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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
8/52

妹思いな殺し屋

妹の命を救う為、その殺し屋は三百万ドルの賞金首を狙う

「妹は、どうですか?」

 そこは、アメリカにある非合法の病院の一室。

 非合法故に最高の治療を施すその黒人医師は、アジア系で美形ではないが、きりっとした顔立ちで、女性にもてそうな二十歳の青年の問いに首を横に振る。

「お前の妹さんの病気は、遺伝子的な物だ。はっきり言ってお前の努力が無ければここまで生き残れなかっただろうが、もう限界だな」

 青年の最後の希望が断たれた瞬間だった。

 青年は、アジア系の民族が童顔と見られるのを差し引いても実際の年、12歳には見えないほど成長が遅く、痩せている少女を見る。

「手は無いんですか! 金だったら何とでもします! 誰かの臓器が必要なら殺して奪ってきます! だから妹を、ツバキを救ってください!」

 諦めきれない気持ちで叫ぶ青年。

 黒人医師は青年に視線を合わせないようにしながら告げる。

「換えの臓器とかの問題じゃない。遺伝子その物に異常があり、遺伝子治療を施すしかないが、妹さんの病気に対する研究は現在存在しない。それだけ特別な物だ。そして、遺伝子治療の研究には長い年月が必要になる。とても妹さんの命が保つとは思えない」

 絶望、その一言だけがその青年を支配した。

 黒人医師は、その様子を暫く見つめた後、歯切れが悪い口調で話し始める。

「都市伝説みたいな話しだが、こんな話しがある。ジャパンにはエイトチャイルドと言うどんな怪我や病気も治療できるシャーマンが居るらしい。ただし、依頼料は、数百万ドルらしい」

 その言葉に青年は藁をもすがる気持ちで問い返す。

「その人を探してもらえますか?」

 黒人医師は自分の発言を後悔しながら説得を試みる。

「馬鹿な考えだ。全ては都市伝説だ。それに数百万なんて大金を君に用立てられるのかい?」

 青年は立ち上がり言う。

「どんな小さな可能性でも、妹の為には諦める訳には行かないんです!」

 そして青年は動き出した。



 青年は、その日、一人の男を殺した。

 青年は小さい頃に両親を亡くし、小さい妹と二人、生きていくために裏家業に入った。

 その青年には殺人の才能があった。

 暮らしていくには困らない報酬を得られて居たが、そんな青年の妹を病魔が襲った。

 その病気は、進行こそ遅いが確実に青年の妹を侵して行った。

 そして、青年の妹、ツバキ=ハギノの命の炎は消えかけていた。



 青年が仕事の報酬を受け取った帰り道、携帯が鳴る。

「なんだ?」

 荒み切った声で青年が電話に出た。

『貴方が、殺し屋のウイングですね?』

 その女性の声は、青年の記憶の中には無かった。

「どうやって調べたか知らないが、何のつもりだ?」

『エイトチャイルドと連絡がとりたいと聞きましたが?』

 青年は、舌打ちをする。

「イカサマの言葉は、いい加減聞き飽きた!」

 青年の言葉に相手の女性はあっさり同意する。

『解りました。二度と貴方へ、エイトチャイルドからの連絡は行かないようにします』

 その一言に青年は最後のチャンスを見た。

「本当にエイトチャイルドなのか?」

『代理の人間で、本家の奥様のバイトの手伝いをするだけの者です。奥様が急な出費があると言うので、適当な稼ぎ口を探していたました。どこの組織にも組せず、権力争いにも関係していない貴方が妥当と思い、連絡しました』

