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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
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次期長決定戦

ヤヤ対ゼロ、勝つのは、どっち?

「これより、白風家、次期長の座を賭けた試合を開始する」

 間結の長、間結陽炎(カゲロウ)の宣言に答え、較と零が礼をする。

 間結の長の隣には、当然の様に谷走の長、谷走湖月(コゲツ)が居る。

 そして逆サイドには、萌野の長、萌野勇一。

 この三人の長が今回の立会人である。

 そして、非常時に備えて、八子さんも来ていた。

「ヤヤ、そんな奴、軽く倒しちまえ!」

「ヤヤお姉ちゃんだったら楽勝です!」

 良美と小較が気楽に応援するが、較の表情には、一部の油断が無い。

 それどころか強い緊張から、汗が既に頬を伝っていた。

「白風に伝わる神器、蒼牙の試練。かなりのパワーアップになったみたいだな」

 間結の長の言葉に谷走の長も頷く。

 萌野の長が楽しげに言う。

「蒼牙様にお願いして、うちの無能どもにもやらせるか?」

 八子が肩を竦める。

「間違いなく試練を突破できない限り、永遠に閉じ込められる術式でしたから、余りお勧めしませんよ」

 萌野の長が舌打ちして言う。

「その位の試練じゃなければ試練など言うか、近頃の若い奴等は、弛んでいるのだ」

 そして、氷が零に声をかける。

「古流の強さを示してやれ!」

 しかし零は、答えない。

 較も無言のまま、間合いを計る。

 先に動いたのは、較だった。

『タイタン』

 連続蹴りで地面に振動を走らせる。

『タイタン』

 零も同じ技で相殺する。

 それを見てギャラリー特に氷が驚く。

「ゼロ、何を考えている! 下らぬ撃術等に頼るな!」

 零は、それを無視して一気に間合いを詰める。

『白い風よ、我が手を包み、全てを切り裂け、白刃(ハクバ)』

『オーディーン』

 零の一撃を較が受けるが、術の威力の差から較だけが弾かれる。

『イカロス』

 空中で重力制御と慣性制御を行い、無理やり方向転換する較。

 地面に着地する較を見て零が言う。

「流石に大人しくトラップに嵌ってくれないか」

 較が、自分の落下予想地点を一瞥して言う。

「昨日のうちにやっておいたんですか?」

 零があっさり頷く。

「少しでも勝率を上げるために」

 較が左手をあげる。

『ラムウ』

 雷撃が周囲に落ちて、それと同時に爆発が連発する。

「こちらの用意したトラップを強制起動し、目隠しか、しかしそれでは、不十分」

 蒼牙を振るった先に較が居た。

「自分の術の気配と他人の気配を識別くらい出来る」

 較が油断無く構えたまま答える。

「簡単そうに言うけど、日常生活のときならともかく、戦闘中にそんな繊細な気配識別なんてそう簡単に身に付くものじゃないよ」

 零が苦笑する。

「それくらい出来ないと、あの試練は、越えられない」

 二人の激しい攻防が開始される。



「どっちが有利だと思う?」

 間結の長の言葉に谷走の長が答える。

「一見互角ですが、ヤヤの方が焦りを覚えています」

「事前の準備の差か?」

 間結の長の問に谷走が首を横に振る。

「手数の差です。元々古流の技は、撃術の数倍。その上、零が撃術まで取り入れた事で、手数の差が生まれています」

 その言葉が示すように較は、確実に傷を増やしていた。

「しかし、このまま終るヤヤでは、ないな?」

 間結の長の言葉に谷走の長が頷く。



 較は、大きく弾かれると同時に間合いをとると良美に声をかける。

「ヨシ、ホワイトファングを使って良い?」

「やっちゃえ!」

 良美の即答に較が右手を前に突き出す。

「本気で行くよ!」

 較の右手の白い光が強くなる。

『ホワイトファング!』

 白い光が零に迫る。

 零は、どっしりとした構えを取り、蒼牙を白い光に向けた。

 再びホワイトファングと蒼牙がぶつかりあう。

 周囲の空間すら歪ませる衝撃にギャラリーも息をのむ。

 光が消えた後、較の姿がギャラリーの前から消えた。

「ヤヤお姉ちゃんは、何処?」

 小較が呟く。

 必死に較の姿を探す小較と良美と違い、長達と八子は、零の姿を凝視する。

 その時、轟音と共に較が急降下で零を狙う。

「ホワイトファングをこの一撃の為の布石にしたな」

 萌野の長の言葉に八子が頷く。

「零も薄々気付いていたと思うけど、回避は、出来ない。ホワイトファングを中途半端な体勢で受けることなんて出来ないから。そして、今から回避したら、衝撃ダメージを受けて動きが止まっている間に止めの一撃が来る。上手い詰み手ね」

