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五人用声劇台本  作者: SOUYA.(シメジ)
台本一覧
13/16

【色彩踊る巫女姫の舞】

声劇タイトルは

【しきさいおどるみこきのまい】と読みます。



台本ご利用前は必ず『利用規約』をお読み下さい。

『利用規約』を読まない/守らない方の台本利用は一切認めません。


※台本の利用規約は1ページ目にありますので、お手数ですが、『目次』をタップ/クリック下さい。

 ♂1:♀2:不問2


 自信なさげな巫女(みこ) ♀ セリフ数:10


 (あか)(きら)めく美神(びじん) ♀ セリフ数:6


 (あお)く優しい幼神(おさなかみ) ♂ セリフ数:5


 両神(りょうじん)()べる村の神様 不問 セリフ数:12


 ナレーション 不問 セリフ数:8


[あらすじ]《7分程度》

 今日(こんにち)行われるのはその年一番大きく()った村特産の果実を村の神様に奉納(ほうのう)する(そな)えの儀式である。今年の巫女(みこ)に選ばれた娘は村人が見守る中、足を一歩踏み出した―――。








【自信なさげな巫女】

 今日(こんにち)…開かれます…し、神饌(しんせん)巫女(みこ)に…選ばれまして、(まこと)に、…う、嬉しく思います。


 我らが氏神(うじがみ)様…わ、我らを見守りし…紅神(あかがみ)様、蒼神(あおがみ)様、お、お陰様で…今年も良い果実が実りました。

 ……な、中でも一等(いっとう)良いものを巫女の…、ま、(まい)と共に捧げま…す。


【ナレーション】

 時折(ときおり)()みながらも最後まで口上(こうじょう)を終え、娘はふぅ、と誰にも聞こえぬようにため息を吐く。

 そうして娘には少し重いらしい特注の錫杖(しゃくじょう)を両の手でしっかりと持ちシャンっと鳴らした。


 それが合図だったように娘の背後で口上(こうじょう)を聞いていた村人達が一斉(いっせい)にそれぞれ楽器を持ち、演奏を始めた。


 娘は錫杖(しゃくじょう)(そば)に立て掛けてスイっと指先を空へ向けた。


【紅く煌めく美神】

 おやまぁ、今年も始まったねぇ。

 うんうん、この重苦しくも可憐(かれん)な曲調。数千年前から何一つ変わっちゃいない。それにほうら、あの巫女だって昨年に比べれば断然(だんぜん)上手く舞えてる。

 おい、蒼神(あおがみ)! こちらへ来て見てみなよッ!


【蒼く優しい幼神】

 あれは ことしの みこ?

 ずいぶん ふらふら してるけど だいじょうぶ? まぁ さくねんみたいに ずっこけて そなえまで だめに してしまう なんてことは なさそうだけど。


 そういえば うじがみさまは?

 またむらびと の さけでも ひっかけてるの?


【紅く煌めく美神】

 あんれぇ? さっきまでここに居たんだけどな。まあいいさ。舞が終わる頃には戻るだろうさ。

 毎年毎年ご苦労なこってな。村が(ゆた)かなのはアタシらのお陰だなんて馬鹿な人間達だ。

 人間(じぶん)達の努力の結晶だろうに。


【蒼く優しい幼神】

 かんちがい でも しんこうされれば ボクらは たもたれる。じっさいに すくわれてるのは ボクらの ほうだ。


 それに どうしたって ボクらの こえは あちらには とどかない。

 すうせんねんも このまま なんだから ほうっておけばいいよ。


【紅く煌めく美神】

 まぁ確かにそうさねぇ。アタシらは氏神(うじがみ)眷属(けんぞく)信仰(しんこう)が無けりゃあ(またた)く間に消えちまう。


 しっかしなぁ、人間ほどじゃないが多少心が痛むのは()けられんなぁ。


【蒼く優しい幼神】

 おまえは “あか” のくせに りちぎだね。


 そろそろ まいが おわるよ。

 うじがみさまを さがしてきて。


【紅く煌めく美神】

 あいよッ!


【ナレーション】

 人間達の(はる)頭上(ずじょう)で行われる神様達の会話は当然、人間達(かれら)に聞こえるはずもなく、巫女の舞はそろそろ終盤(しゅうばん)に差し掛かろうとしていた。

 とんとん、と簡易(かんい)的に作った舞台の上で巫女が()(おど)る音が聞こえる。


 そんな時だ。

 びゅう、と風が吹いた。珍しい、と演奏中の村人達が目を(つむ)りながら思う。それは巫女も同じだった。

 この辺りは冬の一時期しか強い風は吹かない。今は春で一番穏やかな気候のはずだった。


【両神を統べる村の神様】

 やあ、()い巫女よ。

 ワタシの声が聞こえるかの?


【自信なさげな巫女】

 え……ぇえっ!?


