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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
15/52

穴を広げるペンダント

再び現れたメイダラス。そして、八刃のトップクラスの力が炸裂する

「ここが、目的地?」

 キッドの言葉に較が頷く。

「発信機の位置も問題ないし、なにより、お出迎えの準備が整ってるから間違いないね」

 そう言って二人は、一つの廃ビルに入る。

 入った途端、多数の魔獣が床かが湧き出てくる。

「いちいち相手していたら面倒ですけど、大丈夫ですか?」

 較の質問にキッドが余裕たっぷりに答える。

「問題ないわよ」

 キッドはバイクに乗ったまま多数の魔獣の群れの中に突っ込んでいく。



「さすがに、オーフェンハンターのトップクラス、元十三闘神の一人、騎神キッドね。でも、ここにあの娘が来たのは、幸運かもしれないわ。ここだったら、必殺の白手を倒せる。あの親子の所為で幾つもの計画が潰された事か。ここで始末してあげる」

 メイダラスが凄惨な笑みを浮かべながら、突き進む、キッド達の映像を見る。



「このドアの向こうだけど、間違いなく罠だね」

 較は、そういいながらバイクから降りる。

「私が先行して、様子を見る?」

 キッドの言葉に較は、首を横に振る。

「相手がオーフェンだと、何してくるか解らないからあちきが行きます」

 扉を開く較、その前には真一郎が繋がれていた。

「待っていたよ。早くロープを外してくれ」

 真一郎の言葉に頬を掻く較。

「こんな解りきったトラップで何するつもりなんだろう?」

 キッドが肩を竦めて言う。

「あっちは、こっちが人を疑る事を知らない善人だとでも思っているんだろう」

 メイダラスが奥に現れて溜息を吐く。

「付き合いが悪いわね。普通は、そこで近付いてロープを解いたところを隠し持っていたナイフで刺されるのよ」

「あちきは、老人の腕力でナイフ刺さるほど鍛え方が甘くないんだけどね」

 較は平然と言った後、無雑作に近付くと真一郎は、ロープをぶちきり、その手に大型のナイフを握り、突っ込んでくる。

 較は、体を半身にして、勢いを後ろに逃がしてやると、左手を真一郎の背中に当てる。

『バハムートプチブレス』

 較の気が真一郎の内部のメイダラスの触手を殲滅する。

「もう、老人は労わらないといけないって教わらなかったんですか?」

 較の言葉にメイダラスは、憎しみを込めた瞳を向けて言う。

「貴方達の所為で、あたしの父親はこの世界から消えたのよ!」

 較は平然と返す。

「そっちの所為で、あちき達の祖先はかなり死にましたけどね」

 メイダラスは、怒鳴り返す。

「底辺を這い回る人間の亜種と同じにしないで!」

 較は鋭い目付きになって言う。

「その選民嗜好で、人やこの世界で生きる者に害を成す以上、あちき達とは一生相容れない。行くよ」

 無雑作に間合いを詰めようとした時、部屋全体が歪む。

 舌打ちする較。

「キッドさん、あちきは、良いですからその人連れて、出てください!」

 キッドは、反論一つせず、素早く、真一郎を掴むとドアに向かう。

 ドアが生き物に様に縮んでいくが、加速したキッドは、塞がったばっかりの出口をぶち開けて出て行く。

「逃げられたわね。でも良いわ、元々、貴女が目的だったんだから」

 メイダラスは、そう告げると、指を鳴らす。

「この魔獣は、普通では、召喚出来ないの。理由は、簡単、今の世界で生み出せる穴では、通れないから。でもこのペンダントがその不可能を可能にした」

 そう言って、真一郎が生み出したペンダントを見せ付ける。

「このペンダントには、異界との扉を開く能力は無かった。でも穴を一時的に拡張する能力があるのよ」

 手を叩く較。

「なるほどね、元の穴が大きくなれば、その分召喚に掛かる負担が減るって事だね。でもそれだけじゃ、異界との道を作る助けにはならないって事だね」

 メイダラスが肩を竦めて言う。

「そうよ、幾ら大きく出来た所で、元の穴が塞がれば消える。あたし達が望む、異世界との道、安定したゲートを作るのには、役立たない。作った後の、ゲートの拡張としては、使えるのが救いね」

