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Player  作者: 工藤将太
序章
5/20

005話 それぞれの対面

いつも平均2000文字で書いていますが

今回は6000文字超えています。

どうぞご覧ください!(^◇^)

安堵した霧島は立ち上がり

走ることはせずただ歩いていく。

銃声が無様に何かを踏もうとするがそれすら

なにかに跳ね返されているようだ。


(……ここがよく見える。)


目の奥には…赤く黒くオレンジ色に燃え盛る炎。

大群のビルはそれに触れて無慈悲にも真っ黒に焦げていく。

そのなか。その奥。

綺麗な龍の型どった"気"が青緑色に光る。


(……美しい…‼)


そう思わせたものが今我々を苦しめている。

銃弾をただ雨のように。

それを跳ね返す傘のように彼はただ龍の刀を振るう。

振るったところが鉤爪でくり貫いたように3本の

斜め真っ直ぐな傷がコンクリートをえぐる。

そして倒れるビルをまた龍の刀で

一瞬にして細切れにする。

そこで少し疑問が起きる。


―――なぜ能力を使わない?


地の神の剣、いわば龍の刀。

あれは大地を操ることができる。

空の敵にも操れさえすれば大地を投げ飛ばし破壊できる。

また陸の敵には大地を震わせ地割れを起こし、

大地で踏み潰すことだってできる。

その能力は龍の刀、龍王星が本来持ちあわせ

またそれをいつでも使える力だ。

なのにそれを使わずただ1歩1歩踏み歩いて切る。斬る。


(…あの少年……もしや……。)


そう思った矢先、霧島は無意識に前に歩いていた。




「霧島様!ここにおられましたか!!」


「皆さん心配していました…‼

 どこに……おられたんですか?」


部下がしつこいがそれをすべて一言で

押し退けてそしてその光がほとんど間近で見える場所。

前線と言っても良い。

その場所で前を向いた。

あの目は……。


「……そうか。全部…」


そう霧島は止まり、刺し置いてある

誰かの刀を手に一直線に走り向かう。

龍の刀から発せられるいわば龍の気は

凄まじく霧島を圧倒する。

目は泳いでいた。


「把握した。」


霧島が扱う鉄と鉄以上の何か…龍の気がぶつかった。

そして龍の気は徐々に霧島の刀を飲み込み

熱で溶かされたようにぐにゃりと曲げていく。

だがその気自体は焦げるような熱さではないことが分かる。

事実触れる刀は溶けていくも服も手も身体も熱さを感じず

また溶けるようなこともなかった。


(……コイツはそうか…気付いていないのか。

 自分が何を持っているのか。

 何をしているのか、何に手を出したのか)


―――少し休め。少年。

お前の処遇はわたしが決める。


「"能力停止アビリティストップ"…!」


霧島は育斗から離れ後ろに後ずさりながらその言葉を呟く。

そのとき霧島にしか見えないサークル型の結界が

一瞬にして張られた。

そしてそのサークルに入った味方や敵を対象として

その者らの『能力』を一時的に消失させる。

すると今まで獅子奮迅のごとく素早い勢いと

猛攻を繰り広げた少年、草童歌育斗の動きは止まる。

そして神の剣を落としまた目の色がふらっと変わり倒れると

驚愕した目から綻びが生じてそのまま眠りにつく育斗に

神の剣もまた主人の手から離れたのか…人間の姿に戻った。

……。


「その2名を捕らえよ。

 くれぐれも傷のないようにな。」


霧島は眼下に二人を残し部下にそう言い放った。







「……んっ……」


草童歌育斗が目を覚ましたのは白を基調と

した少し肌寒い部屋だった。

目にまず入ったのは白い蛍光灯。

そして何かを映すモニターに真っ白なドア。

寝入ってたのか、とすっと真っ白な板から立ち上がる。

モニターを触ろうとしたとき

よく映画で聞くような自動ドアが開く音が聞こえたと思うと、

そこにはどこかで見たことのある顔があった。


「ここはどこだ、と言いたそうだな。少年。」


「あっ…!えと……だれ…でしたっけ?」


少年と呼ぶのはこの人が初めてなんだけど、

記憶が今一思い出せないと育斗は思った。


霧島勇吾きりしまゆうご、霧島でいい。

 名は名乗っていなかったか?まぁいい。

 ところで少年、いや草童歌育斗。

 君に何が起きたか分かるか?」


「え……」


ため息を混じらせながらやや面倒臭そうに

霧島は告げる。


「黄泉月桜のことだ。

 分かるか?神の剣。」


頭をつつく動作をしながら霧島は育斗に話しかける。

そこで初めて育斗は思い出す。


―――そうだ。桜さんだ。

桜さんが契約と言って手を握ったところまでは

覚えているんだけど…なんだっけ?


