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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
32/52

闘神と敗戦

ヤヤ負け負けのお話し 

「本当に大丈夫なのか?」

 達樹が恐怖に震えていた。

「大丈夫だよ。あたしは、何度も遊びに来てるんだから」

 智代が太鼓判を押す。

 達樹は、自爆装置のスイッチを押す気持ちで、それを押した。

 反応は、すぐに返って来た。

「はい、話は、聞いています。こっちですよ」

 小較が、白風家の玄関のドアを開けて声をかけてきた。

「お邪魔します」

「失礼します」

 普通に入っていく智代に、緊張で体を硬くしながら入る達樹であった。



「態々、すいません」

 頭を下げる較。

「郵送でもよかったのにね」

 軽く言う、良美。

「とんでもない、こんな強力な神器を、第三者の手に委ねられません」

 そう言って、スクランブルエッグを机の上に置くと較が苦笑する。

「逆に強力すぎて、誰も手が出せないと思うけどね」

「そんなに強力な神器なの?」

 小較の質問に、較が頷く。

「色々と裏事情があるんだけど、下手に適性がある人間が使えば、日本列島が消滅するはずだよ」

 喉の渇きから、出されたお茶を飲んでいた達樹が思いっきり噴出す。

「そんな危険な神器を、郵送させようとしていたんですか?」

 較が肩を竦めて言う。

「さっきもいったけど、危険すぎて誰も手に負えないの。発動事態にも色々制限があって、リミットもある。だから、こないだも本来の力の一%もその能力を発揮しなかった」

 顔を引き攣らせる達樹。

 良美がスクランブルエッグを受取って言う。

「今まで通り、あたしが預かるよ。それより、この後は、暇?」

 智代が頷く。

「特に用事は、ないけど」

「何か用事でもあるんですか?」

 達樹の言葉に良美が笑みを浮かべる。

「この後、滅多に見れないヤヤの連敗シーンが見れるんだよ」

「上手く、二戦、引き分けに持ち込めば、連敗を逃れられるよ」

 不機嫌そうに言う較に良美が肩を竦めて言う。

「勝つって言えない時点で、連敗が確定だね」

「ヤヤが誰かと戦うの?」

 智代の質問に良美が頷く。

「そう、オーフェンハンターのトップメンバーとの模擬戦があるの。見応え、あるからみていきなよ」



 白風家の庭には、特殊な空間が存在した。

 外界とは、完全に隔離されたそこでは、何を行っても、周囲には、全くの影響が発生しない。

「先代の長が作った、結界の一種らしいよ」

 較の説明に達樹が呟く。

「あっさり言ってるが、とんでもない結界だぞ」

 そこで、待っていたのは、元十三闘神の面子だった。

「遅い。始めるぞ」

 一番手は、拳神、地龍だった。

 始まりの声も無く、拳を放つ地龍。

 較は、それを弾きながら、接近する。

 両者の息が相手の体にあたる至近距離での肉弾戦を開始する。

 較は、前後左右に上下まで入れた、多角的な攻撃を放つ。

 地龍は、それを正確にさばいていく。

 舌打ちして、距離をとると較は、近場に有った岩を掴むと、投射する。

『レットキング』

 物凄いスピードで、迫る岩。

 直撃すれば、常人だったら死亡確実だが、地龍は、平然とそれを受け流した。

 しかし、受け流した岩が爆裂する。

 投射と同時に動いた較が、受け流された岩に攻撃を放ったのだ。

「直接的な、撃術を無効に出来ても、これだったら無理でしょ」

 無数とも思える石つぶてだったが、地龍は、あっさりと、その全てを回避した。

 常人とは、思えない体術だが、較の詰み手が始まっていた。

「ゼロ距離に詰めた」

 地龍の服を掴んだ較がそのまま、常人離れした力だけで、地龍を上空に投げ飛ばす。

 空中で回避法が無い地龍に向けて、較は、手刀を放った。

 必中の一撃だとギャラリーも考えた。

 しかし、地龍は、あっさりと手刀を白刃取りしていた。

 地龍の体が逆海老にそり、較の後頭部にその踵がクリーンヒットする。



「なんだ、今の攻防?」

 驚愕の達樹。

「何があったのか解らないよ」