 較は、動きを封じようと迫る、部屋に偽装していた魔獣の端子を気で弾き告げる。

「それでも、それを貴方達に渡す訳には行かない!」

 一気に間合いを詰める較。

 その時、メイダラスがその触手で部屋を覆う魔獣と繋がる。

「油断大敵ね!」

 先ほどまで、気で弾いていた魔獣の端子が較に纏わりつき、動きを封じる。

「あたしも、必殺の白手と正面から渡り合う気は無いわ。普通にやって負ける気はしないけど、いざとなったら、その右手の力で全てを消し飛ばされるからね」

 較は、両手両足を封じられた状態で空中に縛り付けられた。

 しかし、較は動揺一つせず言う。

「この位で勝てると思ったの?」

 メイダラスは微笑み、首を横に振る。

「まさか、この後、この魔獣を暴走させるわ。そうなったら最終的には自滅するけど、貴女はその巻き添えを食らって死ぬわね」

 膨張を始める魔獣に較が苦笑する。

「いまいちの手だね」

「そう? 暴走した時の増殖力は並じゃないわよ」

 余裕たっぷりな態度で、メイダラスが言うが、較は淡々と唱える。

『モルボル』

 しかし、何もおきなかった。

「何がしたかったの?」

 笑みを浮かべるメイダラスに較が答える。

「この手の増殖系の魔獣って、結構多くてね、当然対抗策ってあるんだよ」

 次の瞬間、較を拘束していた端子が崩れていく。

 較が本当の地面に降り立った時の振動と共に、部屋を覆った魔獣が崩壊し、消滅して行く。

「異邪と違って魔獣は、こっちの世界の属性を有してる。だからこそ、こっちの世界の物質や力を使って無限増殖なんて出来るんだけどね。詰り、弱点である物質を連鎖合成する素を打ち込んでやれば、その増殖能力が逆に弱点物質の増殖までやっちゃうんだよ」

