007話 実技試験の模様
試験前日、僕は自室ではなく
唯の部屋で3人で寝ることになった。
木並唯の父、哲也さんは
今は自分の趣味から始まった建築業へと
移って仕事をしているのだが元狩人では
ないにしろ元警察官である。
その警察官だった昔からの目で分かるそうだ。
一体何の話かと言うと、桜の見極めである。
見てすぐに危険が今は無いと分かると
すぐデレっと態度を変え親バカ全開になっていた。
それはそれは娘が2人できたと大喜びしながら
ビールを次々と飲んでいくぐらいに。
その妻の洋子さんは主婦業をしている。
だが昔から育斗の母と仲が良いとは聞くだけで
前の職については一切教えてはくれなかった。
唯も知らないそうなのである意味驚きだ。
桜からも頼み込ませたがそれでもそのことを聞くと
哲也さんは頑なに口を開こうとせず
ましてや他の話に移ってきりがないので
今現在そのまま3人で上に上がり
談笑している、というところだ。
ご飯は食べ終わり仲の良い夫婦は下に。
3人は明日についての話題に入っていた。
「大体のルールがあるんだよね。
その…実技試験にさ。」
と唯はチョコレートを頬張りながら
若干口をもごもごさせながら言った。
それに?マークを浮かべて育斗は質問する。
「会場は自由に見れるのか?」
「うーん…あのときは小さかったしなぁ。
まだ育斗が家に来なかった頃の話だよ。」
「そんな昔のよく覚えてるな…」
桜も横で若干眠たそうにしながら頷いている。
「一応当日他の受験生にも聞けたら
一番だと思うけど…でも簡潔的に言うと魔物を
多く倒してその数を競うって感じだよ」
「競う…ねぇ。」
ちらっと桜を見やると
段々と頭が前にコクッコクッと倒れかかっている。
「でもがんばろ!桜ちゃん!育斗!」
その掛け声で目を覚ます桜。
そしてえへへと笑った。
「桜ちゃんの身体が治るように助け合って
頑張って生きていこう!」
そう唯は上にガッツポーズを突き出した。
桜もおー!とガッツポーズ。
…あ、これ俺もやるやつだ。
遅れておー!と突き出す。
そしてまた桜を見やった。
初めて会ったときのような苦しい顔じゃない。
すごく笑顔と希望に満ち溢れた顔だ。
「じゃあ桜ちゃんも眠そうだし寝よっか♪」
そう言うと桜は恥ずかしそうに
上目遣いを唯に出した。
そしてそれに萌えて唯は桜に
抱きつき笑い合った。
俺も少し微笑しながら来るべき明日に備えたのだった。
そして―――実技試験当日。
本来は一人でやる試験なのだろう。
実技試験の受験票を見るとその係員さんは
“ああこの人たちか”とでも言いたそうに
2度見したあとに言った。
「2人ペアですね。頑張ってください。」
そしてその声が後ろの受験生にも聞こえたのだろう。
そのままその言葉が反響した。
(おい!2人ペアだってよ!)
(聞いたことないぞ?)
(特別枠にたまにあるそうなんだってさ!
どこかに障がいあったりしたりさ!)
「ねっ、ねぇ育斗…これは…」
「ああ早くいった方がいいな。」
とそのまま若干混みつつある人混みを
桜と手を握りながらかき分ける。
そのときだった。
『あ!いたいた!さっきの!』
ギクリとその言葉の方向を見やる。
そこには眼鏡をかけた黒い天然パーマの青年がいた。
受験生なんだろう。
右手に受験票を持っている。
桜はがっしりと両腕を後ろで掴みながら
後ろにひょこっと隠れる。
僕は少し強気な口調で言う。
「なんですか」
「そんな身構えないでよ、後ろの子もさ!」
名前は蛍火守。
軽くこちらも自己紹介をしつつ、
同じ受験生かつルールを知っているよう
だったので少し話を聞くとにした。
「特別枠?」
「ああ、うん。
2人ペアなんてほとんど例に無いらしくてね。
そのほとんどが特別枠に入ってたりするんだ。
2人3脚で狩人を目指す、みたいな。
そうでもないとすると…君たちか
その親が知っているのかも。
まぁ私情を聞くことはしないよ安心して。」
初対面なはずなのにとても気さくなので
ある意味安心できない。
と桜は俺だけにしか聞こえない声で呟く。
それは俺も同意だった。
「なぁルールって手っ取り早い話、
魔物を多く倒せば良いんだよな?」
俺が知りたかったことを言うとえ?
