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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
9/52

入島を拒否された少女

学校の旅行。私立の羽鳥学園は、海外に決まったが、トラブル続きのヤヤには大きな難関があった

 マレーシア群島にある、観光が盛んなアトミックス島の空港ロビーに私立羽鳥ハトリ中学校の生徒達が居た。

「ヤヤさんなかなか出てこないね?」

 エアーナの言葉に良美が頷く。

「飛行機の中でも言ってた。入国審査で必要以上に時間とられる可能性があるって」

「それってヤヤさんの事をこっちの人は知っているって事?」

 エアーナが少し驚き気味に言うと良美が頷く。

「何でも事前に通知しておく必要があるんだって」

 少し引いた顔をしてエアーナが言う。

「入国許可下りるの?」

「それは大丈夫みたい。なんでもかなりの金を積んだ上に外交的圧力かけたらしいから」

 良美があっさり怖い事を言っている間に、較がやってくる。

「事前の入国審査なんて終わってるのに、しつこいんだから」

 珍しく不機嫌な較に、エアーナが引く。

「睡眠不足だからって荒れない」

 良美がフォローを入れる。

 そこに較達のクラスの学級委員の鈴木優子がやってくる。

「白風さん大丈夫?」

 頷く較。

「はい。心配かけてごめんね。ちょっと誤解があったみたいで」

 手を合わせる較に優子はほっとした顔をする。

 その後ろから、クラスメイトで良美の幼馴染で空手仲間の大山オオヤマ 良太リョウタが顔を出して言う。

「にしても情けねーな。何度も海外旅行行ってるのに、入国審査に引っかかるなんてな」

 それに追随する様に、不必要に豪華な髪飾りをした、同じくクラスメイトの鳳凰院ホウオウイン麗子レイコが言う。

「パック旅行だけでは海外に行ったとは言えなくてよ」

 高慢な発言は、あっさり無視されて、こっちは、空港を見て回っていた同じくクラスメイトの緑川ミドリカワ智代トモヨが顔を出して言う。

「でもどんな調査されたか少し、興味があるな」

 そんなありふれた会話に較も顔を綻ばして小声で呟く。

希代子キヨコさんに貸し作る事になっても来て良かったな」



 日本の永田町の国会議事堂の傍にある事務所の奥に一人の女性が居た。

「はい。どうもありがとうございました」

 そう言って電話を切り、肩を軽く回す眼鏡の女性、高峰タカミネ希代子が言う。

「それにしても変わったわね、あの子も。まさか学校の旅行に行く為に、あたしにお願い事するなんて」

 希代子は机の上に飾ってある写真を見る。

 そこには、まだ小さい較と希代子そして、較の母親で、希代子の妹でもある、白風未知子ミチコが写っていた。

「未知子が死んでから、どんどん八刃の色に染まっていくあの子を、あたしは、変えられなかった」

 少し寂しげな顔をするが、直ぐに笑顔になって写真の未知子に報告する。

「ヤヤは、良い親友が出来たわよ。彼女が居る限り、きっと幸せになれる筈よ」

 そこに電話がなり希代子は眉間に皺を作りながら言う。

「本当に八刃って揉め事ばかり起こすんだから」

 そう言って電話に出る希代子。

 彼女は、白風の長で、義理の弟の焔を後ろ盾に八刃と他の組織との折衝を行う仕事をやっていた。

 今回の較の入国も、相手の国から猛烈な反発を受けた。

 山を消し飛ばしてからまだ一ヶ月も経っていない以上、あまり無理なごり押しが出来ないのだが、姪である較に頭を下げられたので、較の資産を使って、金に物を言わせるやり方で入国を許諾させたのだ。