 智代は、速過ぎる攻防に目も追いつかなかったらしい。

「スピードも馬鹿げているが、一つ一つの技が必殺の威力が込められていたぞ? 模擬戦だろ?」

 達樹の言葉に、汗を拭きながら地龍が答える。

「模擬戦ならばこそ。常に全力で向かい合わなければ意味が無い」

 良美がなれた様子で、較にバケツの水をぶっかける。

「まず、一敗目」

 悔しそうにしながら較が立ち上がると、次の対戦相手、騎神、キッドがバイクに乗りながら言う。

「かなり体が鈍っているので、本気で行きますよ」

 そのまま、バイクが一瞬で音速に達し、較に迫る。

 較は、それをかわすが、腕を浅く切り裂かれる。

 通り過ぎると同時に放ったナイフの一撃がかすったのだ。

「出産で鈍ったっていっても、かわしきれるスピードじゃないか」



「あれって流石に反則じゃない?」

 智代の言葉に、良美が首を傾げる。

「そう? バイクに乗って戦うなんて普通のうちだと思うけどな」

「一般常識で、バイクに乗って戦うなんて模擬戦は、存在しない。それ以上に、あのバイクどうなってるんだ、慣性を無視して曲がったりしてるぞ!」

 達樹の言葉に良美が答える。

「バイクじゃなくて、キッドさんの能力だよ。それに、模擬戦は、本当に戦う事を想定しているから、路上にバイクが普通にある以上、想定すべきものだよ」

 納得いかない顔をする達樹であったが、その間もキッドの攻撃が続き、較の全身を赤く染めていく。

「流石に危険だよ!」

 智代の言葉に良美が言う。

「深い傷は、無いよ。それにそろそろ仕掛ける筈だよ」

 良美の言葉に答えるように、較は、今までとは、反対の動き、キッドのバイクの進行方向に体を入れる。

 完全なカウンターを狙った一撃。

『バハムートブレス』

 較の放った一撃は、見事バイクを粉砕した。

「負けを認める?」

 頷く較の背後からキッドがナイフを首に当てていた。

 較がカウンターを決める前にキッドが離脱して、渾身の攻撃を放った直後の隙にナイフを押し当てていたのだ。



「連敗したけど、コメントある?」

 良美の意地悪の質問に較が次の対戦者、糸神、ユリーアを見て言う。

「ユリーアさん相手だったら、今回は、有利だから、何とかなるはずだよ」

「あら、自信ありげね。でも本当に大丈夫?」

 ユリーアの言葉に較が周囲を見て言う。

「最後に確認ですけど、そこら辺に糸を隠してませんよね?」

 あっさり頷くユリーア。

「ええ、実戦ならともかく、模擬戦ですもの、騙す必要は、無いわ」

 構え、開始の合図と共に、特攻をかける較。

 達樹にも消えたとしか見えない較だったが、ユリーアが服を広げると無数の糸が飛び出して、較を拘束する。

「このまま、いけない遊びに移行したいわね」

 ユリーアの言葉に、較が諦めの溜息を吐く。

「事前に、気を溜めた糸を服の内部に仕込んでた事に気付かなかった時点で、あちきの負けです」



「ものの見事に三連敗だね」

 良美の言葉に深い溜息を吐く較。

「もう少し、粘れると思ったんだけど、オーフェンハンターになってから更に実力を伸ばしてるよ」

 較達は、最後の一人、銃神、ホープを見る。

「最後は、派手にやろうぜ」

 拳銃を構えるホープに智代が一言。

「銃刀法違反じゃないの?」

 良美が手を叩く。

「確かに。法律違反者がここにいる」

「そういう問題じゃないだろうが、しかし、拳銃を相手に、神器無しで勝てるものなのか?」

 達樹の質問に良美が答える。

「普通の弾丸だったら、ヤヤは、体で受け止めても大丈夫だけど、ホープのは、戦車の主砲より強力だから、あたったら大怪我するね」

「そんな、止めさせないと」

 心配そうな智代に良美が気楽に答える。

「大丈夫、大丈夫」

 勝負は、ホープの初弾が放たれて、始まる。

 大きくかわしながらも接近する較。

 二発目、三発目と至近距離で炸裂する。

『アテナドレス』

 防御力を挙げる撃術で、ダメージを最小限に抑える較。

 四発目が放たれた時、較は左腕を犠牲にして、詰め寄った。

 ホープの右手に握られた拳銃の銃口から完全に較が外れ、較の残った右手での必殺の一撃を放とうとした時、ホープの左手に握られていた、小型のピストルの弾丸が、較に頭に直撃する。