という顔で蛍火は唖然と僕と桜を見る。
なんかマズかったのか?
「ああ…まぁそんな感じではあるけれど
…どこ情報だよそれ……。」
と少し愚痴めいた声で呟きながらルールを教えてくれた。
1,長方形のような敷地内で行う。
2,戦場となる場にはその境界線として赤線が書いてある。
3,試験中は赤線より外側へ行ってはならない。
魔物の攻撃で外側のセーフゾーンに踏み越えた時点で失格。
自分自ら踏み越える場合は棄権扱いとなる。
4,制限時間内により多くの魔物を倒すことも重要だが
大きくて魔物は5種類ありその種類ごとに
得られる得点が違うため注意。
「…っていう感じかな?
とは言っても5種類のうち
3種類しか出さないと思うけど。」
「種類って何かあったりするのか?
その魔物って色んな姿形あるだろ」
そのことを言うとまたふっと笑うと言う。
「召喚師っていう狩人のやつが小型、
中型、大型と召喚していくんだよ。
その次は特異型って言って滅多に召喚しない。
死人が多くなるしな。」
え?
「こっ…こここれって死人が出るのか?!!」
それにキョトンとしたのか
蛍火はある場所に指差す。
「あそこはそれ専用の電子盤。
受験生でも目指したところは生死を分かつ場所だ。
ここではそんな生ぬるいことは言えないぜ?
まぁ命を大事にしてりゃいける。
欲にくらんで突っ込めばああやって
電子盤に文字が連ねられていくんだ。」
そう言うと電子盤の前で受験生の親と
見られる大人たちが泣いて電子盤を叩いている。
電子盤には次々とその死んだ受験生の名前が書かれていく。
「まぁ自信を持て。お互いな。
さ、始まるぜ。」
と受験票を係員に渡し階段を降りる蛍火。
桜を見て呟いた。
「絶対勝つぞ」
「うんっ」
そうして受験票を渡し階段を降りていった。
階段を降りると唯が棍棒のようなものを
持って迎えてくれた。
迎えるとは行ってもこれから始まるのだが。
「…唯は何持ってるんだ?」
「魔法の杖ってところかな?」
そう真顔で呟くのでくすっと笑う。
なあに~!とちょっとぷんっと口を尖らせる唯に言う。
「魔法って…あるのかよ~」
「それ他の人に聞かれたら絶句される
だろうから言わないことね。」
育斗はそうダメ押し?まぁ判子を押され黙る。
実際に何か本を持ったりしている人を
見るとそれは確かに現実味を帯びてきていた。
魔法の概念とこれから戦いだという2つが。
「一応これからルール説明があるから
聞いといた方が良いよ。
じゃあ私はこっちだから頑張ろうね!2人とも」
と長い黒が混ざった茶色の髪を束ねて
ポニーテールのような格好の唯は
ジャンプしながら言った。
それに他の受験生、男女問わずに注目されていた。
すると後ろからあの声が。
「お!さっきの!」
「蛍火くんか…」
というと恥ずかしそうに顔を隠しながら笑う。
「やめてくれ!守って普通に呼んでくれて良いから!
あ、俺はおまえのこと育斗って言うからな?