 青年は唾を飲み込む。

「どんな病気でも治せると聞いているが、本当か?」

『奥様に治せない病気や怪我の存在を少なくとも私は知りません』

 揺ぎ無い信頼感を感じ、青年が告げる。

「妹の治療を頼みたい。遺伝子的な病気で通常の治療では、間に合わないんだ!」

『了解しました。メールで送った口座に二百万ドル振り込んで下さい。その確認が終了次第、奥様が治療を開始します』

「間に合うのか?」

 青年の言葉に相手の女性が言う。

『振込みの確認が終わった時に死んで居なければ、大丈夫です』

 青年は、口座番号を確認して通話を終えると直ぐに、知り合いの情報屋の所に駆けこむ。

「どんな危険でもいい、二百万稼げる仕事を教えろ!」

 いきなりの発言に事情を知っている情報屋の男が息を呑む。

「まさか、例の件で繋ぎがとれたのか?」

 頷き青年が言う。

「そうだ、妹には時間が無いんだ。なんだったら大統領の狙撃だってやってやる!」

 肩を竦める情報屋。

「今時大統領殺しても下端の殺し屋にはそんな金は支払われないぜ。実行犯に高額の支払いが来るのと言えば私怨だけだ。本当に金が動く殺しが、個人に回ってくる事は無い。それはあんたも知ってるだろう」

