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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
13/52

幼い戦士

小さな小較が一人の老人と出会う。そして、小較の激戦が始まる

「ヤヤお姉ちゃん!」

 小較が学校から帰ってきた較の腰にしがみつく。

「どうしたの?」

 聞き返す較に小較は嬉しそうに、学校で作った、紙粘土のアクセサリーを見せる。

「学校で作ったの。ヤヤお姉ちゃんにあげる」

 較は、笑顔でそれを受け取る。

「ありがとうね、小較」

 横に居た良美がそのアクセサリーを見て言う。

「ダサいな」

 その一言に、小較が固まる。

「ヨシ、もう少し言い方があるでしょ?」

 較が窘めるが、良美は拳を握り締めて言う。

「妥協させてはいけないんだ。ダサいものはダサいって教えてやらないとな」

「だからダサいって言わないであげて」

 較のフォローに小較は俯きながら言う。

「ダサいのは否定しないの?」

 較は慌てて言う。

「最初なんだから仕方ないわよ。でもあちきは、小較が一生懸命作った豚のペンダント嬉しいよ」

 小較は較の手からペンダントを奪い取って駆け出す。

「猫だもん!」

 どんどん小さくなっていく小較の後姿を見ながら大きく溜息を吐く較。

「失敗した」

 良美は訳知り顔で言う。

「こうして少しずつ大人に成っていくんだよ」

「だったらもう少し大人になってよ!」

 較の言葉に良美は遠くを見ながら呟く。

「あたしは、永遠に子供の心を忘れない大人になりたい」

 頭を抑える較であった。



 小較は、公園で一人泣いていた。

「一生懸命に作ったんだもん」

 思いっきり握っていた所為で、更に形が歪んだ猫のペンダントを見つめる小較。

「可愛い猫のペンダントだね」

 後ろからの声に驚き振り返る小較。

 そこには、一人の優しそうな老人が居た。

「猫だって解るの?」

 小較の質問に老人は不思議そうに答える。

「猫にしか見えないけど他の生き物だったのかい?」

 その言葉に首を横に振り嬉しそうに小較が言う。

「猫だよ!」

「それは良かった。もし間違ってたら、どうしようかと思ったよ」

 老人が本当に安堵した様子をしているので小較が笑う。

「そうやって笑っているほうが可愛いよ」

 老人の言葉に小較が驚く。

「何で泣いてたかは知らないけど、君達には明るい未来がある。楽しく笑って居た方が、幸せになれる。泣いてたら幸せも逃げちゃうからね」

 そう微笑む老人に小較は嬉しそうに頷く。



「良美がダサいって言うんだよ!」

 老人に買ってもらったクレープを食べながら、小較が文句を言う。

 老人は微笑みながら、小較の愚痴を聞き続けて居た。

 言いたい事を言い切った後、小較が首を傾げる。

「おじいさんは、どうして公園に居たの?」

 老人は苦笑して言う。

「おじいさんは悪い人達に追われてて、逃げているんだ。でももう巻いた筈だから大丈夫だよ」

「残念だが、そう簡単に逃げられると思われては困りますよ、大徳寺ダイトクジ真一郎シンイチロウ博士」

 声のした方を向くと、そこには、白い神父の服を着た男達が並んでいた。

 老人、大徳寺真一郎は、小較の前に立ち告げる。

「君たちには、協力できない。諦めてくれないか?」

 中央に立つ比較的紳士的な面立ちの男が残念そうに言う。

「悲しい事です。我々の教えを理解していただけないとは。しかし、我々は辛抱強く、教えを聞いて頂くだけです」

 男が指を鳴らすと、数人の部下が真一郎に迫る。

「逃げなさい!」

 真一郎が小較に叫ぶが、小較は、無造作に男達の前に出て言う。

「あたしは、白風小較。その名に抗う決心があるんだったら相手になるよ!」

 男が苦笑する。

「お嬢さん。何のつもりかは知りませんが、邪魔です」