【ナレーション】

 巫女は驚き、声を上げた。

 しかし背後の演奏は止まっておらず、終盤(しゅうばん)の激しさのまま続いている。


 巫女は思わず周りを見渡す。

 演奏を続ける村人や、舞台を(なが)める村人、楽しそうに酒を飲み()わす村人が居た。


【自信なさげな巫女】

 これは、いったい……。


【両神を統べる村の神様】

 村の者からすれば其方(そなた)は楽しげに踊っておるのだ。そう、警戒せずとも後には何も(のこ)らん。心配もせんで良い。


【ナレーション】

 巫女は頭に響く誰かの声に周りを見渡すのをやめる。そうして空を(なが)めてこう言ったのだ。


【自信なさげな巫女】

 あ、あの……貴方様は…氏神(うじがみ)様なのですか?


【両神を統べる村の神様】

 左様(さよう)

 今年の巫女に何やら(なつ)かしい気配を感じての。様子だけ見るつもりが、ついつい会いに来てしもうた。すまんのぉ。


【自信なさげな巫女】

 う、氏神(うじがみ)様……。

 本当に、ホンモノですか……?


【両神を統べる村の神様】

 何だ、神を疑うのか? ワタシは正真正銘(しょうしんしょうめい)、この村の神様での。


【自信なさげな巫女】

 非才(ひさい)の身が、も、申し訳ございません……!


【両神を統べる村の神様】

 それよか其方(そなた)血縁(けつえん)に巫女の者は居らんか?


【ナレーション】

 巫女の謝罪を受け流した氏神(うじがみ)は彼女にそう聞いた。巫女はまずその質問に驚いてそれからウーンと悩み出す。


【自信なさげな巫女】

 た、多分ですけど…私の……曾祖母(そうそぼ)…ではないでしょうか…。

 祖母も母も私の事を曾祖母に似ていると…よ、よく言っています。


【両神を統べる村の神様】

 なるほどのぉ。して、その曾祖母は?


【自信なさげな巫女】

 えっと、私が生まれる少し前に…な、亡くなったと。


【両神を統べる村の神様】

 ……そうか、人は短命(たんめい)だの。


【ナレーション】

 氏神(うじがみ)はそう、悲しそうに(つぶ)いた。巫女は何と言えばいいか分からず(うつむ)いた。


【両神を統べる村の神様】

 なぁに、そんな顔をするでない。

 人は薄命(はくめい)で短命。分かっていた事だ。残念だがのぉ。


 ではワタシはそろそろ行くとしよう。あまり下界(げかい)に居ては世界の調和(ちょうわ)を崩しかねん。


【自信なさげな巫女】

 あ、あの…あの、氏神(うじがみ)様!


【両神を統べる村の神様】

 何だ?


【自信なさげな巫女】

 私、今日(こんにち)、貴方様にお会いできた事、生涯(しょうがい)忘れません! 絶対! 絶対に!


【両神を統べる村の神様】

 ・・・・・・・・・。


 そうか、ではワタシも(しば)しの間、其方(そなた)を記憶に(とど)めておこう。


【ナレーション】

 ではさらばだ、と氏神(うじがみ)が手を振った途端(とたん)、周りの空気が戻る。

 巫女は戸惑いながらも演奏に合わせ、舞った。その様子を眺めながら両神(りょうじん)の待つ場まで戻った氏神(うじがみ)は――。


【紅く煌めく美神】

 何だい、氏神(うじがみ)様! 小難しい顔してるね! あの巫女と何話してたんだい?


【蒼く優しい幼神】

 あんまり ふみこんでは だめだよ あか。 うじがみさまは あのみこに みほれちゃったんだよ。


【両神を統べる村の神様】

 (あか)! (あお)! 静かにしないか、演奏も舞もよく聞こえんし見えん! それにワタシが見惚(みほ)れたのは舞の方だ! 言ったろう、懐かしい気配がすると……!


【紅く煌めく美神】

 あんれぇ? その時の巫女にも同じ事言ってなかったぁ?


(わざとらしく演技がかった声で)

「懐かしい気配がしたもんでな、来てみたら随分(ずいぶん)()い巫女が居たもんだ」


【蒼く優しい幼神】

 うじがみさま ってば そんなに こわぁいかおして ほれっぽいんだから こまるよね。 まいとし まいとし おどってるみこに ほれては なつかしい だとか うい だとか いって あいにいっちゃうんだから。


【両神を統べる村の神様】

 (やかま)しいと言っておろう! 全くワタシの眷属(けんぞく)はワタシを(うやま)う気はないのか!?


【ナレーション】

 儀式を楽しむ人間達には聞こえぬ神達の(たわむ)れ。氏神(うじがみ)は意地悪な顔をした両神(りょうじん)(しか)りつけながら前より随分(ずいぶん)と清々しい表情(かお)をした巫女の舞を眺めていたのだった。












STORY END.

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