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絡繰玩具

それいけ! 蒼以ちゃん

作者: カラクリカラクリ


蒼以ちゃんは、この村で一番かわいい人間の女の子。

何しろ、人間の女の子は蒼以ちゃん一人きりなので、モテモテです。


「蒼以ちゃん、俺とデートしようぜー」


やってきたのは、狼男君。

昼間だから、普通の人間らしい恰好をしています。


「いやいや、オレとだよ」

「違うよ。僕とだよ!」


その後を押しのけるようにやってきたのは、木乃伊男君と河童君です。


「蒼以ちゃん、オレとデートしてくれたら、もれなくオレの素顔見せちゃうよ」


はいはいと威勢よく手を上げたのは木乃伊男君。

途端に、河童君に水鉄砲を食らいました。


「何言ってんだよ。包帯の下は透明のくせに! 蒼以ちゃん!僕とデートしてくれたら、尻子玉ひとつプレゼントしてもいいよ!」


河童君が腰に下げた袋から大事そうに取り出した尻子玉を見て、狼男君がさも呆れたというように鼻を鳴らします。


「お前こそ何言ってんだ、河童。蒼以ちゃんが尻子玉なんか欲しがるわけないだろ。俺なら、蒼以ちゃんを美味しく食べてあげるから、心配しないで」

「「あんたが一番ダメだろ!!」」


河童君と木乃伊男君から総突っ込みを食らった狼男君は、けれどめげません。

三つ巴の争いは、木乃伊男君の包帯が河童君を捕まえて、河童君のお皿から零れた水が狼男君を濡らし、丸いお皿を見て、狼になってしまった狼男君が木乃伊男君に飛びかかって、もうめちゃめちゃです。

不意ににっこり笑った蒼以ちゃんは、懐から徐に三枚の札を出すと、「封縛」と呟きました。

陰陽師の血を引いている蒼以ちゃんの札は、大変に強力なのです。

意志を持ったように蒼以ちゃんの手を離れた札は、ぺったりと三人の額に張り付いて、途端に三人は雷に撃たれたように、ぴたりと動きを止めました。


「「「あ、蒼以ちゃーん、これ」」」


漸く我に返った三人は、額の札に今にも泣き出しそうです。


「喧嘩でしたら、続きは外でやってくださいね。あぁ、勿論片付けは、三人でやってくださるんですよね?」


三人が恐る恐る見回すと、蒼以ちゃんが大事に育てていた花は踏みつぶされて、綺麗に掃除されていた部屋の中はまるで嵐が通り過ぎたようでした。

蒼以ちゃんはにこにこと笑っていますが、その背後に見えるのは不動明王でしょうか。

九字を切られては堪りません。

三人はすっかり小さくなって頷きました。

蒼以ちゃんが札を取ってくれたので、それから三人は一日かけて蒼以ちゃんの家を綺麗にしたのです。

結局デートの時間はなくなって、三人はそろってとぼとぼと家に帰るのでした。


すっかり片付いた家で、蒼以ちゃんはにっこり笑ってベッドに入りました。

さて、明日は誰がやってくるのでしょうか。



それはまた、別のお話


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