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八月一日。
今日は、私の誕生日だ。
こっちの世界で、という意味もあるのだが、前の人生もそうだった。
あの時は『誕生日なう。ぼっちなう』と友達にメールしていたけど、結局誰も家に来て「おめでとう」って言ってくれなかったっけ。……父さんも。
んで、こっちに転生してきたって訳かぁ。
かなりすごい人生だよな、うん。
そして今。
なぜか、兄さんが私の上に乗っかってます。
朝起きたらこの状況って、中々怖いよ? 吃驚だよ? ホント何やってんだよって感じだ。
「おはようみこと、よく眠れた?」
「いや、なんで兄さんが乗って――」
「よく眠れた?」
「……ハイ」
なんだろう、兄さんは魔王になるのかな?
あの威圧はないわー、シスコンならもう少し気遣ってくれよ、可愛いからいいけど。
いや、今は可愛いより格好いいのほうかな。小一でこの顔はずるくないですか?
そんなことを考えているうちに、兄さんは降りてくれた。
「ねえ、今日はみことの誕生日でしょ? 一緒にプレゼント買いにいこう」
「え……でも、お金……」
「お小遣いためてあるし、みことが絶対喜ぶものにしたいから!」
……前言撤回、この子は可愛い。
無言で抱きつきました。少しの照れも見せず、優しく抱きしめてくれる兄さんはとても格好良かったです。もうこのまま頭撫でようかな、そうしよう。
頭に手を伸ばしたところで、私は正気に戻った。
「みこと、今日は甘えん坊さんだね。いつもこんなだったらもっといいのに」
「それは出来ない相談かな。着替えるからちょっと待ってね」
床に正座してる兄さんを追っ払って着替える。
今日は水色のワンピースだ。前世では生足なんざさらしたくも無かったけど。
ドアの前にいる兄さんに声をかけ、鞄を持っていざ出発!
「「行ってきまーすっ!」」
誘拐の心配とかないのか、って言うツッコミは置いといて。
我が天使兄さんと買い物に出かけた。
*
「わぁぁ……いいの?」
「うん! お金足りるし!」
私が選んだのは、きれいな髪留めだ。
店を出て早速つけてみると、兄さんが「可愛い」といってくれた。なんか嬉しいな。
……あれ、私もブラコン化してきてる?
「こつこつお手伝いして貯めたお金、他の事に使わなくてよかったぁ」
「え、お小遣いって月何円とじゃないの?」
「ううん、洗濯物たたみとかしてお金もらうよ」
皆さん聞きました? この言葉!
そこそこ金持ちだから、お小遣いもいっぱいあげてるんだと思ってたけど……
うちの家はそう言うのに厳しいのね、知らなかった。
「ありがとう! 大事にするね!」
「えへへ、喜んでくれてよかった!」
帰りは、手をつないで歩いた。
そういえば、誕生日かぁ……
「元気にしてるかな、あいつ」
「どうしたの?」
「ううん! なんでもない!」
そうだよ、今は今だ。
今笑ってて、これ以上に無いくらい幸せで。
それでいいじゃないか。
「よーし、家まで競走だ!」
「うん!」
今楽しければ、それでいい。
シリアスな雰囲気とか似合わないしね!
暗い気持ちをかき消すように、笑った。