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《the mythical world online》  作者: 竜ヶ水 千尋
2.Boy Meets Lady
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Quest.6 「Boy Meets Lady(2)」

 ◆《狭間の海》 ライカ


 「ライカさん、出来ればお礼をさせて下さい」


 ユイと名乗る女性はそう申し出てきた。

 いや、お礼なんて…とも思ったが、この手の人はきっと断ると負い目を感じるタイプだな。

 申し出は受けておこう。


 「ああ、分かった。でも少し休ませてくれ。HP3割以下(HPペナ中)なんで、視界がぼやけてるんだ」

 「そんなにダメージを!?」

 「ほら、見れば分かると思うけど《創世神(ビギナー)の服》しか装備してないから。だから思いの外ダメージ喰らってるんだよ。そっちも同じじゃないのか?」

 「私もダメージは負っていますが…、その…、いち早くライカさんが助けてくれたおかげでそこまでは…」


 と言って、ユイは気後れしている様だ。

 あー…しまった、余計なこと言っちまった。

 少々気まずい。


 「そっちが無事ならそれで良いさ。それに、色々やるにはスキルのチェックなんかの下準備が必要だって体験出来たんで満足だよ」


 そう笑いながら言って、ユイを何とか落ち着かせた。


 「それに、もうHP3割以上(HPペナ無し)まで回復し、問題なく動ける。気にする必要性はないさ」


 そう言って立ち上がって見せた。

 大ダメージを受けていたが、それなりに早く回復出来たな…。

 何かスキルも上がってるのか…?


 「それじゃあ行こうぜ?」

 「はい」


 そう言って、俺達は《狭間の海》を後にした。



 ◆《時空の狭間》 ライカ



 「それでは、助けて頂きありがとうございました」


 そう言ってユイが頭を下げてきた。

 あの後、俺達は《時空の狭間》まで戻り、休憩用に設けられていた簡易テーブルに腰掛けていた。

 目の前には簡単なクッキーとオレンジジュースがあるが、これはユイのお礼の品だ。

 ちょうど時間的には15時頃で丁度良かったというのもあるが、色々露天を覗いてみて安そうだったのがこの2つだったのだ。

 クッキーとオレンジジュースで5ジュエル、2人合わせても10ジュエルしかしないしな。

 幾らお礼ってたって、同じ初心者相手に早々高い物を貰う気にはならないし、端からお礼を期待していた訳じゃないんだ。

 これぐらいで丁度良い。


 「いや、謝らなくて構わない。俺が好きでやったことだから。気持ちはこの勘定分、ってことで」


 そう言った所でオレンジジュースを一口飲む。

 うむ、紛う事なきオレンジジュースだ。

 味覚の再現も良く出来てるな。

 …ん?

 そういやあの露店、どうやって出すんだ?

 アレもスキルに関係してるんだろうか…?


 「そういや気になってたんだけど…」

 「はい?」

 「ユイは何故あそこに?」


 少し思考が脇道に逸れたが、気になった点を質問してみた。

 あんなモンスターがいるとは知らなかったからアレだが、あそこは一般スキルを上げるようなエリアだ。

 それに水中ってことは…、水泳に関するスキル上げでもやってたんだろうか?


 「ああ…、実は私、今日が初日なんです。とりあえず色んな所を回ってみようと思って…。ライカさんは?」

 「ああ、俺と同じか。俺も色んな所を回ってみようと思って行ってみたんだよ」


 そういうと、ユイがちょっと驚いた様な顔をしてみせた。


 「ライカさんも《探索者(シーカー)》なんですか?」

 「《探索者》?」

 「ええ、私は《探索者》を目指しています。…って、ライカさん。もしかして先輩プレイヤーからチュートリアル受けてないんですか?」

 「え、チュートリアルあるのか!?」


 あ、そういや創世神が何か言ってたな。

 他のプレイヤーから教えて貰え、とか何とか…。

 っと、今の大声でユイが驚いてるからフォローしておかないと。


 「実は俺…、普段ゲームなんて全くやらないんだ。《オネイロス》に興味持ってたから、《the mythical world online》を始めた様なモンなんだよ。それで早速やり始めたのは良いんだけど《起源》でチュートリアルが無いってらしき話し聞いて、とりあえず物は試しに、って感じで回ってたんだ」

 「なるほど…。アレ、分かり難いですからね…。じゃあ、私が知ってる先輩プレイヤーを紹介します。少々待っていて下さい」

 そう言ってユイがコマンド操作をして何やら話し始めた。

 声が聞こえないって事は、ウィスパーチャットか?


 「ライカさん、知り合いと連絡がつきました。丁度他の初心者にレクチャーしようとしてたみたいなので、今から合流すればチュートリアル受けられますけど…、どうします?」

 「是非お願いします」


 いや、ホントゲーム知識がサッパリだからな。

 チュートリアル受けられるんだったら、サッサと受けておきたい。


 「フフッ、分かりました。それじゃあ知り合いの所まで案内しますね」

 「よろしくお願いします」

 「いえいえ、これで恩返しが出来ますから」


 そう言って、ユイは微笑んだのだった。

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