滅び行く人狼
ヤヤ、ミサラ王国へ。そしてオーフェンハンターの参戦
ミサラ王国の国際空港に較達が到着した。
「意外と近代的だねー」
完全なバカンス気分の良美の言葉にサイトが少し不機嫌そうに言う。
「流石に日本程ではありませんが、我がミサラ王国は、近代化も進んでいる、発展した国です」
較が頷き言う。
「確かにそうだけど、礎になってるのは、ミスリルの産出による、オカルト業界に対する輸出による外貨だって事は、間違いないね」
ミールが苦笑しながら頷く。
「それを否定しません。それだけに今回のムーンウルフの問題は国の根幹に関わる重大な問題なのです」
「ヤヤお姉ちゃんあれ何?」
初めての海外旅行に嬉しそうに騒ぐ小較に溜息を吐きながらサイトが言う。
「結局、一緒にこれた八刃の人間は貴女とそこの子供だけみたいだが、大丈夫なのか?」
較が少し困った顔をして言う。
「意外とミサラ王国って周囲に好かれてないのね?」
その言葉に、サイトが怒る。
「関係ないだろうが!」
首を横に振るのは、ミールだった。
「周囲の国が反対したのですね?」
較があっさり頷く。
「今回の事件は単なる内部抗争で、八刃を関係させるのは、周囲の国に対する威圧の為だって、許可が下りなかった。あちき自身も個人的な知り合いって事で無理やり許可貰ったって感じだよ」
ミールが大きく溜息を吐く。
「周囲の国は、うちの国が裕福な事を羨んでいますから」
舌打ちするサイト。
「下賎な奴等だ!」
そんな外交的な会話を置いておいて較が言う。
「八刃としてもオーフェンって名前が出た以上、ほっておけないからオーフェンハンターから応援が来る事になっているよ」
「オーフェンハンター?」
ミールが疑問符を浮かべると、較が頷く。
「お父さんが、仕切ってる対オーフェン組織で、大半が自由の聞く八刃以外の人間なんだよ」
「ただの人間にムーンウルフの相手が出来るのか?」
疑いの眼差しを向けるサイトに較が頬をかく。
「まー来る人次第だけど、多分大丈夫。オーフェンハンターにはあちきより強い人間なんて、少なくとも両手で数え切れないくらいいるから」
その言葉に、驚愕するミール。
「ムーンウルフ達を単独で圧倒した貴女より強い人間が居るのですか?」
普通に頷く較。
「あちきより強い人間なんて幾らでも居るよ」
信じられないって顔をするミールとサイト。
その時、一人の西部劇のガンマンルックの男が現れた。
「騎兵隊が来たぜ」
自信満々な言葉に較が驚く。
「ホープが来たの?」
ガンマンルックの男、ホープが笑みを浮かべて言う。
「俺だけじゃないぜ」
後ろを指差すと、数人の女性を引き連れた、女王様な雰囲気を持った女性がやってくる。
「ユリーアさんまで、来てるって事は、随分大事に捉えられてるって事だね」
較の言葉にやって来た、女王風の女性、ユリーアが答える。
「ヤヤちゃんが捕まえた人狼の証言から、もしかしたら今回は六頭首が絡んでる可能性が出てきたのよ」
本気で嫌そうな顔をする較。
「なるほど、元十三闘神が二人も来るわけだ」
「強いのか?」
ホープ達を指さして言うサイトに、較が少し驚いた顔をして言う。
「知らないって凄いね。二人ともあちきより強いよ」
良美が振り返って言う。
「でも、ヤヤって二人とも勝った事あるじゃん」
苦笑する較。
「簡単に言えば、あちきはレベル70の勇者で、ユリーアさんは、レベル90以上の糸使いで、ホープは、レベル95以上のガンナー。戦い方次第では、レベル70でも勝ち目があるだけで、総当り戦とかやれば、勝率が高いのはホープやユリーアさんだよ」
「そんな強い奴等には見えないのですが?」
サイトが疑惑の視線を向ける。
その時、トラックが玄関を壊して、突っ込んでくる。
