#2 「不可解な部屋/始まり」
……翌日。
「……全然寝れたな。」
椛山の件で眠れなかった僕だったが、想像以上の疲労があったおかげか、いつの間にか意識がなくなったかのように眠りについていた。
ふわぁ〜と大きく僕があくびをしていると……
「おはようございま……朝から変顔ですか……?」
部屋の扉を開けた椛山はあくびしている僕の顔を見て少し引く。
「いや違うからな!?ていうか、扉開けるタイミング悪すぎだろ!?」
「……まぁ、そういうことにしておきますか。」
「ということはあんまり信じてないな」
「ええ」
また恥ずかしい過去が増えた、そう思う僕であった——。
【不可解な部屋】
——朝食の支度がもうすぐで出来るので、食堂に来てください。
と、言われたが。
「いや食堂って何処だよ」
食堂どころか、自分がいた部屋の場所が館のどこかさえ知らなかった僕は、とりあえず部屋を出ていろいろ見て回ることにした。
いろいろ見回っていた僕だが、この館でただ一つ、明かりの点いていない「とある部屋」が気になった。
「……結局、食堂が何処かわかんないし、ちょっとだけ見てみようかな。」
僕はそう思い、その部屋の扉を開けることに。
「……なんだよここ……。」
僕が目にした部屋——、
それは。
——少なくとも、ここ十何年かは使っていないであろう、古びた書斎だった。
古びた本に、かなり高そうな万年筆。
やはり椛山財閥は昔から金持ちだった、そう思わせられるような、そんな部屋であった。
そんな貴重で高級そうな品々を見てさらに興味が湧いた僕は、本棚にあるアルバムのような物を取り出そうとする。
「……うわっ!!もう、なんで他の本も落ちてくるかなぁ……。」
アルバムのような物を取り出そうした時に、他の本も一緒に落ちてきてしまった。
「めんどくさいなもう……。」
そう言いながら落ちてきた本を一つずつ戻していた時……
僕はとある一つのメモのような物を見つけた。
そこに書かれていたのは……
「"ICC"…I' so h py y u've a p ared
be o e m . I'll never let you go again...」
上の文の方は文字が掠れて見えない。
だが、下の文は……。
「……もう絶対に離さないから……?どういうことだ……?というか、この最初のアルファベットは何を示してるんだ……?」
そして、僕はもう一つ、この部屋を見て疑問に思ったことがある。
「……椛山の使用人は、何故この部屋だけ掃除していないんだ……?」
そう。一つ本を取り出そうするだけでほこりが驚くほど出てくる。書斎の机にもほこりや小さい虫がいるのが見える。
ある程度色んな部屋を見回った僕だが、こんなにも汚れている部屋は一つもなかった、誰も使っていなさそうな倉庫だったとしてもだ。
何故か嫌な予感がした僕は、早めにこの部屋を出ることにした。
そして僕が部屋の扉を開けようとした——、
——その時。
「五月雨さーん?もう朝食の用意できましたよー?」
「!?」
「……?……気のせいか。」
なんとか僕はギリギリで扉を静かに閉め、椛山に気づかれるのを回避した。
というか、
「……なんで隠れてんだ僕……。」
「やっぱりここに居たんですね五月雨さん」
「ぎゃあぁぁぁ!!?」
いつの間にか横に居た椛山に僕は絶叫する。
「……はぁ、もうなんでこんなところにいたんですか……?」
僕は正直にこう答える。
「え、えっと……食堂が何処か分かんなくて、色々部屋を見回ってたら最終的にここにたどり着いてさ……。」
「……そうですか。使用人からもう伝えられているものかと思っていたのですが……。申し訳ございません。」
「い、いやこちらこそ変にウロウロしててすまなかった。」
「じゃあ、早く食べないと朝食冷めちゃいますから、一緒に食堂へ向かいましょう。」
「あ、ああ。」
《……見られてないよね。あのメモ……。》
「……?なんか言ったか?」
「いえ、何も。」
【始まり】
「……美味しいな。このフレンチトースト」
あの後、椛山と一緒に食堂に着いた僕は、椛山の専属シェフが作ったフレンチトーストに感動していた。
「まぁ……普通ですね。」
「……これが普通ってあんたの舌どうなってんだよ」
「貴方こそ、どれだけバカ舌なんですか?」
「……お嬢様もご来訪者の方も、あまりそんなお汚い言葉を使いになさらないでください。」
椛山の隣にいる60代くらいの老執事がやんわりと注意する。
「……ちょっと言い方が悪かったな。すまん。」
「……私も言い過ぎました。申し訳ございません。」
「……で、今日は土曜日ですが、この後どうするんですか?五月雨さん。」
「……。」
……まだ会って間もない椛山に、自分のことについて話しても良いのだろうか……?
「……私で良いなら、聞きますよ。悩み事とか聞ける範囲なら。」
「……ありがとう。実はさ——」
椛山がここまで言ってくれたのだから、言わないわけにはいかない。
——「もう僕には、帰る場所がないんだ。」
【次回へ続く】




