表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

5、列車にて

 私にイタリア行きをそそのかした者たちがいた。彼女たちは私と同じくイタリア美術史を学んでおり、しかし私より遥かに旅慣れていた。

 その者たちは二人おり、AとBとするが、私を含め三人共同じイタリアに行くというのに三人で一緒に行こう、なんて話にはならなかった。いろいろな理由があった。たとえばAは私よりもかなり長い間イタリア滞在をしていた。現地で再会した時にはイタリア語もペラペラになっていたAは、もともと英語もペラペラだった。うらやましい限りである。勉強しろ私。

 同じイタリアにいるのに別行動、なんなら会う事もないんじゃと思われた我々だったが、なんとかローマで会える事になった。

 そんなローマを目指して、私はヴェネツィアを経った。


 今回はローマの話というより電車の話を先にしようと思う。

 ローマ行きには電車を使った。私のイタリア国内移動は電車ばかりだった。

 電車での旅はたいていの場合快適だった。

 だが当然、海外旅行素人かつヘタレには、例のヘタレエピソードがあるので披露しよう。


 イタリアの電車にはどうも、座席指定があるらしい。日本の新幹線にあたるような電車に乗った時の事だ。たぶん、ローマ行きの電車ではなかったとは思うが電車の話なのでここでしてみる。

 例によって自動券売機にてチケットを買った私は、印刷されたチケットに書いてある自分の座席を探して車内をうろついていた。

 たぶんここだと思った場所には、他の誰かが座っていた。私は二度ほど確認した。

 うん、私の席だ。それか私が勘違いしていて自分の席を探せないのだ。

 自由席なら勝手に空いている席に座れるのだが、一応は座席指定である。なおかつ、イタリアの列車では車掌さんがチケットを車内で拝見しにやって来る。その時に駅でのチケット刻印がないと罰金らしい(以前書いた改札代わりの機械にチケットをぶっこむやつだ)。

 これって、指定席以外に座ったら怒られるパターンかな。私の中に、席間違えてませんかと、座っている人に声をかける語学力も勇気もなかった(これを書くのいい加減本気で悲しくなってきた)。


 さて私はどこに座ったでしょう。

 正解は、年末年始の帰省ラッシュで自由席も満席の時に行くようなデッキでーす……。でもこの時デッキには誰もいなかった。

 ずっと立ってると疲れるので、時々デッキに座りましたよハハハ……。座っていると車掌さんがチケット拝見に来ましたけど「なんだこのヒッピー」みたいな顔をされた気がする。気のせい。

 もちろん泣いたよね。悲しくてね。


 とはいえその時以外はちゃんと席に座る事が出来た。今思うと、座席指定なんてチケット上だけの仮のもので、たいした効力もないものだったのかもしれない。

 ローカル線みたいな電車に乗った時には、一駅分だったせいか車掌さんがチケットを見にくる事はなかったし、座席指定なんてないからこそ、私の席に座っていた他人がいたのかもしれない。私は勝手にどこか別の席に座ればよかったのかもしれない。

 だが私は初めての海外旅行で緊張していて、自分が黙っていればトラブルが回避されるのなら、それでよかったのだ。


 さて、イタリアの電車の話は旅行以前に少し聞いていた。イタリア語の授業の時に、こんな感じであるぞと話してくれた先生がいたのだ。改札がないとかチケットに自分で機械に印をつけなければならないとか、そういう知識もそこで手にした。

 その時の私はまだ、自分がまさか一人でイタリアに行く事になろうとは想像もしていなかった。だが、なにげにその授業の情報が役に立った。何しろ私は旅行のための調べものをあまりしなかったのだから。

 授業で聞いた話にあった通り、イタリアの電車はとにかく遅れる。そして自分の乗りたい電車がどこのホームに来るのか、すぐには分からず毎回変わる。電車到着数分前に何番ホームか教えてくるのだ。もう少し早い時もあるが。

 定刻に着く事を至上とし、少しでも遅れが出れば駅構内で案内をしまくる東京の鉄道とは大違いだ。まあ東京では遅延や運休など珍しくもないのだが。特に遅延は毎日どこかで発生している。

 しかし東京と言わず日本ではホームの番号などいつも決まっているだろう。

 ホームの問題は、いつも決まったところから発車する日本に慣れていると、どうしていつも変わっちゃうのか不思議ではあるが、理由は知らない。そのうち調べてみたいとは思う。

 そんなイタリアの電車事情だが、私はこの時の旅では大幅な出発時刻の遅れで困った事はなかったし、ローマ行き電車が何番ホームかなのか、ずっと掲示板を見ていれば済む事だった。どうせ、ホームが何番か発表されてからホームに行っても、電車はすぐに来ない。


 よく知られている事かもしれないが、日本の駅構内アナウンスとは違い、イタリアの駅は静かだ。というか日本はお節介過ぎると思う。

 電車内や駅構内にも東京の電車にありがちな、おびただしいまでの広告はない。日本に帰ってから思ったのは日本の情報の多さ。正直鬱陶しい。美観も損ねる。でも地元の田舎に行ったらわりと広告が少なめだったので、たぶん東京が消費者にがっつき過ぎなのである。


 少し話が逸れたので、電車の話はこのぐらいにしておく。

 ヴェネツィアからローマへは新幹線みたいな電車に乗って行った。四時間ぐらいかかった。

 ヴェネツィアでは雨が降ったり曇りがちだったりしたが、ローマにおりたった時には、青空だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