「私の事は良いから、逃げるんだ!」

 真一郎が小較を強引でも逃がそうとしている間も、男の部下のそれもがたいが良い奴等が突っ込んでくる。

 小較は、触れる直前に一歩前進して、拳を当てる。

爆弾岩バクダンイワ

 小較が掌を広げると、男が血を噴出して倒れる。

 信じられない物を見た顔になる中、小較が強い視線で相手を睨み言う。

「あたしは、おじいさんを護る」

 真一郎が慌てて前に出て言う。

「止めてくれ。君が強いのは、解った! でも私なんかの為に危険な目に会う必要は無い!」

 その言葉に小較は笑顔で答える。

「そういってくれるおじいさんだから護りたいの。あたし達の力はその為にあるってヤヤお姉ちゃんも言ってる」

 前に出る小較。

 そして、男達が、懐から拳銃を取り出す。

「大人しくしてれば良いものを」

 真一郎は慌てて小較の盾になろうとしたが、小較がそれを牽制して言う。

「危ないですよ。常人は、拳銃の弾に当たったら大怪我しますよ」

「君も危ないだろう!」

 真一郎が叫んだとき、一発の弾丸が小較に迫る。

『アテナガントレット』

 小較は素手で弾丸を弾く。

 言葉を無くす男達。

「君は?」

 真一郎の言葉に小較が少し悲しそうに言う。

「生物兵器だよ。遺伝子操作で、白風の人と同じ力を後天的につけさせられたの」

 真一郎は、その言葉を認めたくなかった。

 しかし、裏の世界を知る真一郎には、解ってしまった。

 それが、嘘でも誇張でもない事が。

「詰り、キメラの一種ですね。実に醜い。真実の神の力の前に散りなさい」

 中心に居た男が、服の前を開き小瓶を取り出して地面に叩きつける。

 すると、そこから雷を纏った狼が生まれる。

「見よ! これぞ神の御使いだ!」

「気をつけろ、それは尋常な生き物では無い!」

 真一郎の言葉に、小較が頷く。

「間違いない、魔獣だよ。それも自然に生まれたものじゃない。誰かが召喚した物!」

 構える小較に雷獣が、襲い掛かってくる。

『オーディーン』

 小較の手刀が放たれるが、強力な雷がそれを弾く。

 雷を纏った爪が小較に直撃する。

「小較ちゃん!」

 真一郎が叫ぶ中、小較が地面でバウンドする。

「これが神の御使い力だ!」

 男が大見得切った時、小較が空中で体勢を整えて両足で着地する。

「さすがに、戦闘用に特化された魔獣は強敵だね」

 真一郎が叫ぶ。

「逃げるんだ、君でも勝てるか解らない。そんな奴を相手にする必要は無い!」

 苦笑する小較。

「相手の強さなんて戦うのに関係ないよ。関係あるのは、護りたい人が居るかどうか? それだけだよ」

 小較は、特攻をかける。

「何度やっても無駄だ。お前の力では神の御使いには、勝てない!」

 男が叫ぶと、雷獣も小較に向かって駆け出し、再び小較にその爪を放つ。

 小較は、紙一重のところでその爪をかわすと、その口に右手を突きこむ。

『爆弾岩』

 雷獣の頭が弾ける。

 血だらけの右手を垂らしながら小較が言う。

「外皮が強力なら、中から壊せば良い。それだけだよ」

 男は、再び小瓶を、それも複数取り出す。

「まだだ! まだ私達の理想が負けたわけでは無い!」

 小瓶が弾けて、三体の雷獣が放たれる。

 真一郎は駆ける、言葉では止まらない小較の盾に成る為に。

「おじいさん、退いて! あたしは、絶対におじいさんを護る!」

「駄目だ! 君みたいな子供を傷つけてまで護られる資格など私には無い! 私がこんな下らないものを作らなければ、良かったのだ」

 真一郎は、懐から、一つのペンダントを取り出す。

「これは、お前達に渡す。だからこの子だけは見逃してくれ!」

 真一郎の言葉に男が叫ぶ。

「もう遅い! 神の御使いを傷つけたその娘は、神の御使いに滅ぼされる運命なのだ!」

「おじいさん!」

 小較が叫び、小較を全身で庇う真一郎に雷獣の牙が迫ったとき、突風が巻き起こる。