 青年も頷く。

 万が一の事を考えて、高額な稼ぎ口を探していた青年には、少なくとも自分に回ってくる仕事では、目的の金額を稼ぐのは無理だという事くらいは認識していた。

「それでも二百万を作らなければいけないんだ!」

 情報屋の男はクールに告げる。

「妹さんの治療費で借金だらけのあんたじゃ、値下げ交渉されるだけだ。諦めな」

「どうにかしたいんだ!」

 情報屋の男に詰め寄る青年の目に賞金額の更新情報が眼に入った。

 そこには、三百万ドルと書かれていた。

「この賞金首の情報をくれ!」

 青年が飛びついた。

「馬鹿を言え! これは正真正銘の化け物だ。居所が知られているっていうのに誰もやれないって事実がそれを証明してるんだ!」

「化け物だろうが関係ない! 俺には、金が必要なんだ!」

 そうして渋る情報屋の男からその賞金首の情報を聞きだした青年は、空港に向かう。

「オーガプリンセス。最強の男の娘で、裏のバトルで名を知られた化け物」

 青年、ツバサ=ハギノは、手の中の写真に写る少女、白風較を見ながら断言する。

「妹の為にお前を殺す」



「それで、ヤヤさんがここ数日休んでるのはなんで?」

 学校からの帰り道、エアーナが良美に質問する。

「こないだの後始末で大変みたい」

 エアーナが納得したみたいで呆れた口調で言う。

「当然と言えば当然な気もするね。逆に平然と翌日から通学してたら、そっちの方が異常よね」

「その場に一緒に居たヨシは、通学してたけどね」

 その声にエアーナが振り返るとそこには、較が居た。

「もう終わったの?」

 良美の言葉に較が肩を竦ませて言う。

「学校を長期休暇出来ないから、学校の後でも出来るように急ぎの用件だけ済ませただけ。暫くは、学校終わった後は、忙しいよ」

「ご苦労さん。とにかく今日は出前とらないで良いって事だよね?」

 較は諦めきった顔をして言う。

「はいはい。了解しました。リクエストがありましたら、おっしゃってください」

「久しぶりに餃子パーティーしよう!」

 良美が嬉しそうに言うが較はあっさり答える。

「却下。明日も学校なんだから臭いが残るのは、駄目だよ」

 不服そうな顔をする良美。

「少しくらい良いだろう!」

「お互いを思いやる気持ち無いと人類なんて直ぐ滅びるよ。そういうことで本日は、鍋に決まりました。それじゃあエアーナ明日ね」

 較が独断で決めると手を振って商店街に向かう。

「ずっこいぞ! エアまた明日な」

 文句を言いながら、後を追う良美。

 そんな二人を見てエアーナが言う。

「何時もながら良美って凄いね。あのヤヤさんと対等に話し合うんだから」



「何なんだ?」

 困惑するツバサ。

 事前に仕入れた住所に帰って来なかったので、知り合いを見張り、見つけた賞金首は、どこにも居るような少女であった。

 到底、三百万ドルもの賞金がかかった人間とはツバサには思えなかった。

 懐にしまった拳銃を向けるが、ターゲットの少女、較は普通に買い物を続けていた。

 ツバサは、絶好のチャンスに引き金を絞る。

 弾丸は一直線に較の後頭部を目指して突き進む。

 ツバサは較の死を確信したが、当たる直前、較の左手が動き、その弾丸を掴む。

「……嘘だ」

 愕然とするツバサであった。

 較はまるで気にした様子も見せずに買い物を続ける。



「ヤヤ、蚊でも居たの?」

 良美の言葉に較は、手の中の弾丸を見せて言う。

「狙撃されただけ」

「もうそんな時期になったんだねー」

 良美は時の早さを感じていた。

「あのさー風物詩みたいに言わなくてもいいと思うよ」

 較の言葉に、良美が頷く。

「上下があるけど週一は必ずあるものを季節の風物詩って言うのは、問題だね」

 良美が笑顔で言うと、較は一言。

「日に三回以上の時に比べればましになったの」

 そんな末恐ろしい会話をしながら買い物を続ける二人であった。



「今回の件からは手を引かせてもらう」

 ツバサは地元の情報屋とのつながりで雇った日本の情報屋の言葉に睨み返す。

「ちゃんと金は支払った筈だ。多少の危険は覚悟の上だと思ったがな?」

 その情報屋は、恐怖に身を震わせながら言う。

「多少ならな。だが今回は相手が悪すぎる!」

 そう言って、その情報屋は謎の山の消失現象について書かれた週刊誌を見せてくる。

 ツバサもそのニュース自体はテレビで知っていたが、今この状況で出てくる話題とは思えなかった。

「これがどうしたと言うんだ!」

「これをやったのが、あんたが狙ってる化け物だよ」

 情報屋の言葉にさすがに驚きを隠せないツバサ。

「奴はそんな危険な兵器を所有しているのか?」

 首を横に振る情報屋。

「奴は素手でそれをやったらしい」

 ツバサは机を叩き怒鳴る。

「ふざけるのもいい加減にしろ! そんなフィクションみたいな事があるか!」

 しかし、情報屋は、少女に対する恐怖だけに怯えて、続ける。

「はっきり言っておくぞ、奴等は噂を広げてるわけではない。逆だ! 必死に隠蔽しようとしてるが、それが事実だと言う確証だけが調べれば調べるほど出てくるんだ! お前が相手をしようとしてるのはそんな化け物なんだよ! 金だったら返す! 俺はもう関らないぞ!」