「……は、はい。

 思い出しました。」


「そうか。

 君は自分のためにあの剣を抜いたのか。

 彼女から。」


「へ?」


と空気が抜けるような声で育斗は返事をする。


「龍王星…とは呼んでいるが

 君はある意味大変なことをしでかしたんだぞ?

 責任は持てるか?」


「え?え?なんの…ことですか?」


と育斗は何が本当に起きているのか

分からないまま答える。


「分からないなら自分のためではないな。

 地の神の剣にでも言われたんだろう。

 "この状況を打破できるがその力を望めば

 もう二度と普通ではいられなくなる"

 とまぁそんなところだろう。」


とどこからか持ってきたコーヒーを霧島はすする。

そして口から少しコーヒーの匂いが漏れるなか育斗に説明する。


「あの神の剣、黄泉月桜は大地を操る剣を

 心に持つ一心同体の実験動物だ。

 本来は所有者となる主人がいなければその力を使えん。

 自分自身で心の中の神の剣を取り出したところで、

 神の剣は一心同体。

 折れれば命は尽きてしまう。

 ……そんな実験動物と君が契約してしまい

 今や君は『大地を操ることのできる能力者』だ。」


能力者…と育斗は呟く。

すると未だ実感の持てていない育斗を見て霧島は

コーヒーを啜りながら小馬鹿にするような声で

状況が理解できない育斗に対し説明を続ける。


「ふむ。気になるのはそこだけか?

 ……話をまとめよう。

 結論から言って君はやってはならない

 ことをしたせいで少なくとも、

 この10年以内に戦争が起きる。」


「せっ、戦争?!!!」


と座っていた白い板から

バンッと立ち上がり育斗は驚く。

そしてどうしてなのかを訪ねる。

それに霧島は答えた。


「元々、神の剣は5つあると言われている。

 そのうち2つは未確認だが、

 1つは大地を操る"地の神の剣"

 2つは海底の力を操る"海の神の剣"

 3つは天空のごとく天候をも操る"天の神の剣"

 この神の剣は所有者を持って初めて力が発揮するもの。

 君はそのうちの1つを呼び起こした。

 誰も呼び起こさなければ最悪な事態には陥らなかったが、

 契約したせいで最後の一人になるまで

 戦わなければいけないこととなった。」


「……えと…それで僕はどうしたら良いんでしょうか……」


と言うとクククと笑い霧島がコーヒーを

飲み干し育斗を指差した。


「狩人研修専門学校へ入学してもらう!」


「…へ?」


またもや同じようなことが起きるが

それを無視しながら霧島は呟く。


「神の剣を扱うにはそれなりの力を学ばなければいけない。

 本当は…少年と神の剣には死刑判決が下されているが、

 それではよろしくない。だから私が約束したのだ。

 少年が5年以内に狩人になれば死刑を無効にさせる。とな。

 ただ専門学校に通うのが条件となった。」


狩人研修専門学校…唯がいっていたやつだ。

そういや唯の父さんに謝らなくちゃ…色々…。


「え、えと……お金は…」


「ん?心配いらん。

 親代わりとなっている木並家の娘も

 併せて費用はすべて免除だ。

 何も知らないと言ったら大間違いだぞ?

 君は…自分を人間だと思っているからな。」


色々なことに虚を突かれていたが

今度こそは付かれてしまった。

"だと思っている?"どういうことだ?