生き残りそうだし!」
「…まぁどっちでもいいよ。」
そう守を見やると全身に黒い防具のような
ものを羽織ったりしていた。
とはいっても体に密着するゴムのような素材だ。
「あれ?育斗は装備とかつけないの?」
「ん?ああ俺は煙爆弾だけかな」
この煙爆弾は神の剣が目立たないように
周りに投げろと渡されたものだ。
勿論渡したのは霧島さんである。
「えっ…えー…まじかよ」
「他人の心配は良いから自分の心配をな?
で何でそんな格好なんだ?」
「ん?ああ俺はちょっとした体質があるんでな。
それを生かそうと思ってさ。」
へへへと守は笑う。
桜はしがみつくのをやめて
手を握りながら前を見やる。
とても広い。
目の視力は良い方なのだが向こう側の人の
顔が見えないくらい広い。
ここに…
「いっせいに受験生行くのか?」
「ん?あったりめぇよ!
じゃないと失格になるしな。
あ!ルール説明来るぜ」
そう言うとアナウンスが流れる。
無機質な黒と白で出来た空間に流れる冷たい機械音声。
『ではルールを説明いたします。
受験者は時間になりましたら
赤線より内側に入ってください。
自ら赤線を越えて棄権した者は
そこまでの記録となります。
但し何らかの影響で自分の意思とは別に
踏み越えた場合失格となります。
制限時間は1時間。
より多くの魔物を倒すか生き残るか、
記録で勝負するのかそれはご自由にどうぞ。
ちなみに
【1m弱それ以下の小型=1pt】
【5m弱それ以下の中型=3pt】
【10m以上の大型=5pt】
【50m以上の特異型=10pt】
万が一制限時間内にすべて倒されてしまった場合のみ
【100m以上~計測不能/指定災害型=50pt】
となります。
記録を更新された方は狩人研修専門学校の入学、
年間徴収金全てが免除されます。
現在の記録:全個体数撃破(4名)』
聞いて驚く。
ポイントの取得数に関してこれ以上行ったら
勝ち!というノルマ的なものが無いのは
気にかかるがなんだ指定災害型って。
そりゃあ死人出るわ。
しかもそれをふくめての全個体数撃破ってなんだ?
俺や桜、唯は関係者だからお金は掛からないと
しても全額免除対象者はどれくらいの強さなのだろうか
…一度顔が見てみたい。
そう育斗は思った。
だがそれが現実になるとはこのとき
誰も桜も思っていなかっただろう。
『…では配置についてください。』
サイレンが鳴り響く。
それに桜は一瞬にして冷たい汗と震えを
起こすが僕はその桜を後ろからそっと手を繋ぐ。
他者から見たらすごく妬まれそうな感じだが。
まぁさっきからしているし大丈夫か。
「大丈夫だよ桜。
やれることをやろう。」
桜はそれに頷きそして2人で前へと踏み出す。
サイレンが鳴り響きおわるとぞろぞろと
受験者が武器を持って構えている。
そして魔物が出現して戦いという
名の試験が始まった。
そして開始1分足らずで見る見るうちに恐竜
のような魔物によって弾き飛ばされていく受験者達。
それを横目に僕は桜と手を繋ぐ。
この戦いは除幕式だ。
まだまだこれからもやらなくちゃいけない。
桜のためにも。
自分のためにも。
支えてくれる人のためにも。
「っ?!おい!育斗何やってる?!」
守がそう言う。
僕ら2人の前にはその恐竜のような魔物が
僕らを食べようと牙を見せた。
--今だ…!!!
