こゆきくんに迷惑掛けてないか?


【年老いた烏】

 朱子あかこ。爺が死に絶えるまでに会えないかと思ったぞ。


【あっちゃん】

 おう、カラス。その分じゃあ、まだまだこっちには来ないだろうな。


【うるさい小鳥】

 あっちゃん! あっちゃん! あっちゃんだー! 

 なんであいにきてくれなかったの!? ボク、あと『いっしゅうかん』でおとなになっちゃうんだよ!?


【あっちゃん】

 小鳥が『あと一週間で大人になる』から会いに来たんだろ。地獄じごく申請しんせい出すの大変だったんだぞ。


【怠惰な猫】

 よくもまあ、そんな嘘っぱちが口から出るもんだね。そろそろお迎えなんだろう? 良かったじゃないの、小鳥と一緒にお祝いだなこりゃ。


【あっちゃん】

 心にもない事言うなよ、猫。饒舌じょうぜつさびしさが乗ってるぞ。


【年老いた烏】

 そう意地悪いじわるを言ってやるな、朱子あかこ。久し振りに顔を合わせたっていうのに、口喧嘩なんて勿体もったいい。


【あっちゃん】

 久し振りに顔を合わせたから喧嘩するってもんだぞ、カラス

 それよか、もう飯か。今日はこゆきくん早起きだったんだな。


【うるさい小鳥】

 あっちゃん、あっちゃん! ボク、どうしたらカラスになれる? 『おとな』んなっちゃったら、カラスなれない?


【あっちゃん】

 んー・・、お馬鹿で五月蝿うるさい小鳥は、大人になってもカラスにはなれないぞ。小鳥はカラスじゃないからな。


【うるさい小鳥】

 そこをなんとか!


【あっちゃん】

 ならないのがことわりだ、小鳥。ワタシに足が無いように、猫が動けないように、カラスが年老いてしまったように。

 そうなるべくしてなった者達には、奇跡は何一つ起きない。自然の過程かていで現状が少し変化する程度だ。


 だから、小鳥のお前がカラスにはなれないんだよ。


【うるさい小鳥】

 ・・・うぅ、ひっく。


【怠惰な猫】

 あーあ、泣ーかせた。


【年老いた烏】

 大人げないぞ、朱子あかこ。少しくらいは希望を見せてやりなさい。


【あっちゃん】

 えっ、待って。これワタシが悪いのか!? 二匹だって小鳥の夢が叶わない事ぐらい知ってたし、遠回しに伝えてたろ!?


【怠惰な猫】

 この子はアンタの言う事しかまともに聞いてないからね。アタシらが何か言ったところで、何にも響かないのさ。


【年老いた烏】

 それにしても、朱子あかこがそんな風にこうから否定するなんて珍しいな。拾った責任というものか?


【あっちゃん】

(少し遠い目をして)

 まあ・・・、世知辛せちがらさは子供の内から知っておかないと。それに、


【こゆきくん】

 悪い、にゃんごろー! あしの包帯替えるの忘れ―――、・・・あ。


【あっちゃん】

 おや、今日は勢揃せいぞろいだな。


【うるさい小鳥】

(泣きながら)

 あっ・・・こゆきくんだぁ。


【こゆきくん】

 おまっ、お、お、お前っ!!


【あっちゃん】

 みなしゅう、耳をふさげ。コイツ今から叫ぶぞ。


【こゆきくん】

 お前、成仏じょうぶつしたんじゃねぇのかよっっ!!!!!!


【あっちゃん】

 ほらな。


 って、成仏? 何の話だ? そんな感動的な別れをした覚えは無いんだが。


【こゆきくん】

 …お前普段からわざとらしい喋り方すっから、本気なのかネタなのか分かんねー時あるんだよ。


【あっちゃん】

 失礼だな、ワタシはいつだって本気だぞ。


【こゆきくん】

 そういうトコだよ。


【うるさい小鳥】

(泣きながら)

 あっちゃんとこゆきくん、ケンカ?


【怠惰な猫】

 痴話ちわ喧嘩は余所でやっとくれ。甘すぎて毛玉を吐きそうだよ、う゛ぇ。


【年老いた烏】

 甘い要素は一欠片ひとかけらも感じなかったぞ。

 虎雪こゆきは猫の包帯替えか。そう言えば飯の後にやっていかなかったな。


【あっちゃん】

 小鳥、喧嘩ではないぞ。

 猫、甘くなくても毛玉は吐くだろ。

 カラス、こゆきくんの忘れん坊は今に始まった話じゃないぞ。


【こゆきくん】

 お前…、それまだ出来んのか。


【あっちゃん】

 ん? それとは?