ホープが吊り下げられた拳銃を早抜きして撃つ。
たった一発の弾丸が、トラックを正面から弾き飛ばす。
言葉が無くすミールとサイト。
「さっそく狙って来るって事は、情報が漏れているって事ね」
ユリーアが呟くと較も頷く。
「日本での襲撃の早さを考えれば当然だね」
「何だと、我等の中にムーンウルフに加担する奴らが居ると言うのか!」
サイトが猛反発するが、較もユリーアも気にしない。
「まず王宮に行って防衛体制を整えないといけないね」
較がそう言うと、王宮に向って移動を開始する。
そして王宮で待っていたのは、激しい反発だった。
「話は聞いていますが、信用するわけには行きません。こんな小娘の言葉に踊らされたら、余計事態が混乱します」
国王の側近の言葉に周りの人間が頷く。
「しかし、今も襲撃が続いています。何らかの手を打たなければ大変な事になります」
必死に説得しようとするミールに国王は、ミルド=ミサラは、娘を落ち着かせようと告げる。
「わが国には、ミスリルナイツがいる。彼等が何とかしてくれる」
ユリーアが脇に控える、ミスリルナイツを指さす。
「あの木偶の棒たちに対応出来るとは思えないわね」
ミスリルナイツのメンバーがいきりたつ。
「ふざけるな、王女様の客人とは言え、無礼な口ぶりは許さないぞ!」
ユリーアは挑発するように笑みを浮かべて言う。
「許さないならどうするの?」
引き金が引かれた、一斉にミスリルの武具を構えてユリーアに襲い掛かる。
「危ない!」
ミールが叫ぶと較も頷き言う。
「怪我したくなかったら、その場所から動かないでね」
「そんな、それでは、あの人が!」
良美が呑気に言う。
「そういえば、ユーリアさんが戦うところ直接見るの初めてだ」
警戒の為にサイトが隣にいたホープに言う。
「助けなくても良いのですか?」
ホープは欠伸をしながら言う。
「交渉ごとは専門外だ。敵の本拠地に行くまで出番無しだ」
「その命で贖え!」
ミスリルナイツのミスリルランスやミスリルスピアがユリーアに迫った。
しかし、そのどれもが、ユリーアに触れる前に止まる。
「まだだ!」
武器を止められた仲間を飛び越えて、ミスリルソードやミスリルブレードを持った騎士達が斬りかかるが、全員空中でその動きを止める。
「相手の実力も解らず、全力で攻撃してくる貴方達では有効な手段を打てないわね」
余裕たっぷりな態度に、ミサラ王国の人間が驚いた。
その中、較が宣言する。
「協力してくれとは言いません。あちき達はこれからムーンウルフのアジトを襲撃します。その確認の為の人間の手配と、その間の警護をそこの女性にさせる許可だけ下さい」
ミルド国王は、冷や汗を垂らしながら頷く。
「自由にやるが良い」
「ムーンウルフのアジトの場所をどうやって知ったんだ?」
移動中の車の中で、同行(監視)役になったサイトが言うと、較がユリーアの持ってきた資料の最終確認をしながら答える。
「捕まえた人狼から吐かせたんだよ」
信じられないという表情をするサイト。
「不死身の奴らが拷問に屈したというのか?」
小較が答える。
「死ぬ心配が無いから尋問が楽だって聞いたよ」
まだ納得できないサイトに較が説明する。
「正直、拷問って言うのは、相手を殺さないように苦痛を与えるもの。最初から殺す事が目的じゃないの。だから不死身で回復能力が高いのは、逆に有利にしか運ばない。逆に自殺も出来ないから、情報を引き出すのは比較的簡単だった筈だよ」
「そんな物なのか?」
サイトの言葉に、頷く一同に呆れながらもサイトが別の質問をする。
「ところでさっきのは、何をしたんだ?」