 金を置いて逃げていく情報屋。

 ツバサは金を拾って言う。

「冗談に決まってる! 本当な訳は無い!」



「時間が無い。ここは直接やるしかない」

 狙撃は確実に防がれるツバサがそう決心するまでそう時間は掛からなかった。

 そして、ツバサが得意のナイフを隠し、接近する。

 較はその日も買い物をしていて、スーパーで大根の色艶を丹念に調べて居た。

 ツバサがその隣に立ち、ナイフを抜き出そうとした時、大根のチェックをしながら較が小声で言う。

「こんなスーパーでやるつもりだったら手加減しないよ」

 ツバサは動きを止める。

「せめて人気が無い所にしなよ」

 そう言ってから、次の野菜に移動する較。

 ツバサは、動けなかった。



 買い物の帰り道、人気の無い路地で較はスーパーの袋を提げたまま振り返る。

「あちきの賞金が狙い?」

 後をつけていたツバサが頷く。

「金目当ての下らない男だと思うか?」

 較は肩を竦ませて言う。

「冗談。貴方が金だけを目的にしてるのか、その先にある物を目的にしてるのは、目を見れば解るよ」

 意外な言葉に驚くツバサを他所に鋭い視線でツバサを射抜き較が断言する。

「それでもあちきは殺されてあげられないよ」

 ツバサは、唾を飲み込み、一撃にかけるつもりで走り出す。

 ツバサのナイフが較の首筋に当たる。

『アテナ』

 較はそう唱えただけで何もしない。

 ツバサは、相手の死を確信したが、その手から伝わってくる感触に戸惑いを覚えた。

 それは、ピストル等で防がれた時と同じ、鋼鉄にナイフをぶつけた時と同じ感触だったのだ。

「終わりにするよ」

 傷一つついていない較がその手をツバサに向けた。

 ツバサは、必死に離れた時、較は後ろに視線を向ける。

「大人しくしろ!」

 そこには、幼い少女の頭に拳銃を突きつけた男が居た。

「知ってるぜ、噂と違って人が良いってな! このガキを殺されたくなかったら、大人しく殺されろ」

 涙を流す幼女を見て較は冷たい視線を向けていう。

「チャンスは一度だけだよ、今すぐ手をはなして消えなさい」

「いきがっても、お前も小娘、他人を犠牲にする事など出来ねえだろー!」

 男の言葉に較が告げる。

「他者のとらない手段を取れるという事が優れていると勘違いしてるよ」

「弱者の戯言だ!」

 男がそう叫んだ時、較は指を弾く。

『ヘルコンドルカッター』

 男の手首が切り落とされる。

 言葉を無くす男の前に較が瞬間移動した様に現れる。

 較は幼女を助け出すとツバサに投げ渡す。

「耳と眼を隠してて」

 較の言葉にツバサは直ぐに自分の腕と手で幼女の耳と目を覆う。

『バジリスク』

 較が両手をつけた男は、人間にこんな声を出せるのかと疑いたくなる叫び声を上げて地面に倒れる。

「離れましょう」

 較の言葉にツバサは頷くしか無かった。



「お姉ちゃんじゃあね」

 手を振って去っていく幼女に手を振り返す較を見てツバサがいう。

「なんで俺にあの子を預けた? 俺もお前の命を狙っているんだぞ。人質にするとは思わなかったのか?」

 苦笑する較。

「意味無い事は目の前で証明したつもりだよ。それに人柄くらい戦い方見れば解るよ」

 振り返った較がその指をツバサの額につける。

「今から放つ技はさっき男にやった技の弱小版。それでも人を再起不能にするには十分だよ」

 その手を掴むツバサ。

「俺は死にたくない! 再起不能になるわけにも行かない。俺は生きて妹を護る!」

「でも現実って厳しいもんだよ」

 ツバサは最後のあがきにナイフを投げつけるが較は避けずにその皮膚で弾く。

『バジリスクアイ』

 較の指先から放たれた衝撃波でツバサの意識が消失した。



「お兄ちゃん!」

 その声にツバサが眼を開ける。

 そこには、病気の為に立つことすら出来なかった筈のツバキが居た。

「ツバキ、お前がどうして? まさか天国か?」

 首を横に振るツバサ。散々人を殺した自分がツバキと同じ天国にいけるわけが無いのだから。

「冗談としては面白くないよ。彼女の治療費は高かったんだから」

 較の声に驚くツバサ。

「八子さんって本気で守銭奴だからね」

 良美の言葉に頷く較。

「身内で、病状とかの遺伝子チェックは博士に頼んだって言うのに、二億円も取られたもん」

 ツバサが戸惑う。

「言っている意味が解らないんだが?」

 較はツバキの頭を撫でながら言う。