『ソニックブレード』

 雷獣の後ろを高速で何かが通り過ぎた。

 そして、次の瞬間、雷獣達が真っ二つになって消えていく。

 高速で通り過ぎたそれは、ターンしながら止まった。

「邪魔をするな!」

 男の言葉に高速で雷獣の後ろを通過し、その時に発生するソニックブームを操り、雷獣をあっさり倒したライダーがバイクから降りる。

「正直、感謝して貰いたい状況だと思うけどね」

「キッドさん!」

 小較が顔を綻ばせて叫ぶ。

「知り合いなのかい?」

 真一郎の言葉に小較が頷く。

「お父さんの仕事仲間だよ」

 そのライダー、金髪の美女、小較の父親、焔が持つオーフェン追跡組織、オーフェンハンターに所属するキッドが苦笑する。

「部下で十分よ」

「ふざけるな! お前が邪魔をしなければ、その者たちを殺せたものを」

 激昂する男の言葉にキッドは鼻で笑う。

「万が一でもそうなっていたら、貴方達はこの世の地獄を見る事になっていたわね」

「どういう意味だ?」

 男が不機嫌そうに問いただすとキッドが言う。

「小較は、最強の鬼神、エンの娘で、そして地上最強の攻撃力を持つ者、必殺の白手、ヤヤの妹よ。その二人を相手に争うのがどれ程無謀かなんて、この業界に居れば知らない人間は居ないと思うけど」

 その一言に、男達は後退する。

「まさか、あの白風だったのか?」

 小較が不機嫌そうに言う。

「どの白風だって思ってたの?」

 男達が青褪めて行く。

「冗談じゃないぞ! 必殺の白手って言えば、その右手が白く光るのを見たもので生き残った者は居ないって話だぞ!」

「ホワイトハウスを半壊させたのもあいつの仕業だって話だ」

「最強の鬼神には、何があっても逆らうな。それがこの業界の不文律だぞ」

 もう一度、小較を見た後、逃げ帰っていく男達。

 それを見送ってからキッドが小較の傍に行く。

「ありがとうございます」

 頭を下げる小較にキッドが頬を叩く。

「何で叩くの?」

 小較の言葉に、キッドは真一郎を指差して言う。

「その人の言葉を聞いていた?」

 小較が真一郎を見て頷く。

「凄く良い人。だからあたしは、一生懸命戦ったよ!」

 キッドが逆の頬を叩く。

「あたしは、間違ってない!」

 小較の言葉にキッドが怒鳴る。

「もし小較にもしもの事があったら、その人も、そしてヤヤがどれだけ悲しむかと考えた!」

 小較が口ごもる。

「でも、あたしが戦わなかったら……」

 真一郎はそんな小較に微笑み言う。

「私が助かっても、もし君が傷ついたら私は、死ぬほど後悔していた。だからもうこんな無茶はしないでもらえないかい?」

 戸惑う小較にキッドが言う。

「自分の力量を考えなさい。今の場合だったら、その人を連れて逃げる事も出来る。ただ我武者羅に突き進むだけが戦いでは無いわ。自分の力量を踏まえて、正しい選択をするそれこそが大切な事」

 真一郎も頷くのを見て、小較が遂に泣き出す。

「ごめんなさい!」

 そして真一郎は、小較が泣き止むまで優しく抱きしめていた。



「出番無くなったね」

 公園の外で成り行きを見守っていた良美が較に言うと較が肩を竦ませて答える。

「残念だけど、ハードトラブルスターターって言われるあちきが言っても説得力が無いからね」

 少し恨みがましい目をして良美が言う。

「ヤヤは、人の心配を無視して、自殺技を使った前科者だもんね」

 問題の後遺症がある右手で頬を掻きながら較が言う。

「それにしても、今回の事は大事にならないと良いんだけどなー」

 良美は、諦めきった顔をして言う。

「無理でしょうね、ヤヤが関ったら、全て大事になる定めなんだから」

「あっちに綺麗な鳥が居るなー」

 遠くを見て少し現実逃避をする較であった。

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