 そんな事実からも解るように彼女はかなりのやり手で弁護士の国家資格も持っている。

 後ろ盾が強力な事と、八刃の人間だったらたいてい一度はお世話になっている為、戦闘能力は皆無だが、八刃での発言力は長に準ずる物があるスーパーウーマンである。

 希代子の仕事は、今日も続く。



 アトミックス島の警察署では、緊張が高まっていた。

 元々観光を主産業としていたアトミックス島では、警察には、かなりの予算が当てられていたが、今回は更なる追加予算が投入されて、近隣の島の警察まで助人に呼び出された。

「署長、米国大統領でも来たんですか?」

 署員の言葉に署長は重苦しい雰囲気の中、説明を始める。

「相手は、日本の女学生だ。年は十四歳。一応、犯罪歴無しだ」

 較の写真が配られ、あまりもの普通さに戸惑う署員達。

「この少女は、実はテロリストの疑いがあるのですか?」

 署長は首を横に振る言う。

「彼女が特殊な組織に所属しているが、その組織がテロに関っている事は無い」

 更に困惑する署員達に新たな資料が配布される。

 それを見た時、署員達は笑った。

「署長冗談は止めて下さいよ。なんですか、三百万ドルの賞金がかかっていて、裏のバトルで知らないものが居ないと言われる化け物だなんて、どう考えても嘘でしょ?」

 署員達も頷きあうが、署長は青褪めた表情で言う。

「それだけで済めば良かったな。未確認情報だが、その少女は、生身で山一つ消滅させたらしい」

 大爆笑をする署員達。

「もう、嘘もそこまで行けば凄いですね!」

 暫く、爆笑を続ける署員達を黙って見る署長。

 笑いが静まった後、署長が言う。

「信じなくても構わない。ただ、お前達の仕事は、その少女とその少女の関係者が間違ってもこの島の中でトラブルに巻き込まれない様にする事だ」

 国際都市シンガポールの警察からアドバイザーとして呼ばれた、ミート=ミルミシーがタバコをくわえながら手を上げる。

「つまり、俺達が呼ばれたのは、金余りの日本人の護衛の為って事ですか?」

 再び首を横に振り署長。

「護るのでは無い。関らせない様にするんだ。万が一関らせると大事になる。下手すればこの島一つ消し飛ばしかねない化け物なんだ」

 署長の切羽詰った表情に署員達が息を飲む。

「この島の未来を護る為に、死力を尽くせ!」

 署長の鬼気迫る言葉に押し出される署員達を見送りながらミートが言う。

「少し調べて見る必要があるな」



「この島って結構都会的だね?」

 智代の言葉に較が言う。

「この島はこれといった産業が無かったからね。近隣の島に無い、近代的な施設を売りにして、快適さを追求してるの。治安にもかなり力入れてる。だから、学校も有名なグアムより、近代化されて安全なこの島を選んだって訳だよ」

「でも、折角南の島に来て、コンビニとかあるのは興ざめだよ」

 良美の言葉に、頷く智代とエアーナ。

「学校の旅行なんですから安全が一番大切です。警察官がこんなに居る島では、犯罪も起こりません」

 優子が、百mに一人は居る警察官の一人を指差す。

 良美が較を見る。

「あれってもしかしてさー」

 較は近くのみやげ物売り場を指差して言う。

「ほら、あっちに面白いもの売ってるよ!」

「本当?」

 智代があっさり乗り、話しが有耶無耶になった。



 較達が現地では高級に分類されるホテルの中でパジャマパーティーをしている頃、ミートは、一階下の部屋で、電話を受けていた。

「それじゃあ、この情報は正しいのか?」

『ああ、裏の世界ではかなりメジャーな奴だ。賞金額がかかってる事で解るように、かなりうらみを買ってる。犯罪組織を幾つも潰しているしな』

 電話先の同僚の言葉にミートは思案して言う。

「裏がある可能性はあるか?」

『難しいな、その少女が所属している『八刃』と言う組織は、国連にも強い影響力を持っている。同時にかなりの制限を受けても居るらしい。上位者の入国出国に関しては、国連の承認が必要だって話だ。それだけ少数でもパワーバランスに影響を与えられる存在だ。そんな娘が単なる旅行でその島に行ったと言うのは少し信じられないな』