「なるほど一筋縄では行かないのね」

 メイダラスが苦笑したと思うと、再び指を鳴らす。

「ならば第二段よ」

 床が開くとそこには、獣の姿をベースにした魔獣の群れが居た。

「穴を大きく出来れば、この世界の生き物を直接、異界の力に晒す事が出来る。そうして生み出した魔獣達、数だけは居るわよ」

 舌打ちをする較。

 穴から這い上がってくる魔獣は、一気に較に迫る。

『オーディーン』

 較の手刀は、容易に魔獣を切り裂き消滅させるが、メイダラスが言うように、数だけは大量に居て、次から次へと襲い掛かり、較の足を止める。

「さあ、何時まで持ちこたえられるかしら?」

 メイダラスが微笑みながら呟いた時、それは、現れた。

 それは、爆炎を纏った獅子、触れる魔獣を爆散させて、一気に魔獣達を蹴散らしていく。

「相手の時間稼ぎに付き合うなんて、まだまだ未熟だな」

 そうして現れたのは、百母の長、西瓜であった。

「百母の長がもう来たの!」

 メイダラスの顔から余裕の笑みが消える。

「こっちも遊びじゃないからな。行け、爆炎獅子バクエンシシ

 西瓜の言葉に答え、爆炎獅子は、魔獣を無視してメイダラスに迫る。

「ここまでのようね」

 メイダラスが、ペンダントを叩き割る。

 驚く較に西瓜が言う。

「気をつけろ、異界との穴が急速に拡大しているぞ!」

 メイダラスが高笑いをあげる。

「ここは、無数の異界の穴が展開するポイント。そこでこのペンダントの能力をリミッターなしで解放したら、貴方達にも防ぐことは出来ないでしょう!」

 西瓜が、較を見る。

「気配を探ったが、異界の穴の位置から推測して、逃げるのは無理だ。私一人なら、自分の意志力で、異界からの干渉を押しのける事は可能だ」

 較は少し思案した後に言う。

「残念ですけどあちきには、無理です。この規模の異界からの干渉を押しのけるだけの意志力はありません」

 冷静な言葉に、西瓜が言う。

「いざとなったら暴走する前にお前を殺すぞ」

「お願いします」

 あっさり頷く較。

 その時、聞こえてはいけない声が聞こえてきた。

「そんな事をさせる訳ないでしょうが!」

 較は頭を抑えながら振り返ると、そこには、良美が居た。

「一応確認だけど、小較は?」

 良美は異界の穴が広がり続ける中心に居る較に近付き言う。

「おじいさんをキッドさんから受け取って、外に逃げ出してるよ。あたしは、キッドさんに連れてきて貰ったの」

 較が少し攻める視線をキッドに向けるが、キッドは、普通に較の傍に来て言う。

「今から逃げても間に合わないわ」

 頷き較が言う。

「白牙様の力を使います」

 西瓜が較を見る。

「認められると思っているのか?」

 大きく溜息を吐いて較が言う。

「全然、でもヨシの命が掛かってますから後で咎められてもやります」

 強い意志を籠めた瞳を向ける較に西瓜が言う。

「こんな状況で白牙様の力を使えば下手をすれば、時空に歪みを産む。それでもやると言うのか?」

 頷く較に良美が続ける。

「当然、座して死ぬなんてあたしもヤヤも嫌。最後の最後まで足掻いてやるんだから!」

 西瓜は笑みを浮かべて言う。

「やはりお前は良い。他の長の中ではお前の処分を考える奴が居るが、私はお前をかっている」

 そして西瓜は較を見て言う。

「見逃してやるが、問題が起こった時の責任は全部お前が取れ」

 較は頷いてから周りを見回してから言う。

「あのー何処に向けて放ったら一番安全だと思いますか?」

 較の質問に西瓜が苦笑しながら上を指す。

「上を狙え、白牙様の力だったら、異界の穴が完全に消滅する。その時点で私が、全員を連れて脱出する」

 較は頷くと右手を上に向ける。

『ホワイトファング』

 白い光が、上部を貫いた。



「怖かったよ!」

 小較が泣きながら較にしがみ付いてくる。

「ごめんね。まさか空間の歪みがここまで広範囲に広がってて、ホワイトファングの使用で急激に改善して、周囲の建物が崩壊するとは思わなかったの」

 較が周りを見回すと、周囲の建物が完全に倒壊していて、小較達が避難していた場所にも、多大な落下物があった。

「人が居ない廃棄ビル群で、良かったな」

 西瓜の言葉にキッドも頷く。

 そんな中、真一郎が地面でのたうっている良美を見ながら言う。

「彼女は大丈夫なのか?」

 小較が頷く。

「何時もの事だから大丈夫、二三日苦しんだ後は、平気にしてるよ」

 西瓜は、本気で感心した様子で言う。

「大した娘だよ、今味わっている苦しみは、常人だったら自殺してもおかしくない物だ。それを覚悟の上で白風の次期長に白牙様の力を使わせるんだからな」

 真一郎が呆然とする中、その声が聞こえてくる。

「これで、もう必殺の白手の奥の手は使えないわね」

 較達が声の方を向くとそこには、メイダラスが居た。

「貴女のそれは、連射は、出来ても、間隔をあけて放つことは、出来ない。そっちの子が堪える準備が出来てないからね。そんな状態でもう一発放てば、そっちの子が発狂するわね」