と煙爆弾を投げつけ周りを見え無くさせる。
そうして龍王星さくらを呼ぶ。
「来い!"龍王星"!!!」
まばゆい光が桜を包む。
きらきらとガラスと金属を混ぜ合わせたか
のようなとてつもない光沢のある光。
立体に浮き上がるその剣を掴む。
周囲の受験生は目を丸くさせる。
神々しい光が煙の中から見えているからだ。
とてつもない強大な悪寒と感嘆に周囲は圧倒された。
光が風となり俺の服をばさばさと揺れ動かしそうして
煙が収まったその瞬間に恐竜のような魔物の首を刎ねた。
一声も出さず赤い目の少年はふらっと倒れそうに
なりながら持ちこたえて次の獲物を狙う。
刀で言うならば持ち手である柄つかが黒い龍を型取り、
刀身と切っ先が白銀に輝く。
まるで龍の牙のように鋭く硬い硬質な刃を、
龍王星を次の獲物に向けた。
あまりにも速くポイントを稼ぎそしてどんどん狩っていく。
その姿に周囲は固まっていた。
ただ2人除いて。
後ろで輝く光を見て守は固まった。
あまりにも恐ろしく見とれてしまうほどの
ものがそこにあるからだ。
「なんだよ…あれ…」
正体はさっきの特別枠の2人だ。
……?2人?
いや、さっきの女はどこだ?
どこかに飛ばされた気は無い。
何故ならあの女は初めて人に会ったような
戸惑いを多く覚えていたからだ。
多分だが箱入り娘だとかで世に出ていないのだろう。
だから特別枠なのかと頭で勝手に理解したつもりだった。
だが正解は違う。
女はいなく代わりにあのひ弱な男がいるだけ。
だがあからさまにさっきと目の色が違う。
さっきは青く純真だった。
だが今はどうだ?
何故か赤く紅色を帯びている。
何かに憑かれたかのように。
…憑かれた…か。
「まさか…な?ははは…」
憑かれた。
そう刀が体に憑くという事例は様々たしかにあるが、
あれば今頃捕まっている。
狩人や警備員も見とれているのかそれとも
放っているのか捕まえるようなことをしない。
妖刀という形で今もこの世にあると聞くが
それではないだろう。
これが当然だと言い足そうに。
(つまりは…)
蛍火守は勘が良すぎた。
この戦いでその答えに行き届いてしまったからだ。
あの女が神の剣で男が契約者だということに。
・
同時刻。
霧島勇吾はモニターに映し出される
映像を見ながら下の会場を窓越しに見ていた。
一般用の観客席、
モニターは無くほとんど係員や警備員、
狩人のスタッフ用の部屋となっている。
霧島は護衛を連れてその部屋を借りて
そのうえで下の会場を窓越しに見ているのだ。
それほど高くはないので人の顔とかは軽くだが見える。
ここでは不審なことやルール違反がないように
監視する部屋でもある。
霧島は赤線枠の内側、少年や受験者が
命さながら戦っている場所を監視という名目で観戦している。
他の出払った狩人や警備員は下で失格者と棄権者の管理、
そして不正がないかを確認している。
(少年はなんとか切り抜けているようだな。)
そう思いつつ後ろの護衛が何故か
あたふたとしているのでそこを見やると
誰かを通す、通さないで揉めているようだった。
「誰だ」
護衛がびくりと肩を震わせその者を通す。
「四天王の座まで上り詰めたって?
よくやるじゃねぇか」
そう白髪眼鏡の男は俺の後ろの席に腰掛ける。
が、ここでは見えないと俺の横に来る。
「どうした?チェルシー…いやC先生?」
「これから入学する1年生どんなものかと
見学しにきたんだよ」
ニィっと笑うと窓越しに見やる。
あれが神の剣か?