「ユリーアさんは、極細の糸に気を使って、強固に変化させて自在に操れるの。ミールさん達が話している間に自分の周囲に糸の結界を張り巡らせて居たんだよ。それにしても、ミスリルナイツって全員があのレベル?」
較の質問にサイトは、首を横に振る。
「あそこにいたのは、国王や重臣に覚えがいいだけの連中だ。本当の実力者は、ムーンウルフの調査をしていてあんな所にいられない」
運転していたホープが頷く。
「確かに、呑気にあんな所で、棒立ちしてる奴らが現役とは思えんな」
そして車が止まる。
「着いたぜ」
ホープの言葉にサイトは唾を飲む。
しかし、較も良美、小較でさえ平然としている。
「お前達は、緊張するって事を知らないのか?」
呆れた顔でサイトが言うと、良美が言う。
「今更だよ、あたし達にとっては、敵のアジトに突入するなんて日常茶飯事、月一イベントだよ」
サイトが疑った目で較を見ると、較は、遠い視線をして答える。
「あちきは、神様からそういう運命だって、神託降ってますから諦めてます」
達観の一言にサイトが言う。
「電波系なのか?」
較は肩を竦ませて言う。
「なんとでも言って。今のところ当たっているから、あちきは戦い続ける」
較は相変わらずの口喧嘩を続ける良美と小較を見て微笑む。
サイトは、何も言えなくなった。
戸惑って居たサイトに行動を起こさせたのは、ビルが爆発と共に倒壊する衝撃波だった。
「何が起こった!」
衝撃の元を見るとそこには、ホープがマグナムを片手に立っていた。
「どのビルが攻撃しても大丈夫なビルだ?」
較がマップを調べながら言う。
「向こう側のビルとそっちのビル。全部、八刃でも金持ちの間結が買収済みだから」
「オッケイ!」
ホープの放った弾丸は、たった一発ずつで、較が指示したビルを倒壊させていく。
「お前等何をしているんだ!」
サイトが怒鳴るが、較は平然と答える。
「逃げ道塞いでる所。安心して、あのビルも周りの敷地も八刃の管理地で、ついでに言うと、ムーンウルフの関係者以外、誰もいないのは確認済み」
一斉に中央のビルから出てくる人狼達。
「出てきたな」
ホープの拳銃が唸り、ムーンウルフの人狼達を粉々にしてしまう。
「一瞬で粉々になったら回復能力なんて関係ないって事だよ」
較がそう言って、普通にビルに近づく。
『貴様等、殺してやる!』
必死に足掻く人狼達だったが、近づいた者は、較がその体を触れるだけで全身の骨を砕かれ行動不能になる。
『バジリスク』
躊躇すれば、ホープの拳銃が火を噴き、確実に粉々にしていく。
完全なワンサイドゲームである。
「冗談だろ?」
サイトは信じられないという表情になって、棒立ちになる。
『せめて一匹は殺す!』
その声と共に、大きく回りこんできた人狼がサイトに襲い掛かる。
「しまった」
対応が遅れたサイトは、その必殺の爪から逃れる術が無かった。
『ガルーダ』
襲い掛かってきた人狼が大きく吹き飛ぶ。
「油断しちゃ駄目ですよ」
横に居た小較が大人ぶった態度で忠告する。
「すまない」
十分も経った頃には、囲んでいた人狼たちは、殆ど全滅していた。
「脆いな」
ホープの言葉に較が頷く。
「不死身なんていって、戦い方を磨いていない奴等なんて、この程度だよ」
『それでも、我々は、生き延びたいのだ』
その声に振り返ると、さっきまでの人狼達より一回り小さな人狼が現れた。
『皆の者、ここは逃げろ。この者達は、八刃だ。奴等、オーフェンが言って居た、何時か戦う約束をした、化物だ』
その人狼の言葉に、残りの人狼達は、躊躇する。
『わしが、命懸けで時間を作る。だから行け!」
その一言に、大きな動揺が走る。
『ガンダ様がどうして、それでしたら他の若い者に任せて……』
周りの若い人狼を軽く睨みその人狼、ガンダが断言する。