 ミートも頷く。

「なにか解ったらまた連絡くれ」

 電話を切りミートが上を見る。

「俺の見る限りは単なるガキなんだがな」

 その時、無線機が鳴る。

「なんだ?」

 無線機の向うから、現地警官の声が流れてくる。

『監視対象が、ホテルを出ます』

「解った。直ぐ合流する」

 無線機を切り、上着を持って部屋を出るミート。

「こんな時間に何の用だ?」



「それじゃあ、ツバキちゃんと仲良くするんだよ」

 衛星で経由される高性能携帯電話で家の小較におやすみの電話を入れる較。

『うん。おやすみなさい』

 小較が楽しそうな声での答えを聞いて、笑顔になった較が言う。

「おやすみなさい」

 携帯電話を切る較。

「小較は、寂しがってなかった?」

 一緒に買い物に出た良美が言うと較が笑顔で答える。

「近い年齢で、事情を話せる友達ってあんまり居ないから、ツバキちゃんが泊まりに来たのが楽しいみたいだよ」

「そんなもんだな。それでどうするんだ?」

 良美の言葉に、較が言う。

「旅行中にずっとつきまとわれるのも面倒だからね」

 較は建物の影に向かって言う。

「今すぐ逃げ出せば見逃すよ」

 その言葉に、銃器で武装した数人の男達が出てくる。

「誰が逃げるかよ! こんなチャンスを逃してたまるか!」

 拳銃を較に向ける馬鹿な男。

 較は大きく溜息を吐く。

「他の連中も同じ?」

 答えの代わりに、手に持った武器を較に向ける襲撃者達。

 較は無造作に足を進める。

「死ね!」

 銃弾が較に向かう。

『アテナ』

 較に銃弾が直撃した。

 しかし、それだけだった。

 襲撃者達が、目の前の現実を否定するように、銃を連射するが、その全てが、較に直撃するが、弾かれる。

 較はゆっくりとした歩みで、一番最初に撃ってきた男に近付き、その肩に手を置く。

『コカトリス』

 その一撃でその男は吹っ飛び、地面でのたうち舞う。

 別の襲撃者に近付く較。

 必死に銃を打ち続けるが、それは較の体を傷つける事は無かった。

『コカトリス』

 二人目の犠牲者が出た所で、襲撃者の大半が逃げた。

 そして残ったうちの一人が、良美を人質にしようと近付くと良美が一言。

「最悪な選択だよ」

 較が手を振るう。

『ヘルコンドル』

 人質をとろうとした男の片足が切断されて、倒れる。

 較が近付くと冷たい視線で終わりを告げる。

『フェニックステール』

 較が手を振るうと炎が生まれて、傷口を焼き、出血を抑える。

 その時点で残った襲撃者も逃げ出した、そして二度と襲おうと思わないだろう、人の外にいる化け物のことは。

「ヤヤ、ジュースを飲みたいから、コンビニに行こう」

 較は頷き、自分の監視をしていた警察に言う。

「完全な正当防衛だよね? 後始末はお願いね」

 そのまま良美と二人で、ちかくのコンビニに向かう較であった。



 救急車とパトカーが忙しく行き交う中、ミートが恐怖に震えていた。

「冗談じゃない。本気で人間をやめてるぞ」

 報告資料の中に何度も出てきた化け物という言葉もミートは話半分で受け止めていた。

 外見と違って香港映画みたいな戦闘能力を持っているレベルと判断していたのだ。

「あれは、香港映画どころじゃない! ハリウッド映画だ!」

 同じ様に監視していた警官が恐る恐るミートに言う。

「これってトラブルの元になりますかね?」

 この惨事を起こした人間への恐怖に顔を真っ青にした質問にミートが言う。

「正当防衛だって確認して、こっちに後始末を頼んだんだ、大して気にもしてない筈だから安心しろ!」

