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その6(最終回) 表裏一体の新世界

 引き金を引いて発射したコルクは、どうしても欲しい景品に目がけて一直線に飛んで行った。そして、景品のぬいぐるみにコルクが命中すると、置いている台から下のほうへ落ちていった。


 これを見たトラのおっちゃんは、当たり鐘を右手で持って高らかに鳴らし始めた。


「あんた、大当たりやで! さあさあ、これが景品のぬいぐるみや」


 悠貴はおっちゃんに一礼をすると、景品のぬいぐるみをもらって射的場から出てきた。サラリーマン姿の犬のぬいぐるみを見ながら、悠貴はポケットからスマホを取り出した。


「コレクションを見ると……。あっ、これやこれや!」


 スマホの画面には、『アタラシイセカイ』のコレクションが映し出されている。右手人差し指で画面を動かすと、サラリーマンの格好をした犬がコレクションに入っているのを確認した。


 左手で抱いているぬいぐるみには、専用ホームページへアクセスできるQRコードがあるのを見つけた。


「このQRコードを合わしたら、犬のサラリーマンの秘密が分かるかも知れへん」


 悠貴はカメラアプリを使いながら、四角い枠内にぬいぐるみのQRコードを合わせた。そのQRコードを読み取ろうと、タイミングよくスマホの画面をクリックしたときのことである。


「うわっ! 周りがまっさらになってもうた!」


 周りが一瞬真っ白になって戸惑っていると、悠貴の目の前に現れたのはいつもの新世界の風景である。


「あれっ? さっきまで動物が歩いとったはずなのに……」


 新世界の通りには、人混みの中で大勢の人間が歩いている。その様子を、悠貴は何度も目を開け閉めしながら見続けていた。


「ほ、ほんまに元の新世界へ戻ってこれたんや!」


 悠貴は、元の世界へ戻ったことに対する安堵とうれしさを隠すことができなかった。しかし、もう1つの新世界で景品としてもらったぬいぐるみは左腕に抱かれたままである。


「元の世界にも、あの射的場がほんまにあるんかいな」


 その場で振り向くと、『なみはや堂』の看板がある射的場は元の世界のほうにも存在している。しかし、並んでいる客もおっちゃんも全員人間である。


「ま、まさか……。この世界もあの世界も、同じ新世界つーことかいな?」


 悠貴は同じ新世界でも、人間が住む世界と動物が住む世界が表裏一体であることを改めて知ることになった。けれども、その事実を知る人間は誰もいない。


「あっ! こんなことしとる場合やあらへん! はよう通天閣へ行かんとあかん」


 悠貴は、もう1つの新世界で動物たちとの出会いを心に秘めながら通天閣へ急ぎ足で向かった。

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