『バハムートクラッシュホーン!』

 較の渾身の降下蹴りであった。

 零は、右手を上げて呪文を完成させる。

『白風流終奥義 白牙(ビャクガ)』

 白い光が較の気を粉砕して較を吹き飛ばした。

 膝をつく零の後ろに慣性制御もされないまま較が地面に叩き付けられ、そのまま動かなくなる。

「終わりだな」

 間結の長の言葉に残りの長達が頷き、代表して間結の長が宣言する。

「勝者、白風零。これより、白風の次期長は、零とする」

「ヤヤお姉ちゃん!」

 小較が叫び較に駆け寄るのであった。



「しかし、反射的に受身取れるなんて、流石ね」

 較の治療をしていた八子の言葉に較がベッドに上から答える。

「意識しないと出来ない防御なんて意味ないですから、体に染込ませています」

 泣きつかれて、ベッドによりかかりながら寝ている小較の頭を左手で撫でながら右腕を見せる。

「それより、厄介なのが右腕です。侵食が進んでる気がします」

 八子があっさり頷く。

「ホワイトファングを使用した直後に、同種の力である白牙を受けたのが致命的ね。はっきり言って暴走の一歩手前。もうホワイトファングは、使用できないと思って良いわ」

 複雑な顔をして較が言う。

「頼ってないつもりだったのに、使えないと解ると心細くなるのは、何ででしょうね?」

 苦笑する八子。

 その時、八子の娘、七華が駆け込んでくる。

「大変! 良美さんの意識が戻らず、体力がどんどん無くなってる!」

 較が飛び起きると、良美の気がする方向に駆け出す。

 較がドアを蹴り開けて、視界に入ったのは、全身から物凄い汗を垂らして、弱々しい呻き声あげる良美の姿であった。

 中に入ろうとした較を不可視な壁が阻む。

「邪魔しないで!」

 強引に入ろうとした時、八子が前に現れて言う。

「貴女が近づくと悪化するわ!」

 歯軋りをする較の右手の光が暴走し始めると同時に良美の顔が更に歪む。

「落ち着きなさい! 貴女の力が暴走すれば、それだけ良美ちゃんへの影響が悪化するわ!」

 較は、無理やり深呼吸する。

「どうにか出来ませんか?」

 八子が熟考してから答える。

「蒼牙様に白牙様の力を吸収してもらえれば、なんとかなると思うわ」

 聞き終わると同時に較が再び駆け出す。



「事情は、解ったが、断る」

 零の言葉に較の視線が鋭くなる。

「人一人の命が掛かっているのですよ!」

 零が視線を合わせ答える。

「今の状態なら、八子さんの力を使えば、暴走しないで消滅する。世界の危険が一つ減る。今まであの子の存在が容認されていたのは、お前が白風の次期長だったからだ」

 較の後ろに居た、七華が泣きながら八子の後ろに隠れる。

「強引な手段をとっても構わないんですよ?」

 較の脅しに零が肩を竦める。

「脅しに怯む人間が、八刃に居ると思うのか?」

 較は近くの壁を粉砕して部屋を出る。

「どうしても駄目なの?」

 八子の言葉に意外にも蒼牙が答えた。

『前までの状態ならともかく、いまの状態では、放置出来ない。それほどあの娘達は、危険な状態にある。少しでも危険の可能性が減るのなら、良美と言う少女の命は、諦めるしか無い』

 自分でも危険性に気付いていた八子は、反論が出来なかった。

 重い空気の中、零が言う。

「再戦をやるなら、明日の零時までだと伝えて下さい」

 八子は、零の顔を凝視して、思案した後、返事をする。

「伝えるわ」

 立ち去ろうとした八子に蒼牙が助言する。

『私が在った場所なら、閉鎖世界を作り易い』

 八子が振り返り頭を下げる。

「ありがとうございます」



「何て傲慢なの!」

 較と一緒に話しを聞いた小較が文句を言うが、較が苦笑して言う。

「ヨシのタイムリミットも同じくらいだよ。相談があるんですけど、良いですか?」

 較が八子さんの顔を見る。

 八子は、溜息を吐いて答える。

「蔵の蒼牙様が居た場所なら、良美ちゃんとのリンクが切れる世界を生み出せるわ」

「お願いします」

 較が頭を下げる。

「ヤヤお姉ちゃん、何をするつもりなの?」

 較は、右手を見せて言う。

「必要なの、この手の力をコントロールする方法が」

 小較が慌てて言う。

「そんなの危険だよ、下手をすればヤヤお姉ちゃんも、消えちゃうよ!」

 較が強い意志を籠めて答える。

「でも必要な事。そうしないと、もしも勝っても後が続かないからね」

 八子が諦めた顔をして言う。

「直ぐに始めるの?」

 較は頷き、蔵の蒼牙の居た場所から八子の作り出した閉鎖世界に入るのであった。

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