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REMNANT ――境界に残ったもの  作者: 灰谷 くぐり
第一章:制御できなかったもの
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第5話 小規模テスト戦場

第5話

小規模テスト戦場(改稿)


 輸送車の中は、静かだった。


 第七特別部隊は、

 無駄な会話をしない。


「対象は単体。

 ランクⅢ想定」


 前方席で端末を操作しているのは、

 霧島だった。


 淡々とした声。

 感情の起伏がない。


「被害想定、最小。

 制限は設けない」


「最初から全開かよ」


 低く笑ったのは、

 葛城だ。


 大柄な身体を揺らしながら、

 手袋を締め直す。


 指先が、

 わずかに震えている。


「まあ、久遠がいるしな」


 その名前に、

 悠真は視線を上げた。


「……よろしく」


「おう」


 葛城は短く頷く。


「無理そうなら、言え。

 ……言えるなら、だけどな」


 冗談めかしているが、

 視線は真剣だった。


「で?」


 最後に口を開いたのが、

 鷹宮だ。


「俺はどこからぶっ放せばいい?」


 霧島が答える。


「中央突破。

 出力制限なし」


「了解」


 嬉しそうに、

 鷹宮は笑った。


 その瞬間、

 悠真は理解する。


 ――この部隊は、

 最初から限界を越える前提で組まれている。


 戦場は、

 廃棄された物流施設だった。


 天井は崩れ、

 床には黒い焦げ跡。


 中央に、

 《コラプサー》が立っている。


「行くぞ」


 鷹宮が、

 躊躇なく能力を解放した。


 空気が、

 爆ぜる。


 寿命を燃やすタイプの出力。

 普通なら、

 数秒で身体が悲鳴を上げる。


 ――その代償が。


(……来た)


 悠真の胸を、

 重く圧迫する。


 息が、

 浅くなる。


 肺が、

 縮むような感覚。


 同時に、

 霧島の能力が展開された。


 空間が歪み、

 防御壁が形成される。


 その瞬間。


 悠真の喉が、

 ひくりと引き攣れた。


(……肺か)


 霧島の代償。

 肺機能の低下。


 それが、

 そのまま流れ込んでくる。


「葛城、前!」


「了解!」


 葛城が踏み込む。


 肉体強化。

 痛覚遮断。


 その代償は――


(……神経)


 悠真の指先が、

 震えた。


 感覚が、

 少しずつ鈍っていく。


 三人分。


 同時。


 重ね掛け。


 普通なら、

 一瞬で倒れる。


 なのに。


 悠真は、

 立っていた。


「……まだ行けるぞ」


 鷹宮が、

 振り返りもせずに言う。


「久遠、倒れるなよ」


 倒れたら、

 撤退。


 倒れなければ、

 続行。


 それが、

 第七のやり方。


 コラプサーが、

 圧倒的火力に押され、

 崩れ落ちる。


 戦闘終了。


 静寂。


 悠真は、

 膝に手をついた。


 呼吸が、

 少し遅れて戻ってくる。


「……異常なし、か」


 霧島が、

 淡々と記録を更新する。


「やっぱすげえな」


 葛城が、

 悠真を見て言った。


「壊れねえ」


 鷹宮が、

 楽しそうに笑う。


「最高じゃん。

 次も行けるな」


 その瞬間、

 悠真は確信した。


 この部隊にとって、

 自分は――


 限界を消すための存在だ。


 テスト戦場は、

 成功と判断された。


 だが、

 久遠悠真の中では。


 もう一度同じことをしたら、

 確実に何かが壊れる。


 その予感だけが、

 はっきりと残っていた。

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