 通常の弾丸なら平気な較も、ホープの気を籠められた弾丸に脳震盪を起こして倒れる。

「勝負ありだな」

 銃口から上がる煙に息を吹きかけるホープ。



「大変だよ、頭撃たれてる! しんじゃう!」

 智代が駆け寄った時、較が立ち上がる。

 ゾンビを見る目で較を見る智代。

「何で頭を撃ちぬかれて生きているの?」

 較は、平然と答える。

「咄嗟にガードを強めたし、籠められた気の量も少なかったからね。まさか、二丁拳銃でくるなんて、予測が甘かったな」

 そういいながらも、自力で傷を治していく較。

『ラクシャミ』

 そんな様子を見ながら達樹が言う。

「あの必殺の白手より強い相手がこんなにいるなんて、とても信じられない!」

 ユリーアが苦笑しながら言う。

「経験値の差ね。幾らヤヤが優れていたとしても、一回勝負の実戦でもない限り、負けないだけよ。ゲーム的に言えば、あたし達は、レベル九十以上の戦士で、ヤヤは、レベル七十勇者ってところかしらね。直接的な戦闘では、戦士が有利だけど、ミッション等あった場合、ヤヤの方が達成率が良い筈よ」

「ヤヤって手段を選ばないからね。札束で、相手の頬を叩いて黙らせたりもするし」

 良美の言葉に、智代が軽蔑の眼差しで較を見る。

「ヨシが、ヤクザの車に蹴りを入れて慰謝料請求された時で、相手が調子に乗って、触ってきたからだよ。そうじゃなければ、ただお金を渡して、無事解決させてたよ」

 較の反論に良美が遠くを見て言う。

「あの時は、相手も拳銃を取り出して、ヤヤの反撃で車を全損させられて、逃げるヤクザが馬鹿なことにも、覚えてろって、お約束の捨て台詞を吐いたから、ヤヤがその組を壊滅させたんだっけ」

 較も遠くを見て言う。

「あちきも若かった」

「そういうのを若さの一言で片付けて良いのか?」

 達樹が突っ込むと較がお金のマークを作って言う。

「お金もかかったんだから。一つの組織を潰すと関連組織に詫び料とか支払ったり、動いてくれた人達に謝礼をはらったりと出費が多いんだよね。だからクライシスコーラーは、日本支部壊滅で済ませたけどね」

 良美が面倒そうに言う。

「見せしめに、敵の本部を壊滅させると言うヤヤを希代子さんが、必死に説得してたよね」

 舌打ちする較。

「あーゆーのは、中途半端が一番不味いの。やる時は、根こそぎ潰しておかないとね」

 智代が眉を顰める。

「あたし今まで、ヤヤが良美のストッパーだと思ってたけど、逆だったりするのね」

 強く頷く良美。

「そうそう、ヤヤって、身内の事になるとすぐ容赦を無くすから」

 その後も、較の逸話の数々が語られた。



 達樹と智代の帰り道。

「つくづく思った。この世には、上には上が居るって事が」

 達樹の言葉に智代が微妙な顔をする。

「そうかも知れないけど、ヤヤって良美に依存してる所があるね」

 予想外の顔をする達樹。

「依存って、家事から戦闘まで白風較がやっていたと思うが?」

 智代が難しい顔をして言う。

「精神的にだよ。前からそんな気は、していたんだけど、良美は、ヤヤが居なくても生きていけるけど、ヤヤは、良美が居ないと生きていけない。正確に言うと、暴走しちゃう。良美って護る者がいるからヤヤは、ヤヤで居られるんだと思う」

 達樹が複雑な顔をする。

「俺達から見れば、何でも出来る化物でも、それより強い奴は、幾らも居て、誰かに依存しないと生きていられない。難しいな」

 頷く智代を見て、達樹が言う。

「友達で居られるのか?」

 智代は、苦笑して言う。

「うん、あたしも良美と一緒で、あんな不安定なヤヤをほっておけない。友達だからね」

 達樹が溜息を吐き言う。

「こうして、俺達が触れては、いけない者が増えていくんだな」

 手を振って去っていく智代を見送って達樹が呟く。

「タイプだったんだけどな」

 較から離れる為に、急ぎ町を出て行く達樹であった。

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