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長い間更新できず申し訳ございませんでした。
「美琴は俺が居ないとダメだな!」
そんなことを言う『誰か』。
顔も知っている、声も何回も聞いたことがある。
ただ思い出せないのだ。名前だけが。
「そんなことないし」
「しょうがないから、俺が親友になってやるよ!」
ああ、何処だったか。同じことを、昔言われたことがある。
私は、笑ってこういった。
「ははっ、親友なんてそう簡単になれるもんじゃないよ」
「でも――」
「――――となら、なってもいいかもね」
ああ、名前の部分だけ雑音が混じって聞こえないや。
何故だろうか、とても大切な人だったはずなのに――
「じゃあ俺らは今日から親友な!」
「はいはい、改めてよろしくねー」
「私の大事な親友さん」
*
「夢、か」
いやー、あるあるですよねこういうのって。
雰囲気ぶち壊しなのは自分でも気づいてるんだけどね、まあいいじゃないの。
「覚えてるよ」
夢の中では何故か名前が出てこなかったけど、私はそんな薄情な人間じゃないからね。
親友の名前と約束事くらい覚えてますぜ。
確か……
「美琴ー? 起きたの? 早くお顔洗って、ご飯できてるわよー」
「あ、うん! 今行く!」
あれ、さっき考えてたことなんだっけ。
私もボケてきたか……前世と合わせてもまだ23年しか生きてないんだけどね。あ、昨日誕生日だったから24年か。
なんか前世のことだったと思うんだけどねー……
やばい、本気で私の記憶力を疑うわ。
何のことかわかったら多分思い出せると思うんだけどねぇ。
「美琴、ご飯冷めちゃうわよ!」
「はーい!」
ああそうだ、親友の名前ね。
幸太。田辺幸太。
馬鹿だけどまっすぐで、私の親友。私の一番、守りたかった人。
いや、あいつのことだからもう私のこと忘れてるんだろうけどね。
「……会いたいなぁ」
「美琴ー!早くきなさーい!」
こっちにも雰囲気ぶち壊しの人がいたか。まあ行かなかった私も私だけど。
さてと、今日も夢の幼女生活をエンジョイしますかね。
*
――――時は過ぎ、九月。
始業式やらなんやらがあり、そして運動会の練習もあるという面倒な季節だ。
私の前世の幼稚園では確か春だったような気がするけど、通っている幼稚園のよって時期が違うらしい。
今更運動会だとか、面倒以外の何者でもないんだけど、まあ一応設定上は幼稚園児。きゃあきゃあとはしゃいでいるようにしないとな。
「みこと、みこと!運動会、がんばろーな!」
「……え、あ、うん!」
そういえば、始業式が始まってから席替えをしたんだよね。見事にマイエンジェルである哉斗と隣になりましたよ、毎日が幸せに満ち溢れているね!
まあそんなことは置いといて、だ。
「運動会……去年のような失敗は許されない……」
一年前、年少での始めての運動会。
年少の子達でかけっこをしたんだけど、油断していたことがあったんだよね。
驚かれるかもしれないけど、私は前世は陸上部。親から「お願いだから部活だけは運動系か吹奏楽にして」という引きこもるな発言をされたため、じゃあ陸上が一番マシだという考えで入った。
種目は短距離。高校はそこそこの強豪だったため、練習もハードで、走り方なども指導された。
お察しの方もいるだろう。そうですよ、私は幼稚園児にしてはかなり速いタイムを出したんですよ。
まあ小学生やらと比べれば遅いけれど、無論雑魚……じゃない、一般的な幼稚園児の中ではぶっちぎりのトップ。余裕でしたわ、うふふふふ。
先生や親からはすごいと感心され、一緒に走った子からは涙目になられ……と、最悪だったわけですよ。
いやあ、力を持ちすぎるのも罪だね!……すんません調子乗りました。
ということで、だ。
去年のように本気で走ってもいけないし、手を抜きすぎてもいけない。そこそこのタイムで走りきらねばならんのですよ。小学校入ったら普通に走りますけどね。
「哉斗、かけっこがんばろーね!」
「みこと速いからなー、でも負けない!」
ふはははは、哉斗なんざに抜かせられるわけがないだろう?そう思ったけど口に出さなかった私はすごいと思います。
運動会の二日ほど前、跳び箱で足を捻ったのはまた別のお話だったりする。