番外編01:とある影武者と色ボケ王女様
忘れられた頃に番外編です(`・ω・´)
「では、勇者はこのままクラウスに演じてもらう事にして――貴女は私付きの女性騎士になると言うのはどうでしょう?」
「…………………」
オイコラなに言い出すんだこの色ボケちんちくりん姫が―――あの薬師の男じゃないが、ついうっかりそう割り込まなかった俺を誰か褒めてくれ。
俺の名前はクラウス。
つい先日までそこでちんちくりん姫と盛り上がってる勇者の影武者を務めていた。
―――ついでに言うと、王家に代々隠密として仕える一族の一員でもある。
ことの始まりは一年前。
この国に魔族と称する化け物が突如現れ、国内は一時大混乱に陥った。
目的は異界侵略だかなんだか魔王が言ってたが、今となってはんなこたどうでもいい。
問題は魔王討伐の為に厳選されたメンバーでも中核を担う事になる勇者がとんだ食わせものだったと言う事だ。
「なあ君、僕の影武者にならないか」
勇者が魔王討伐へ出立する数日前の夜こと。
その日俺は王命により勇者の力量を測るとともに浮わついた気持ちを引き締める脅しも兼ねて勇者に奇襲を仕掛け、見事に返り討ちにあってしまった。
その時に言われた台詞がコレだ。
当時自身の世話役だった侍女に化け接近した俺に気付きあっさり無力化した上、襲った侍女が偽者だと看破した勇者は間違いなくその素質を持つ人間として判断するに相応しかった。
が、それが何故影武者などと言う話になるのか。
俺の変装技術を見込んで?なんだそりゃ!
「頼むよ。僕、すごく人見知りなんだ…」
俺を無力化するまでの冷静な表情から一転し必死の形相で頼み込んでくる勇者。
実際はフリだったとは言え、自分の命を狙った刺客相手に一体何がそんなにお前を駆り立てるんだ。
「んなこと言われても俺にも仕事がだな」
「承諾してくれないならこのまま関節外して警備に引き渡す…」
こええよ。
「だーッ!分かったから離せ!!」
「ッシャァア商談成立!!」
――こうして俺は何故か勇者の影武者業を営む事に相成った。
まあ、この時何故勇者があんなに必死だったかは全てが終わった後に明らかになった訳だが。
そこんとこは本編参照と言う事で割愛する。番外編だしサクサク行こうぜ。
あ、ちなみに襲撃した夜の顛末を主に報告したところ一頻り笑われた後に暫く城を離れる事を快諾されてしまった。
ついでに陰ながらちんちくりん姫の護衛もするよう任務を追加された。
相変わらずうちの家業はブラックすぎる。転職したい。
―――などと思うんではなかったと後悔した所でもう遅い。
あのちんちくりん姫が勇者と薬師の男に妙な提案をしたその瞬間、俺の平穏無事な隠密生活は終焉を迎えてしまったのだった。
◆ ◆ ◆
「見て見て、勇者様と王女様よ!王女様キレ~」
「でも後の二人は誰?」
「さあ。でもあの女の人、何処かで見たことあるような……」
どうしてこうなった。
俺in馬車withちんちくりん姫@俺と姫の結婚パレード
つまり今、俺は、何故か隣でノー天気に笑顔を振り撒いているこのちんちくりん姫と結婚し、あまつさえ城下町を馬車でパレードなる羞恥プレイに晒されている。
もう一度言う。どうしてこうなっちまったんだオイ。
職業柄今まで殆ど黒系統の服しか着たことなかったし白い花婿衣装とか死ぬほど似合わねーんですけど!
恥ずかしくて泣ける。
因みに馬車には元勇者とその旦那が同席している。
ちんちくりん姫曰く"親友同士のWウェディング"と言う奴らしい。薬師の男の目が死んでいる。
…まあ、あんだけ抵抗したのに色ボケ二人に押し切られたんだ。
同じく最後まで抵抗した人間として男の気持ちはよく分かる。あと女ってこえぇ。
「でもまさかフェリア様がクラ……いえ、勇者イリアと結婚してしまうとは思いませんでした」
ふと元勇者――今はこのちんちくりん姫の近衛にして親友となった女騎士イリアが切り出した。
普段は騎士服を身に纏い紳士的な振る舞いで城の侍女にギャーギャー騒がれているが、こうして純白の花嫁姿を見ると女なんだなと実感する。
まあ、その隣にいる男の前じゃいつもこっちがおったまげる程に甘えたになってるみたいだがな。爆ぜろ。
「だってこうでもしないと国外に嫁がされそうだったんですもの。流石のイリアも国外まで付いて行くのは難しいでしょう」
「まあ、父や町の皆と会えなくなるのは辛いですし、確かにそうですね……」
民衆ににこやかに手を振りながら会話を続ける二人。
つーか、ちょい待て。
まさか俺の人生はこのちんちくりん姫に初めて出来た"まともな"女友達の為に犠牲となったのか?
こちとら無理矢理表舞台に引っ張り上げられた挙句、家業に支障を来すって実家から勘当されちまったんだぞオイ!
「それにね、………私と彼は幼馴染みなんですよ」
「え!?」
「昔はよく遊んでもらっていたんですよ。ねえ、"シノブ"」
「……その名ではもう呼ばないで下さいと言ってるでしょう、フェリア姫」
久々に本名で呼ばれ思わず動揺する。
そう。ウチの実家は元々極東の島国の出で、それを忘れず誇るためとかなんかそんな理由で本名はそちら風なものを付けるのが代々の習わしなのだ。
…そして、その名を親族以外の者に教えると言う事は、つまり。
――生涯この身を捧げると誓うも同然と言うやつで。
「貴女は王女で俺は影だ。だから二度その名で呼ばないようにと――」
「でも今の貴方は勇者で、私の夫でしょう?」
ゆっくりと落ち着いた声でそう言った彼女は、かつて無邪気に俺を振り回していたあのお姫様のように悪戯に微笑む。
ああ、そう言えばこのちんちくりん姫は勇者一行で癒しの賢者などと呼ばれていたな―――そんな事を俺は今更ながら思い出していた。
「色ボケ姫の力、思い知りました?」
ああくそ完敗だよコンチクショウ―――そう呟けば、懐かしくて愛しくてたまらないあの笑顔でちんちくりん姫は俺に向かってダイブしてくるのだった。
「女ってこえぇ」
奇遇だな薬師、俺もそう思うわマジで。
圧倒的色ボケ力で公開羞恥プレイに晒される野郎二人(^p^)
ちょい間が空いたせいか細かい設定忘れててギャァア。
なんか変なとこあったらすみません。