「簡単だよ、あんたが交渉しようとしたエイトチャイルドって人はあちきの知り合いで、あんたの治療の為に連れてったら事情を教えてくれたの」

 言葉を無くすツバサ。

「でも八子さんってそんなにお金が必要なの?」

 良美の言葉に較が溜息を吐いて言う。

「こないだまたワニ拾って、ワニ池を増築する費用等でかなりの出費したらしいんだよ。元々あそこってペットの食費だけで毎日数百万使ってるって噂だもん」

「ワニってそんなに落ちてるもんなんだ」

 良美の言葉に較が頷く。

「下水には、白いワニが繁殖してるって都市伝説があるくらいにね」

 ツバサは立ち上がり言う。

「そんな事は問題じゃない! どうして俺を助けて、妹の治療費まで払ってくれたんだ!」

 較が意地悪い笑顔で言う。

「あんたに凄く危険があるけど、意味が薄い仕事をして貰うため」

 その言葉に耳を疑ったツバサ。

「どういう意味だ?」

 較はつまらなそうな顔をして言う。

「あちきが賞金首だって理解してるよね?」

 ツバサが頷くと較が続ける。

「あちきの父親はそれに数段上の賞金額がかかっていて、ちょっとした情報だけでも数万ドルでやりとりされるの」

 ツバサが較の事を調べているときに出てきた、父親の情報が頭をめぐる。

 確かにそういった事情があるらしいのは解る。

「それが俺を助ける事とどう繋がるんだ?」

 較が一つの封筒をツバサに渡す。

「これをお父さんに届けて欲しいの。さっき言った様にお父さんが関ってるってだけで狙う人間が幾らでも居るからかなり危険な仕事だよ」

 封筒を受け取りながらツバサが言う。

「それをどうして俺に頼む。他にも色々頼む相手が居るだろうが!」

 頬をかく較。

「幾らなんでも家族の私信で、正式に人を手配するわけにも行かないし、死ぬ可能性がある仕事をやらせるのは気が咎めるからね」

 封筒を開いて、下手な父親の絵を見せる較。

「見せちゃ駄目!」

 奥に居た小較が文句を言ってくるが無視して較が続ける。

「あなただったら、無事帰ってくるでしょ。妹さんが居る限り」

 その言葉にツバサはツバキを見るとツバキは心配そうな顔をして言う。

「危険な仕事だったらやめて。お金はあたしが一生懸命働いて返すから!」

 首を横に振るツバサ。

「了解した。これ一回で幾らだ?」

 較が指を二本立てて言う。

「二万ドル。半額は借金への天引き、必要経費はちゃんと領収書ありだったら請求して良いよ」

「お兄ちゃん!」

 泣き出しそうなツバキを抱きしめてツバサが言う。

「安心しろ、俺は絶対に戻る。お前が居る限りな」

 抱きしめ合う二人を残して部屋を出る較達であった。



 数ヵ月後の南米の激戦区のゲリラが潜む町の中にツバサが居た。

「いつもいつもどうしてこんな危険な所に居るんですか!」

 封筒を差し出すツバサに、何処にでも居そうな優しそうな中年、白風焔ホムラが済まなそうに言う。

「何時も済まないね。オーフェンの奴等はどうも、こういう戦争を煽ってる場合が多くってね」

 その後ろでは、人間の常識を無視したバトルが繰り広げられていた。

「食らえラストショット!」

「そっちに化け物が再生しながら逃げるわよ」

「逃がさん。 マッハライディング!」

「鋼鉄の拳だろうが関係ない! わが拳を撃ち破れはせん!」

 しかしツバサには、もう見慣れた風景である。

「返信ありますか?」

 焔は、手を叩き言う。急ぎ手紙を書き始める。

「少しだけ待っていてくれ、直ぐに書くから」

 その時、人の数倍の大きさの岩の動く人形、ロックゴーレムが迫ってくる。

「早くして下さいよ。明後日は妹の誕生日なんです。今すぐ引き返して、行きに使っていたヘリに乗って帰らないと間に合わないんですから」

 動じないツバサ。

「それは、大変だ。急ぐよ」

 焔はそう言って書くスピードを上げる。

 ロックゴーレムの拳が振りあがった時、焔が立ち上がり手紙をツバサに渡す。

「よろしく頼むよ」

 ツバサは受け取り、駆け出す。

『ナーガ』

 焔の手が動き、大地が大蛇の様に動き、ロックゴーレムを一飲みにする。

 ツバサは大きく溜息を吐く。

「俺も馬鹿だったよ、あんな化け物の娘の命を狙ってたんだからな。とにかく待ってろよツバキ!」

 更にスピードを上げるツバサであった。

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