というので護衛を外に出して応えた。
「ああ。」
「わざわざ護衛まで出さなくとも
良かったのに~まぁ良いや。
お前の師匠は元気か?…あ、駄目?」
と煙草を取り出そうとするのでそれを制する。
C先生とは長くの付き合いだ。
狩人研修専門学校の理科教師兼実験室主任
という立場にある。
今は30代~40代というところなのでまぁ10歳差
というところだろう。
顔立ちは前述通り白髪眼鏡、ひげは生やしたまま。
いつも白衣姿なので一目で分かった。
「死んでしまえばいい。というのが本音だ。
それと四天王の件はまだ確定したわけじゃないぞ」
「四天王は狩人っていう軍の中で3番目に
権力持ってるからなぁ…嬉しいことじゃねぇか。
1年でも俺の下で勉強してくれたんだ。
生徒としてお前を誇りに思うさ。
…で、何でそんなに嫌うんだ?」
誇りに思う。
その言葉は素で嬉しかった。
その師匠のもとで勉学ともに剣術を学び
最後の年にC先生のもとで勉学に励んだ。
そしてすぐに狩人になって数年が過ぎている。
そして今だ。
「“黒騎士”の件を知っているな?」
「ああ。」
「その“黒騎士”が師匠だったんだ…かも。
だがそうだろう。まだ確定したわけじゃないからな。
剣術はひっくり返されるし、まずあの力は問題すぎる。」
「“黒騎士”ねぇ。何をしようって言うんだ?」
C先生はぼりぼりと頭を掻きながら煙草は
駄目なのでそのライターのキャップを開け閉めしている。
「狩人組織の転覆。
それを狙っていると言っていたな。」
それはあのとき霧島が黒騎士と対峙したときのこと。
黒騎士にはすぐに逃げられたがその後霧島は追っていた。
その跡を。
『さてと。あとは逃げるとするか。
…勇吾。
お前の手腕が甘いせいで仲間が死んだんだ。
呪うならお前の力を呪え』
追いかけた先に師匠はいた。
俺の部下をたった一瞬にして殺した
本人が開口一番に言った。
つけられていることもさも知っているかのように
当たり前だと言うかのように。
「その後は?」
「殺そうとした。だがあいつは例の錬成陣を
持ってたせいで倒せなかった。」
「例の…近幾何学魔法錬成陣か?
…あれは禁忌を肯定した存在してはならないものだぞ?
作成元は不明だとしてもどうやって手に入れたんだ?」
霧島はその問いにさらっと答える。
「その錬成陣を作ったのは師匠なんだよ。」
へぇと絶句するC先生を尻目にモニターを見やる。
もうすぐ1時間が経とうとしていた。
「C先生お願いがある。」
「なんだ?」
後ろを向いて霧島は目を見て話す。
「多分師匠はおそらく神の剣を持ったまま
家を出た可能性がある。
天地空の神の剣を狙ったんだ。
C先生が保管している神の剣
そして師匠のもつ神の剣。
この5つで戦争の切り札が決まってしまう。
そのために師匠と顔見知りで頼れるやつに
このことを話してくれ。」
「顔見知りでならって手助け…か?
それならお前の義弟が良いんじゃないか?」
そうC先生が言ったその瞬間ブザーが鳴り試験が終わった。
少年は2人ペアで110点なので÷2をして
2人とも55点が妥当か。
だがその2人でも届かなかったのが木並唯。
56点で新入生代表入りか素晴らしい。
そして4位に入るのが蛍火守とかいうずっと
少年を見ていた生徒だな。
あいつは神の剣のことについては気付いてるだろうな。
まぁいい。
「なら連絡してみるよ。
ありがとなC先生。」
「良いってことさ。
それにこっちにも危険があるなら嫌でも
放っておけなくなるしさ」
そうC先生は立ち上がり背を向け、
ひらひらと手を振ってその部屋を後にした。
護衛が帰ってくると護衛のものに少年と黄泉月、
木並の3人を裏口から出し車に乗せ護送した。
「えーっと…霧島さん、
なんで裏口からなんですか?」
「今回は問題という問題は無かったが久々なのでな。
死者0という形で終わったこと、
そして2人ペアってことで護衛に見させたら
案の定、記者の大群だ。」
俺は嫌いなんだ、として霧島さんはタブレットをいじる。
唯や桜はそれは嬉しそうにしている。
僕だって喜びたい。
でもそのときの霧島さんは
今までに見ない難しい顔をしていた。