 安堵の息を吐き、その場を離れる警官を見ながらミートが呟く。

「あいつらは、しばらく、家から出てこないな」

 ミートの予想は当たり、翌日、この惨事の監視をしていた警察官が全員急病で仕事を休んだ。



「プラタ=ブラッドと言います。本日はよろしくお願いします」

 較達の班のガイドは意外と綺麗な日本語を使う、較たちより二歳年上の現地の少女であった。

「バイト?」

 智代の言葉にプラタが首を振る。

「違います。学校には行っていません。この島では日本で言うところの小学校を出た後、仕事につきます」

「そうなの」

 ばつがわるそうな顔をする智代をフォローする様に較が言う。

「日本語上手だけど、独学なの?」

 プラタが頷く。

「この島は、観光しかないのです。ですから、日本語と英語を一生懸命勉強しました。今は、フランス語とドイツ語を習っています」

「凄いなー。あたしは学校で習っても英語は駄目だ」

 良美の言葉に少し寂しそうな顔をしてプラタが言う。

「暮らしていくためですから」

 重くなる空気をかえるため、エアーナが言う。

「とにかく、観光にいきましょ!」

「はい。最初は島歴史館でよろしいですね?」

 プラタの言葉に、嫌そうな顔をする良美と智代。

「そこ飛ばしてもよくないか?」

「そうだよね、折角の旅行なんだから、もっと楽しいところ行こうよ」

 困った顔をするプラタだったが、優子が二人の前に仁王立ちして言う。

「あたしが作った計画に問題があると言うのですか?」

 観光計画を全て優子と較に押し付けた良美と智代は何も言えなくなる。

(エアーナは、転校生で、雑用があったのでリクエストをあげただけ)

「それではお願いします」

 頭を下げる優子にプラタは恐縮して言う。

「頭を上げて下さい。皆様は、お客様なのですから」

 優子は引かない。

「お金を払ってるからと相手の仕事に感謝をしないのは間違いです。お金払っていても、自分達の為に働いてくれる人に対しては礼節をもってあたるのは当然です」

 驚いた顔をするプラタに較が言う。

「委員長みたいに硬く考えてるのは、特別だけど、この班のメンバーは、貴女の事を同等に思ってるから安心して、嫌事があったら言って」

 プラタは、嬉しそうな顔をする。

「私は凄く幸運です。こんな良い人達のガイドが出来るのですから」

 そして、較達は、移動を開始する。



 レンタカーの座席でタバコを吸いながら較達を監視していたミートが言った。

「本気で観光するつもりかね?」

 島を無料で巡回するバスに乗る較達を確認してから車を進めるミート。

「それにしても、緊張感が違うね」

 昨日までは、周囲を警戒する警察官も一応という感じがあったが、今日の警官達には張り詰めた緊張があった。

『あのバスには俺の家族が乗ってる。本当に大丈夫なのか!』

『この先には私の家がある!』

『誰だ、あんな化け物の入島を許可したのは!』

 無線から流れてくる、現地警官たちの嘆きを聞いてミートが呟く。

「日本政府から、外務省通知のこの島の危険レベルを上げるなんて脅された挙句、入島を許可すれば、数十万ドルの援助金を約束されれば、観光しか産業が無いこの島政治家が認めない訳には行かないだろぜ」

 ミートがあの事件の後、同僚をたたき起こして、再調査した結果、判明したのが、今回の較の入国は、かなり反対があったが、金と政治の力でねじ伏せられたと言う事実だった。

「本人がアメリカンヒーローそこのけの戦闘能力もってる上に、かなりの政治力と資金力がある。こんな奴がトラブルの原因にならないわけ無い。昨夜の襲撃以上のトラブルが発生する可能性は高いな」