『任せられないからわしがやるのだ。我々は、銀を操る人間によって滅びに瀕していた。だからこそ、オーフェンの誘いに乗った。我々は滅びる訳には行かないのだ!』
ガンダは、他の人狼と較べると格段落ちた速度で接近してくる。
「年寄りの冷や水だな」
サイトがそう呟いた時、較の眼差しに緊張が走り、一気にガンダに迫る。
較の拳が当る直前、ガンダが消える。
「ホープ、小較の前方3メートル!」
較の怒鳴り声に応え、ホープが撃つ。
ホープ超強力弾は、地面を抉り、大爆発する。
『さすがに、簡単にはいかせてくれないな』
爆発場所の少し後方に現れたガンダに較が言う。
「周りの雑魚とは違うって事だね」
ホープが照準を油断無く合わせて言う。
「しかし、俺達二人相手をするのは、無理だな」
ガンダはあっさり頷いた。
『そうだろう。しかし、他の者が逃げる時間は出来る』
較は、ホープに宣言する。
「こいつはあちきの獲物だよ」
ホープは危険な雰囲気を籠めて答える。
「上司の子供だからってそんな横暴が通ると思ってるのか?」
較は笑みを浮かべて答える。
「稼ぎ口なくして、離婚されて、ツモローちゃんの親権をキッドさんに奪われても良いの?」
大きく舌打ちをするホープ。
「卑怯者! 今回だけだぞ!」
ホープは、雑魚の掃討に戻る。
『待て! わしの相手を一人でするつもりか!』
ガンダの言葉に較は笑顔で頷く。
「当然、貴方みたいに戦いを知ってる奴を相手に複数で戦うのは、無粋でしょ?」
慢心笑みを浮かべた較ににサイトが驚く。
良美が肩を竦ませて言う。
「ヤヤって、強い相手好きだからね。一番大切なのは確かに、大切な者を護る事なんだけど、その目的に離れない限り、強い奴と戦うのは好きなのよ」
「ヤヤお姉ちゃん頑張って!」
小較が呑気に応援する。
『舐められたものだ!』
ガンダは、再び消える。
『一体一でやりあう限り、わしの『瞬』は、破れぬ!』
較の腕から血が吹き飛ぶ。
『どんどん行くぞ! 早くもう一人の男を呼べ!』
今度は、背中から血が噴出す。
しかし較は冷静に語る。
「貴方の技は、超回復能力を応用し、筋肉の全力を使った超高速移動。他の連中みたいに、ただ早いのとは格は違い、限界を超越した、筋肉の使用で、実行するたびに筋肉が弾け、激痛が発生する。それを強い精神力で抑制し、超回復能力で、弾けた筋肉の回復を行う事で連続使用してる。強い精神力が無くては成り立たない技だね」
その間にも、較の体のあちこちから血が吹き出る。
『そこまで解っているのなら解るだろう、人間にはわしのスピードには追いつけない事が! もう一人を呼んで、広範囲攻撃するしか手は無かろう!』
焦りが篭った言葉に較は微笑む。
「早いだけでなく、技にも練りこみがある。普通にやったら捉えるのは至難だね。普通にやれば!」
次の瞬間、較が高速で動き、較の背中から、ガンダの腕が突き出て居た。
『何!』
サイトも慌てて近寄ろうとした時、良美が制止する。
「邪魔しちゃ駄目だよ」
「馬鹿を言うな!」
サイトが振り切ろうとした時、較が高らかに唱える。
『シヴァ!』
較の足元から空気が凍りつき、ガンダの動きを封じる。
自分の周りの氷だけを砕き、較が告げる。
「体を使って止める事は、出来るよ」
言葉を無くす、サイトとガンダ。
その時、逃げようとする人狼の一体に照準を向けたホープに較が言う。
「そいつは、汚染されてないから無視して良いよ!」
「了解!」
ホープはあっさり照準を他の人狼に移す。
今のやり取りに顔だけ氷漬けから逃れたガンダが言う。
『どういう意味だ!』
較は、一瞬の躊躇も見せずに言う。
「死に行くあなたには関係ないこと」
較の拳に炎が篭る。
