第7話 次は本番
次の作戦が告げられたのは、
帰還から二日後だった。
第七特別部隊、全員招集。
ブリーフィングルームの空気は、
前回とは少し違っていた。
緊張ではない。
期待だ。
「次は、テストではない」
上官の一言で、
室内が静まる。
「市街地内。
ランクⅣ相当の反応を確認」
画面に映し出される地図。
赤く示された区域は、
まだ人の生活が残っている場所だった。
「避難は進めているが、
完全ではない」
つまり、
失敗できない。
「第七特別部隊を主軸に、
最短時間での排除を狙う」
“主軸”。
その言葉が、
悠真の耳に残った。
「テスト戦場での成果を踏まえ、
現行編成を維持する」
異論は出ない。
出せる空気ではなかった。
ブリーフィング後、
装備区画。
葛城が、
黙って防具を点検している。
「……久遠」
少しして、
低い声で呼ばれた。
「次、
長丁場になる」
「はい」
「回復、
追いついてるか」
悠真は、
ほんの一瞬だけ迷ってから答えた。
「……問題ありません」
“今は”。
その言葉を、
あえて付け足さなかった。
「……そうか」
葛城は、
それ以上聞かなかった。
聞いたところで、
答えは変わらないと分かっている。
「無理だと思ったら、
合図しろ」
「……合図、
出したら」
「止める」
即答だった。
だが、
それが本当に可能かどうか。
二人とも、
口にしなかった。
「相変わらず、
優しいね」
背後から、
軽い声。
鷹宮だった。
「でもさ」
装備を肩にかけながら、
続ける。
「今回は市街地だろ?
止めたら、
どうなると思う?」
葛城が、
鋭く睨む。
「……黙れ」
「事実だろ」
鷹宮は、
悪びれずに笑った。
「俺たちが全開で行けるのは、
誰のおかげだと思ってる?」
視線が、
悠真に向く。
「期待してるぜ」
それは激励の形をした、
圧力だった。
夜。
基地の廊下は、
いつもより静かだ。
明日は出撃。
悠真は、
自室に戻る前に、
通信端末を開いた。
日和からのメッセージは、
まだ来ていない。
代わりに、
医療局からの定期通知。
《久遠日和 様》
次回検査日程の変更について
内容を、
最後まで読む前に、
端末を伏せた。
――考えるな。
今は。
考えたら、
立っていられなくなる。
自室。
ベッドに腰を下ろし、
ゆっくりと呼吸を整える。
身体は、
動く。
まだ、
動いている。
(……明日も、
同じだ)
そう思い込もうとする。
だが、
テスト戦場の感覚が、
ふと蘇る。
削られ方が、
明らかに変わっていた。
量ではない。
質だ。
戻るまでに、
時間がかかるものを、
削られている。
それでも。
立つ。
立たなければ、
守れない。
守れなければ、
帰れない。
久遠悠真は、
装備棚の前に立ち、
明日の準備を始めた。
これは、
テストではない。
だがまだ、
破滅でもない。
そう信じられるうちは。




