Quest.2 「アバター作成」
◆《ダイブスペース》 紅月天華
気が付くと、そこはただ広く白いだけの空間の様だった。
ただ違うのは、自分の視界の右上の方に現在の時刻だと思われる時間が表示されている。
「此処が《オネイロス》の中か…」
先ず間違いなく、僕の部屋では無いことだけは確かだ。
あ、そう言えば…確か取説に《オネイロス》のダイブスペースの設定項目があったハズだ。
サッサと《the mythical world online》を始めたくてパーソナルデータの入力しかしてなかったから、初期設定のままなんだろう。
余りに空虚過ぎる…、ゲームを始める前に設定を弄くっておくべきかな。
そんな事を思いつつ、早速取説に書かれてあったコマンドワードを呟く。
「設定項目:ダイブスペース」
そう呟くと、少し時間をずらしながら目の前に幾つもの写真の様な物が現れた。
なるほど…、この中から好きな物を選べって事なのか。
僕はそれらを見比べ合わせ、少し悩んだ末に1つの風景を選んだ。
そうするとただ広く白いだけの空間が、直ぐさまが切り変わっていく。
目の前に現れたのは、巨大な図書館の風景だ。
僕に取っては慣れ親しんだ風景。
擬似的にでも良いから体を動かしたいと言っても、やっぱりこの風景が一番落ち着く。
体を動かすのはゲーム内だけで良いしね。
それじゃあダイブスペースの設定も終わったし、早速ゲームを始めよう。
「《the mythical world online》」
そう呟くと、幾つもある書棚の1つから、一冊の『本』が光を放ちながら飛んでくる。
目の前でゆっくりと浮遊するそれを手に取ってみると、その本のタイトルは《the mythical world online》。
なるほど、ダイブスペースが図書館の設定だけにゲームタイトルは本の形を取ってるんだ。
それにしても本が飛んでくるって…、まぁこれはファンタジー要素を混ぜることで現実世界と区別させるようにしてるのかな?
しかし自分で選んだにせよ、神話の世界をイメージしたゲームに『本』が割り当てるのは良い選択だったね。
これだけでもテンションはうなぎ上りだ。
何にせよ、これで準備は全て完了。
そう思い、僕は《the mythical world online》という本を開くのだった。
◆《???》 紅月天華
本を開くと、また僕は別の場所に居た。
何も無い暗闇だけの世界。
足下だけはしっかりしているみたいだが、上下左右の感覚がイマイチ掴めない。
「ここが《the mythical world online》…?」
「それは間違いではないが、正確でもない。若人よ、此処は《起源》だ」
「誰だ!?」
そう叫ぶと僕は身構えた。
突然何も無いところから声が掛けられたからだ。
「そう慌てるな、若人よ…。今、姿を表す」
そう声が聞こえると、新たに1つの『光』が生まれた。
宙を浮遊するそれは、暖かくも力強い光だ。
どうやら声の主はこの光そのものらしい。
「実体がない?」
「それは違うぞ、若人よ。我は人によって無限の姿形を持つ存在。定まった姿を取れば、その者にその姿形を印象づける。故に、敢えてこの様な姿をしているに過ぎない」
何ともファジーな答え方をする存在だな。
多分NPCなのは間違いないとして、何の役割を担っているのだろうか?
「なら別に構わないけど…、その『若人』って呼び方は止めて貰えないかな?」
「ならば我に『名』と『体』を示すが良い。名は体を表すが故に」
そう答えが返ってくると目の前にポップアップウィンドウが現れた。
覗いてみるとウィンドウに表示されているのは『名前』と『容姿作成』の2項目。
そうか、この空間やNPCとの問答はゲーム開始のためのプレイヤー名とアバター作成のための物か。
そうと分かれば後は早い。
――数分後。
「よし、こんなものかな?」
僕は作成項目を一通り入力し終え、光に向かって名を告げる。
「俺の名は《ライカ》だ」
そう言うと僕の姿は光に包まれ、アバターが顕わになる。
顕れたのは、銀髪、赤目の眉目秀麗な青年の姿。
顔は《オネイロス》にスキャニングされた物を多少弄くり、銀髪、赤目に変えた。
白子、アルビノという奴だ。
それ例外は極端に変えてはおらず、精々リアルの顔立ちを暈かす程度に留めた。
モデリングの注意事項に『極端にモデリングは変えない様に』との注意書きが有ったからだ。
要するに、殆ど素に近い状態だ。
見る人が見れば現実世界でも僕だって分かるだろうけど…、そこは髪や瞳の色がカバーしてくれると思う。
名前は一応念のため、天華から捩って天火。
天火は落雷で起こる天災を意味するらしいから、そこから発想して雷による火災で雷火にした。
それに元々、僕の名は天火だったらしい。
以前父さん達から聞いた話しだと、華僑である母方が生まれたばかりの僕を易占で見たところ、『天火同人』と出た。
これは交際の卦で、目的を同じくする同志の友情を意味したり、友愛の集りのイメージらしいんだよね。
それに天と火は共に昇るイメージで決して悪い物でないし、派手な人生を送る暗示らしい。
それで天火にしようとしたところ、今度は日本人である父方から日本では余り馴染みがない上に落雷で起こる天災を意味するからイメージが悪いと反対されたらしい。
もうこれに至っては文化や風習の違いとしか言いようがない。
そこで揉めないように話し合った結果、派手な人生に華やかさを持たせよう、そんな意味を込めて火を華に当て変えたのが僕の名の由来。
まぁプレイヤー名としては、丁度良い感じになったかな?
「…ライカか、良き名だ。それでは我も答えねばなるまい。我は全ての始まりを司りし者、全ての万物を生みし者。故に我はこう呼ばれる。創世神と」
そう光は答えた。
ダイブスペースは様々なモノがあります。
基本の物以外にもゲームに付いてきたりと色々。
珍しい物だとFPS系のゲームには、武器庫で壁に掛けられている銃器がゲームタイトルとか。
そこら辺もその内出していけたらと思います