 余裕たっぷりの言葉に較が歯軋りをする。

 そしてメイダラスが腕を上げると較達が出てきた穴から、十メートル以上ある、人型のスライムゴーレムが現れる。

「さっきの穴を使って大量のスライムを召喚し、あたしの力で融合させた、スライムゴーレム。必殺の白手の奥の手が無い今、抵抗する術は無いわね!」

 勝利を確信した笑みを浮かべるメイダラスだったが、較は、無視して良美を抱き上げる。

「すいませんがここは、お願いします」

 西瓜にそう告げると、較は、良美達が乗ってきた車に向かう。

「待ってよ!」

 小較も同乗する為に歩き出す。

 戸惑う真一郎にキッドが言う。

「すいませんが、貴方は私に付き合ってもらいます」

 ヘルメッドを渡すキッドに真一郎が言う。

「しかし、あの化物が襲ってくるのでは?」

 キッドが肩を竦めて言う。

「あそこに居る人は、エンと同クラスの人です。デカイだけの化物では、相手にもなりません」

 そのやり取りを見て、メイダラスが怒鳴る。

「舐めるんじゃないわ! このスライムゴーレムは、中級異邪と同等の力を持っているのよ!」

 その中、西瓜がオバールを埋め込んだ龍の木彫りを取り出す。

『百母西瓜の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、地撃龍チゲキリュウ

 木彫りは、地面を取り込み、龍と変化するとそのままスライムゴーレムを覆いつくす。

 その圧倒的な力に怯むメイダラスだったが、必死に強気を維持して怒鳴る。

「どんなに強い力でも、力だけでスライムゴーレムは完全に滅ぼす事は出来ないわ!」

 西瓜が苦笑して、先程から西瓜の傍に居た爆炎獅子を地撃龍の頭に移動させる。

『大地を取り込み敵を撃破する龍、爆炎纏いし誇り高き獅子、百母西瓜の名の元に、その身を一つにとし、更なる高みに在れ。融合獣晶ユウゴウジュウショウ

 呪文に答えて、地撃龍と爆炎獅子が融合し、爆炎を纏った地撃龍が生まれる。

 その炎は、一瞬でスライムゴーレムを消滅させた。

 その風景を見ていた真一郎が愕然とした表情で告げる。

「こんな出鱈目な力があると言うのか?」

 キッドは肩を竦めて言う。

「八刃の三強の一人ですからね」

 西瓜がメイダラスを見て言う。

「東京を離れられない私の所に態々きて貰ったのだ、ただでは帰さんよ」

 西瓜の目が更なる鋭さを帯び、爆炎地撃龍は、メイダラスにその牙を向ける。

「止めて!」

 メイダラスが叫ぶがその口が容赦なくメイダラスを捉えて粉砕した。

「これで一体減らせたな」

 余裕たっぷりな西瓜であった。



「結局あのおじさんは、どうなったの?」

 病院のベッドの上で格闘技雑誌を読みながら良美が聞くと、リンゴを剥いていた較が言う。

「オーフェンに狙われているから、八刃で確保すると、色んな所に交渉中って所だよ」

「ふーん。それで小較は?」

 較が剥いたリンゴを齧りながら良美が質問を変えた。

「正式に警護出来るまでは、キッドさんにお願いしてるんで、その手伝いに行ってる」

「ああ、一応保護者って事だよね」

 良美の言葉に頷きながら席を立つ較。

「それじゃ又来るから」

 良美が首を傾げる。

「どうして? 暇なんだから一緒に話そう」

 較は肩を竦めて言う。

「この後、又長達に呼び出し食らってるの。その後、今回の事件の後始末で色々動かないといけないんだよ」

「大変だね。がんばって」

 のんきに応援する良美に少し殺意を覚えるが意味が無いので手を振って病室を出る較であった。



「今回の成果は、このペンダントだけですか?」

 オーフェンの六頭首の一人、ファザードの言葉にその女性が、忌々しげに答える。

「そうよ、百母の長が出てこなければ、必殺の白手は、やれた筈だったのよ!」

 その答えに同じく六頭首の一人、魔磨が鼻で笑いながら言う。

「言い訳はみっともないわね」

 その言葉にその女性が反論する。

「あの娘に、オーフェンの力を集結させたバハムートプロジェクトを阻止された貴方には言われたくないわね」

 魔磨の視線が鋭くなるなか、六頭首の一人、孫が言う。

「済んだ事は良い、失敗を踏まえて、次の計画を成功に近づける。そのためにはそのペンダントも有効に使える。頼んだぞ、メイダラス」

 その言葉に、壊れた筈のペンダントを持つその女性、分身と物質複製能力を使って、ペンダントを持って逃げ出したメイダラスが言う。

「任せてください」

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