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「にーさん、年中さんになったの!」
「そっか、おれも小学生になった!」
――――春。
私は幼稚園の年長、兄は小学校一年生になった。
通算すると二十一年か……あれ、向こうの世界で私、死んだことになってんのかな?
まあ、その話は置いといて。やはり、何度経験しても、進級するのは嬉しい。……私が子どもっぽい訳じゃないし。絶対そうだ。
なんにしても、それにはしゃぐ子どもは少なくない。
「みことー!ママが一緒のクラスって言ってた!」
「ホント!?よろしくね!」
「でも『みなづき』と『あがさき』だから席遠い……」
「す、すぐ席替えするよ!」
私の言葉に、一瞬で顔を明るくさせる哉斗。無言で抱きついてやったぜ、小さい子の特権バンザイ!顔を赤くした哉斗も可愛い。そういうシュミの人に連れてかれるぞ。
そういえば、今七時半だよね?なんで哉斗がここにいんの。てか奏也兄さんの殺気がやばい。あっ、これは私の所為か。
急いで哉斗から離れ、兄さんの方へ駆け寄る。……シスコンじゃなければ普通に好きなのに。
「そうやにーさん、一年生おめでとー!」
「ははっ、ありがとう」
なんということでしょう!あんなに殺気だっていた兄さんが、一瞬でデレデレです!
つか一年生おめでとうってなんだ。子どもだし、ちょっとおかしいのは目を瞑ってもらおう。
あ、そうそう。さっきの疑問を、兄さんに問う。
「ねーにーさん、かなとはどーしてここにいるの?」
「ん?それはなぁ、哉斗が朝早くに家に押しかけてきたからだよ」
「そ、そっかー」
な、なんということでしょう!あんなにほのぼのとしていた兄さんが、一瞬で凄い殺気を放っております!
……うん、兄さんに『哉斗』は禁句だ。
自分では気づかないのだろうか、はたまたわざとなのだろうか。……前者であってほしいな。
そんなとき、お母さんがやって来た。
「あらいらっしゃい、哉斗くん。そうそう!美琴に奏也、ビッグニュースよ!」
「なになに!?」
さすが子ども、食いつきが早い。
あ、今は私も子どもか。じゃあ一応、気になってるフリでもしとこう。
「あのね。……実は、赤ちゃん出来ました!」
「へー……ええぇっ!」
「お、おとーと?いもーと?」
「まだわからないの。でも、どっちでも優しくしてあげてね」
ちょっと待て、阿ヶ崎家に新たな兄弟?
あのゲームでは、奏也兄さんは一人っ子。なので、攻略に失敗すると妹的立ち位置で終わるらしい(友人談)。あ、そう考えると、ちょっと間違えても攻略できた私、すごくない?
おっと話がそれた。この世界でのイレギュラー(モブはわかんないけど)は私だけじゃないのか?
……よし、一回状況を整理しよう。
『私転生』→『奏也くんの妹とわかる』→『哉斗くんが家隣と発覚』→『幼稚園に入る』→『年中になる』→『兄弟できる』ね、はいはいわかった。
……って、はぁぁ!?分かるか!
呆然としていると、兄さんに「大丈夫、俺はみことが一番だよ」という意味不明なことを言われた。うざい。
未だ理解できない現状。この先やっていけるかな、って言う思いとは裏腹に、自分より下の子が出来て嬉しい、と感じる。
「名前は?決まった?」
「男の子なら月也、女の子なら美月よ」
月也に美月。どちらにせよ、可愛がるのには変わりない。
まだ見ぬ兄弟を思い浮かべ、はしゃいでしまう。
……兄さんみたいなシスコンにならないように注意しよう。
私は知らない。
生まれてくる子が、兄さんよりもアレな存在になることなんて。
小さい子達の呼ぶ名がひらがななのは仕様です。
美琴は心は大人なので心中のみ漢字表記にしました。