9、花の都フィレンツェ②
二日目は朝から雨が少し降っていた。私はホテルから歩いてピッティ宮殿に行った。サンタ・マリア・ノヴェッラ駅から見ると、サンタ・マリア・デル・フィオーレを超えて、ヴェッキオ橋の向こう側にある。ヴェッキオ橋周辺は本当に観光名所に事欠かない。
このピッティ宮殿は、どうもいろんな美術館博物館の複合施設になっていて、なんだかチケットの売り方がよく分からなかった。一応まとめてピッティ美術館と呼ばれているようだが、まあなんとなくそれっぽいチケットを買った。
この頃、チケットくださいと受け付けに言うのにも慣れてきたような気がする。あくまで思い込みである。
それはのちにボーボリ庭園にも行きたかったのに何故か行けなかった事によって思い知らされる。ピッティ宮殿には庭園があり、ボーボリ庭園と呼ばれている。この庭園を、宮殿の中から見かけた時にはなんて素敵なお庭! と思ったものだった。庭園もわりと好きだ。でも何故か行けなかった。チケットが庭園まで行けるチケットではなかったから。
ちなみにこの庭園、この前見た映画で出てきたけどその映画自体はあまり好みではなかったので具体的な話はしないでおく。ただ私の行けなかった場所がロケ地で妬ましかった。
あと、ピッティ宮殿で見たものは、あまり覚えていないところからして、もう、ウフィツィ美術館からの贅沢三昧の後遺症が出ている。でもたしか、宮殿がそっくりそのまま使われていて、建物自体ゴージャスだった。
さてそろそろ朝食だけではお腹がすいてきた頃。そんな腹の虫はムリヤリ黙らせ、次なる場所へ。ちょっと行った順序は前後するかもしれないが、とにかくヴェッキオ橋の反対側へ戻る。
通り過ぎたサンタ・マリア・デル・フィオーレは相変わらず美しく、美女にむらがる求婚者たちのような旅行者がうろついていた。美しい円蓋の上までのぼりたかったなと思いつつも結局別れを告げる。まあ、ぶっちゃけ高所行くだけで料金が発生したので高いところがある度に高所にのぼる事に私はためらいがあったのだ……。貧乏性と罵ってもらって構わない。
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会は建物の正面がかわいい。以前イタリアに行った友人からもらったお土産が、このサンタ・マリア・ノヴェッラ教会のハガキだった。その時からかわいい建物だと思っていたが、まさか本物が見られるとは。うきうきしっぱなしだ。
雨がしとしと降る中で、私はわくわくしながら教会へ。こういった教会は入場料をとるものの、実際の教会としても機能しているので、礼拝堂まで行くと厳かな空間が広がっており、とても奇妙な気持ちになる。というか、研究目的の好奇心で来てすいませんぐらいの勢いだ。
私がなんだあの天井画はいつの時代に誰が描いたんだあの壁画はやはり初期ルネサンスのとかなんとか考えている隣で、黙して祈る者がいる。場違いとも思える私。でも研究のためなのでハァハァさせてください……。という葛藤の中礼拝堂をうろついた。
また、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会は回廊がとても素敵なところだった。中庭のような空間の周りをぐるっと四方が囲む廊下になっているのだ。中庭に面する方にはもちろん壁はなく、私はたぶん生まれて初めて回廊萌えした。
今更だけど私は建築萌えするたぐいの人間なのだ。素敵な建物を見るとすごく胸がときめくしその建築物になりたいくらいだ。
そしていつもの記憶力のなさで大変申し訳ないのだが、サンタ・クローチェ教会にも行ったかもしれないがサンタ・マリア・ノヴェッラ教会とごっちゃになっている。
でも正面の写真を見るとすごく見覚えがあるので、たぶん入場しただろう。ちなみにサンタ・クローチェ教会もファサードがめちゃくちゃかわいい。
またしても今更だが、実は私のイタリア旅行の写真のデータはごくわずかな一部除き、消えてしまった。
写真のデータさえ残っていればこのように「覚えていない」を連呼せずに済んだのだが。まあ、写真があっても覚えていない可能性も高いが。本当にひどいエッセイと書き手である。
雨がやんできた頃、アカデミア美術館に行った。
ヴェネツィアにもアカデミア美術館はあるが別物で、むしろフィレンツェのアカデミア美術館の方が有名である。それというのも、例のミケランジェロ・ブオナローティとかいう彫刻家の作った全裸男の彫刻があるからだ。シニョーリア広場にもあったダヴィデ像の本物の方が建物の中にしまってある。
アカデミア美術館は行列が出来ていて、入るのに少し時間がかかった気がする。あと、たどり着くのにも時間がかかった。近くにヴェッキオ宮殿にウフィツィ美術館にヴェッキオ橋があるシニョーリア広場とは違い、広場からいくらか離れた場所にあったからだ。とどのつまり、いつもの迷子でもある。ただ逆に考えるとフィレンツェはわりと近場でいろんなものが見れるのだから、方向音痴向けでもある。
フィレンツェのアカデミア美術館はそれはそれで素晴らしかったが、好みの問題で私はヴェネツィアのアカデミア美術館の方が好きだった。フィレンツェの画家も好きなのだが、私にはやはりヴェネツィアなのだ。
とはいうものの、やはりフィレンツェは美しい。町自体がとてもとてもきれいなのだ。そしてなんだかんだいいつつフィレンツェの画家たちも大好きだ。やはり私には選べない。どこの美女も愛している、軟派な恋多き男のように。
フィレンツェもまだまだ見足りないぐらいの素晴らしい名所があるので、二日間など風の前の塵に等しい短さだった。