「人間じゃないんですか?」


「生体検査において

 君は2つの診断が下された。

 1つは能力者であること。

 2つ目は人間ではないが魔物でもない。

 他の"何か"だということだ。

 ある意味新種らしくて解析もまともに進まんよ。」


ハハハと笑う霧島に育斗は呟く。


「能力者っていうのはどういうことですか?」


「……能力者。

 人間が突然変異において

 『能力』という別次元の力を持った者のこと。

 私も能力者だが、それは後にしておいて。

 君の能力なんだが、

 どうやら未確認のようなものだな。」


と言うと霧島は持っているコーヒーカップを

不意に育斗の顔面に投げつける。

育斗は無意識なのか意識的なのか目は

コーヒーカップを見たまま避けた。

だが避けた瞬間皿までもが飛んでくる。

それもまた避けようとしたとき霧島は呟いた。


「……2撃目だ。」


そうすると今まですらすらと避けていたがいきなり、

何がとんでいるのか分からず目をきょろきょろとさせる。

そしてそのまま皿がおでこに当たる。


「これが君の能力、【透視】と名付けようか。」


「……とうし?」


「ああ。透けて視える。

 【透視】だ。

 1回目となる攻撃を必ず避けることが出来るが

 2回目の攻撃を避けることは能力ではできない。

 避けるなら自分自身の力のみだ。

 君が寝ているとき少し攻撃をしてみたのだがすべて躱されてな。

 無意識下でも大丈夫なようだな。

 さて、君が何者か分かったところで君の意見を聞きたい。

 賛成か反対かだ。

 賛成を選べば君は狩人研修専門学校にて

 狩人となる知識をつけなければいけない。

 反対はお前自身の記憶をトラウマとして

 自身で黄泉月桜を殺してもらう。

 そのほうが忘れやすいだろう。

 どうする?」


「……どうするって…何を選択すれば…」


「いきなり何を選べばいいかって?

 知るか。

 俺の好意を受け取り賛成するか、

 受け取らず反対するかのどちらかだ。

 どうする?」


育斗はしばらく押し黙った。

これからのことも考えてはいたが

一番に考えていたのは自分自身のことではなく、

これに巻き込まれた黄泉月桜の存在だ。

彼女を殺せばいいのか?

あんなに優しくしてくれたあの娘を。

しかも自分の手で。

それなら賛成して狩人になる?

……。


「わか…分かりました。賛成します。」


「ふむ。分かった。

 では手始めとして君たちの実力を見るとしよう。」


そう霧島はまたクククと笑い出した。







実力を見ることにすると霧島という狩人は言った。

しかしそれがどんなものか分からない。

そのまま僕は流されながらまた通された。

僕と同じ白い空間にひっそりと

隅に佇む少女がいる空間へと。

白い簡素な服に身を包み体育座りで顔を隠すようにして。


「被験体番号…いや、黄泉月桜。」


そう霧島さんは言った。

すると美しい茶色の長い髪を前に上げる。

目は初めて会った時よりもすごく黒く濁っていた。

すごくやつれ絶望に勝った色だ。

霧島さんを見やると次は僕を見る。

そしてすごく悔しそうに唇を噛み締める

とまた顔を伏せてしまった。


「あっ…」


なんとも情けない声が出てしまう。

その無言のやり取りを見て霧島さんはただ一言、

少し時間をやる。として席を外した。

外して数秒経って彼女は立ち上がった。


「ごめん…なさい。」


とても芯のある綺麗な声だった。

すっと耳の中にその言葉と声が響く。

僕はその声にまでも聞き惚れてしまった。


「あっ…いや良いんだ。

 これは僕が決めたことだし。」


すると彼女は恐る恐る立ち上がると

僕の前までひたひたと裸足で歩き出した。

床もまた白くただしそんなには冷たくはなかった。


「ありがとう。」


そうして僕を目の前から抱き締める。

心臓が高鳴った。

いきなりのことですごく身が震えるし

それにとても恥ずかしい。

暖かいけれど呆然としてしまう。


「あっ…あーっええっと…きっ今日からよっよろしく…?」


すると彼女は抱き締めるのをやめて、

くすっと笑った。


「ここには私を道具としか見なかった人しかいなかった。

 あなたは不思議…すごく親身になれるし

 それに気持ちが和らぐわ。」


そんな感想を他所に彼女はそこから一歩下がって続けた。


「ごめんなさい。

 私が不甲斐ないばかりにあなたを巻き込んでしまって。

 あなたの運命が変わって…しまった。」


「えっ…えーと。

 僕はまだ君に助けられただけだし運命は変えられるから。

 それに…日常には飽きてたしね。

 これからよろしく。黄泉月さん。」


すると彼女は一瞬不安そうな顔色を浮かべたが

僕を見るなりその色は薄まった。

まるで決心がついたかのようになおる。


「桜でいいよ」


微笑を浮かべながら呟く。


「じゃあ僕も育斗でいいよ」


と僕も笑い合った。

すると霧島さんは終わったのを見計らって

扉越しに問い掛けてきた。


「終わったか?」


「あ、はい。終わりました。」


すると桜は育斗に身を潜む様にして

後ろに隠れる。それに困り顔をした霧島は呟く。


「すまんな。

 少年、おまえだけが彼女に近づけると思ったのでな。

 よく嫌われたものだ…まぁ昔からだが。」


と霧島さんは笑った。

そして僕は桜さんと手を繋ぐ。

桜さんが怖いからと手を繋ぎたいと申し出たからだ。

ぎゅっと握ってきたので

僕も痛くないように握り返した。

そして歩いていると霧島さんは立ち止まった。


「黄泉月桜。

 本当に黒騎士のことについては何も知らないんだな?