 ミートは、緊張した面持ちで較達が乗るバスを尾行するのであった。



 島歴史館に入った、較達は、島の歴史を順次追って行った。

「この島の先住民族は、漁業をして生活をしていました」

 プラタの説明に漁船のレプリカを真剣に見る優子。

 他のメンバーは、適当に聞き流す。

「第二次世界大戦時以前は、英国の植民地でしたが、大戦後に、周囲のいくつかの島と共同して、独立しました」

 独立運動時の写真の前で説明をするプラタに優子が質問する。

「その当時はかなり、圧政があったのですか?」

 複雑な顔をするプラタ。

「確かに、我々には自由が少なかった気がします。でも……」

 プラタは、言葉を濁して次の展示の前に移動する。

「英国の殖民地時代に得た知識は、漁業のみでの生活を是としませんでした。更なる発展の為に、観光地として、近代化の道を進み今に至ります」

 近代的な施設の建設時の写真と模型が並べられる姿をプラタは悲しげな顔をして見ていた。

 優子が資料をチェックしている間に較がプラタの隣に行き言う。

「過去を懐かしむのは駄目とは言わないけど、元には戻れない以上、先に進むことも考えないと駄目だよ」

 その言葉にプラタが質問を返す。

「詰り、このまま近代化を進めるべきだというのですか?」

 較は首を横に振る。

「そうとは、限らない。観光を捨てて、漁業だけの生活に戻るのも一つの手。大切なのは過去を懐かしむのではなく、自分の手でかえていこうと努力する事だよ」

「自分で動くのが大切ですか?」

 悲しそうな顔をするプラタに較は何かを感じた。

 その時、さっきまで較達が居た、英国植民地時代の展示から爆発が起こった。



 レンタカーから島歴史館の様子を窺っていたミートは、内部で起こった爆発に舌打ちする。

「案の定かよ」

 急いで無線機を掴んで怒鳴る。

「監視対象を確認しろ! 関係ない人間の避難も急げ!」

 無線機を叩き置き、レンタカーから飛び出すミート。

「ハードトラブルスターター(重大問題起動装置)の異名は伊達じゃないな」



 館内の人間が避難する中、プラタが逆走するのを見て較が言う。

「訳ありだね」

 良美が隣に来て言う。

「追うよ!」

 溜息を吐き較。

「まー仕方ないね」

 そして二人はプラタの後を追う。

 プラタの向かった先には、黒いマントを羽織った、プラタによく似た男性が居た。

「兄さんどうしてこんな事をするのですか!」(現地語)

 その男性は、プラタの方を見て言う。

「解りきった事を言うな。他の国の人間に媚を売って生きるしか出来ない今の政府の連中に天誅を食らわす。これはその為の序章だ! 俺達の島を台無しにした奴等に征服された記録など要らない! これから我等が全てを取り戻すんだ!」(現地語)

「そんな事は止めて!」(現地語)

「ヤヤ、なんて言ってるか解る?」

 現地語が解らない良美に較が要約する。

「簡単に言えば、お兄さんが、現状打破の為にテロを行ってるのを止めようとしてるよ」

 驚いた顔をする良美。

「凄い、ここの言葉まで使えるんだ?」

 較は肩を竦ませて言う。

「聞き取れるだけだよ、会話は簡単な物しか出来ない」

 振り返るプラタ。

「ここは危険です。逃げて下さい!」

 叫ぶプラタだったが、それがプラタの兄の注意を較達に向ける事になった。

「観光などと言って、俺達の島を弄ぶ下衆が、死ね!」(現地語)

 その腕が振るわれた時、黒い何かが較達を襲う。

「兄さんは、ブラックウイングの奇跡の力を使います! それに触れたら危険です!」

 プラタが必死に言うが、較はそれに向かって手を振るう。

『カーバンクルミラー』

 大爆破を予想したプラタだったが、予想に反して、黒い何かは、プラタの兄に叩き返された。

「馬鹿な!」(現地語)

 咄嗟に新たな黒い何かを放つプラタの兄。

 黒い何かが触れ合ったとき、展示を破壊したのと同じ爆発が発生する。

 涼しい顔をして立つ較にプラタの兄は憎々しげに睨み言う。

「これで勝ったと思うなよ!」(現地語)

 黒いマントをはためかせ飛んでいくプラタの兄。

「兄さん、戻ってきて!」(現地語)

「なんかまた、揉め事に巻き込まれたみたいだね」

 平然と言う良美に較が遠くを見て言う。

「運命だから仕方ないよ」

「お前等何をした!」(英語)

 その声の主は、警官隊を引き連れたミートであった。

 頬をかきながら較が言う。

「本気で面倒な事になってきたみたい」

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