しかしその次の瞬間、一体の人狼が、ガンダに近づくと氷漬けになった胴体を貫く。
『死に行く前に知りたい? 八刃が、こうも貴方達を滅ぼそうとしているか?』
その一言に、ガンダが口から血を噴出しながらその人狼に言う。
『メイル、何を考えている。お前は、オーフェンの助力を得るのを一番押して居たでは、ないか!』
「ホープ、雑魚は後、攻撃を集中して!」
較は叫ぶと、ホープも照準をメイルに向ける。
『もう気付いた、見たいね』
メイルの体が、内部から爆発した。
『メイル?』
ガンダが戸惑う。
血煙が晴れた時、そこには一人の妖艶な女性が立って居た。
『お前は?』
その女性が微笑んで答える。
「あの人狼のメスに侵食してから何度も会ってるけど、自己紹介はまだだったわね。あたしの名前は、メイダラス。オーフェン六頭首の一人、侵食のメイダラスよ!」
『フェニックス』
較の炎と共に放たれた拳と、ホープの弾丸がほぼ同時にメイダラスに迫る。
「盾になってね。その代りに真実を教えてあげる」
メイダラスが微笑みながら告げると、ガンダの体が肥大化し、攻撃を防ぐ。
「逃がさない!」
較が追撃しようとした時、頭だけ残ったガンダを持って、メイダラスが大きく飛びのくと、不死身故に、まだ意識を保っていたガンダに告げる。
「貴方達がミスリルでも死ななくなったのは、ミスリルに対して抵抗が出来た訳じゃないわ。どんなダメージでも魂の力を使って無理やり回復してるだけ。つまり、回復をすればするほど、魂が磨り減ってるだけなのよ」
ガンダの顔が硬直する様を楽しいそうに見ながらメイダラスが宣告する。
「魂が減った分をあたしが植えつけたあたしの欠片が生めて、あたしの駒に近づいていくのよ。不死身な手駒を生み出す素晴らしい考えでしょう?」
ガンダは、胸がない為、声が出てないが、声無き叫びを上げてメイダラスを睨みつける。
「その表情が見たかったのよ」
本当に嬉しそうに言ってからメイダラスはガンダの頭に自分の一部を侵食させる。
「最後にもう一働きしてね」
形だけは元に戻ったガンダが、『瞬』を使って較に攻撃する。
どんどん傷が増えていく較。
「どうしたの? さっきみたいに体をはって止めないの?」
メイダラスが挑発する様に言う。
較は、メイダラスを睨みつける。
「そうしたら、あんたの欠片があちきに食い込むって寸法でしょ!」
メイダラスが残念そうな顔をする。
「そう、八刃の手駒が出来るかもって楽しみにしてたのに」
その間、動きを止めたガンダ、その瞳から涙が流れ落ちる。
「ホープ、手伝って」
較の言葉に頷き、メイダラスから照準を外すホープ。
「一発で決めろ」
ホープの拳銃が、ガンダの周囲の地面を爆発させた。
空中に浮かび上がるガンダ。
落ちてくるガンダに両手に炎を上げて待ち構える較。
『すまない』
ガンダの口から誰に向けてか解らない謝罪があがるのを聞きながら、ガンダの体に向けて両手を振るう。
『アポロン』
手の交差の瞬間発生した圧倒的な熱量が、ガンダを一欠けらも残さず焼き尽くした。
較とホープが再びメイダラスに気を向けたときには、その姿は無かった。
「逃げ足は、早いな」
ホープの言葉に較が首を振る。
「目的を達したから離れただけだよ」
その時、サイトの携帯が鳴る。
サイトが携帯に出ると硬直し、その手から携帯が落ちる。
良美が近寄って言う。
「どうしたの?」
「……姫様がさらわれた」
サイトの呟きに、ホープが較の方を見る。
「詰り、俺達を足止めする為だけにムーンウルフ全てを犠牲にしたって事だな?」
較は頷く。
「あちき達が来たのをチャンスと見たんでしょうね」
そして較は、城の方を見て呟く。
「オーフェンは、何を狙っているのだろう?」