 何者ということも。」


止まったから何かしらを言うかと思ったら

それは桜さんに対してだった。


「何度も申し上げる通り知りません。

 もしも今後会うような機会があれば

 協力を…あなたの願い通り申し上げます。」


すっと桜さんは手を握りながら応えた。

一応協力のもとでの契約らしい。

そのために桜さんにも今後生きるために誓約があるとか。

このあともそう言ったことについての説明があった。

必要以上に力を使わないだとか、

剣になるのももしも万が一契約が解除されたとしても

契約者である育斗以外には使わせないこと。

などなど…それをきつく歩きながら言われた。


「まぁこれぐらいか。

 さてこれから君達には服や身の周りのもの、

 そして衣食住を決めてもらわねば。

 まぁ服は今用意するカタログで選んでもらう。」


とカタログを出される。

すっ…すごい見た目が良いぞこれ…

ブランドにも負けないようなイメージが強い。

そして何より問題の代金が書いてないところがなんとも…


「これは…何でカタログから選ぶ必要が?」


「ああ。

 それは全て狩人の研究機関が作ったものでな。

 防塵素材などを組み込んでいるから

 ちょっとした刃物で切りつけられる、爆発に巻き込まれる。

 そんな第三者による攻撃を意図もたやすく切り抜けられる

 という優れものなんだよ。」


「…で…これをなんで僕たちに?」


切りつけられるって…この国はいつの間に

そんなに物騒になってしまったんだ…と頭を抱える。


「ん?何か勘違いをしているが、

 あくまでも君達は協力者だ。

 一般的な服にそういった耐性を

 兼ね備えたものの検証実験だ。人を使って、のね。

 だからこれもその協力だと思ってくれ。

 支払うべきお金はいらんしそれに…

 実際に有名ブランドからの協力もあるから

 とてもじゃないが一般人は手が出せんぞ?」


そう霧島さんは説明を続けた。

協力者…か。

恐いことしか想像していなかったが

ある意味これも、良いかも。と思ったのは内緒だ。

ちなみにカタログも意味があるらしい。

防火、防水、防塵。

特徴があって夜でも光るだとか

光をすべて反射するだとか

その……開発に協力している企業によって

その内訳は異なるのだとか。

オーダーすることも可能だが0の桁数がまぁ

……あれだ、6は超えていた。

そりゃあ恐ろしくて普通に市場には出ていないのは頷ける。

それでも欲しいという人は多いらしいし、

今のところ行くと決まっている狩人研修専門学校も

この技術のものを応用した素材で制服を出している。

更に強力なものだと聞いていたが見ていないので

それはまた後ほど。

桜さんも手を繋ぐのをやめてほとんど

人生初(?)の服選びをしていた。

そのときはそのときで桜もまた女性の狩人?の人が出てきて

一緒にコーディネートをしていた。

ある意味その光景を見てくすっと笑った。

緊張感がまるでない。

そうして服を選び終わると

今度は衣食住の食と住についての説明が入る。

これは簡単な話でそれは寮での暮らしのことだった。

今回は状況が特殊なので

本来は男子寮と女子寮に分かれて入るが、

桜さんと僕ふたりで入ることになった。

なお食については寮で出るらしいので問題はないと霧島は呟く。


「ないとは思うがやましいことをして

 退学なんてしたら分かってるだろうな?」


退学=死なのは先ほどの説明で充分に分かる。

多少美人でもしない、と誓う。

まぁ男子だから何かしのハプニングはあるだろうけど。


「さて以上になるが先ほど選んでくれた服に

 着替えてもらいここから出る。」


「どこに行くんですか?」


と僕は質問を投げ掛ける。

桜さんは霧島さんの説明を聞きながら

また僕の手を握った。


「どこ…というのは分かるとは思ったんだが、

 君の今の実家だ。木並家だ。」


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