プロローグ
カチカチ、カチカチ。
暗い部屋の中で、ゲーム機の操作音が響く。
「……おし、哉斗くん攻略できた」
心の中でガッツポーズをし、最後の攻略対象のストーリーをしようとしたその瞬間、パラパラと説明書が捲れた。
「あれ……このゲーム、全員攻略したら何かあるんだ……」
ご褒美があったりすると、俄然やる気になる。
私は、最後の攻略対象である奏也くんをものすごいスピードで終わらせた。
……いくつか選択を間違えたが、問題ない。
「なになに?『ストーリーを選択してください』?」
画面を見ると、色々なストーリーが表示されていた。
愛され系が好きな私は、もちろん逆ハーレムを選択。
すると、『名前を入力してください』という文字が、ゲーム画面に浮かんだ。
「えーっと、美琴、っと」
この時私は、大きなミスをしていた。
裏ストーリーの説明に、こう書いてある事に気づいていなかったのだ。
『この裏ストーリーは、たまにこちら側の人間をゲーム内に引き込みます。未だその例は報告されていませんが、貴女様の身に何かございましても、当社は一切責任を負いません』
いや、気づいていても、冗談だと思ってしていただろうが、そこはスルーだ。そして、私の人生は、大きく変わることとなる――……
*
「オンギャー!オンギャー!」
「はいはい、美琴ちゃん、ママでちゅよー」
あれ、何だこれ。
高校生相手に何赤ちゃん言葉使ってんの、と思った。
「ふふ、目は私に似てるわぁ」
「口は俺に似てるなぁ!」
いや、あんたらの子になった記憶は無いんだけども。
そう言おうと声を出したら、また赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
「はいはいよちよち。可愛いでちゅねー」
「う?」
は?と発音したつもりが、赤ちゃん言葉に変換されてしまう。
私を抱いている美人な奥さんは、白い服を着ていた。最後に見たのは、ピカッと光るゲーム画面。
……あれ、これって。
「うぇぇぇ!?」
「あらあら、元気ねぇ」
もしかして、転生しちゃった感じですか。