【こゆきくん】

 『動物の言ってる事が分かる』ってやつ。


【あっちゃん】

 あはは、まあな。

 それよか、こゆきくんも相変わらず『幽霊が見える』ようで安心したよ。


【こゆきくん】

 安心していいのか分かんねえけどな。

 ほら、にゃんごろー。脚上げろ。


【うるさい小鳥】

 ねえねえ、こゆきくん…。

 ボク、カラスにはなれないんだって…。


【こゆきくん】

 ・・・あ? 何かぴーすけ、静かだな?


【あっちゃん】

 あー・・・、小鳥はカラスになれなくて落ち込んでるんだよ。ほら、あと一週間で巣立つらしいから、その前にカラスになっときたかったんだと。


【こゆきくん】

 あ? カラス? つーか、何だその三歳児みたいな思考。話の全部がイコールで繋げねぇぞ。


 というか、最近特に五月蝿かったのそういう事かよ。何だ、カラスになりてえって。アホかよ。


【あっちゃん】

 まあ、ワタシも最初聞いた時は耳を疑ったよ。


 若いカラスに襲われて巣から落ち、偶然ぐうぜん通り掛かったワタシに拾われたから助かったものの、そのままだったら死んでいたというのに。

 まさか此処ここに来る原因の、カラスになりたいとは。


【怠惰な猫】

 襲われた時の事を覚えていないんだから、しゃーないだろうけどね。あの子にとってのカラスは、この老耄おいぼれだから。


【年老いた烏】

 こんな爺を見て、なりたいとなるのもいささか疑問だがな。もうこの羽では飛びも出来ないというのに。


【あっちゃん】

 ま、無理なもんは無理って諦めさせたから良しとしよう。ほら、小鳥。もう泣き止め。あと一週間で大人になるんだろう? それだけでも目出度いからさ。


【うるさい小鳥】

 ・・・ひっく、・・・うん・・・。


【怠惰な猫】

 こりゃしばらく立ち直らないね。

 落ち込んだまま大人になっちまうんじゃないかい?


【あっちゃん】

 あらら、あの五月蝿かったのが嘘みたいだな。


【こゆきくん】

 ・・・次はいつ来るんだよ。


【あっちゃん】

 ん? さあ? 次はいつ地獄の申請が通るのか分からないからな。


【こゆきくん】

 ・・・ぴーすけの巣立ち、厳密げんみつにはあと一週間とちょっとだからさ。次の水曜日くらいか…。そん時には来いよ、絶対に。


【あっちゃん】

(微笑んで)

 ………善処ぜんしょするよ。


【こゆきくん】

 ・・・・。


 さてと、俺もそろそろ大学行かんとな。

 じゃあ、また夜にな。三匹とも。


 ・・・じゃーな、姉さん。


【あっちゃん】

 うん、じゃあな。こゆきくん。





【怠惰な猫】

 ・・・難儀なんぎ姉弟きょうだいだよ、全く。


【年老いた烏】

 それが二人の良い所でもあるんだけどなぁ。


【うるさい小鳥】

 んん? ふたりはなかよしでいいなーってこと?


【あっちゃん】

 あはは、……そういう事だよ。







(間)















【あっちゃんN】

 と、言う訳で。

 ワタシが結局、小鳥の巣立ちに間に合ったかどうかは・・・君達の考察こうさつとやらに任せようかな。


 全く、天国の申請に時間が掛かるのがいけないよな・・・あれ、地獄だっけ。あー・・・あはは、忘れてくれ。


 昔っから、こゆきくんには苦労掛けてばっかりで、駄目なお姉ちゃんだよなぁ。

 でも、足が無くなってから初めて目が合った時は…ふふ、嬉しかったなぁ。


 私が拾ってきた動物達の世話、ちょっと忘れっぽいけど、上手にやってくれてるみたいで安心だし。

 猫の言う通り、そろそろお迎えが来てもいいかも。なんて。


 まあ、それも。なるようにしかならないよな。


 それじゃあ、これを聞いてる君達も。

 頑張り過ぎないように気を付けて、生きていってくれよ。ワタシみたいにならないようにな!









STORY END.

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