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REMNANT ――境界に残ったもの  作者: 灰谷 くぐり
第二章:共有された罪
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第15話 任務前ブリーフィング

 ブリーフィングルームは、

 思ったよりも静かだった。


 円形の卓。

 簡易モニター。

 椅子は五つ。


「……席、増えてるな」


 葛城が言う。


「再編成だ」


 簡易端末を操作していた担当官が、

 それだけ告げた。


「補充人員を含む暫定編成」

「詳細は現地判断」


 端末が閉じられる。


「以上だ」


 それで終わりだった。


 扉が閉まり、

 部屋に残ったのは五人。


 少しだけ、

 空気が緩んだ。


「まー、固いのはここまででしょ」


 最初に口を開いたのは、

 見知らぬ男だった。


 椅子に深く座り、

 片手をひらりと上げる。


「二階堂です」


 笑顔。


「今日から第七、

 よろしくお願いします」


「……二階堂」


 葛城が名をなぞる。


「聞いている」


「光栄です」


 大げさなくらいに頭を下げた。


「で」


 二階堂は、

 隣の椅子を軽く叩く。


「こっちも紹介しときますね」


 視線が集まる。


 今まで一言も発していなかった、

 少女。


 背筋を伸ばし、

 小さく会釈する。


「二階堂 皐です」


 声は落ち着いている。


 年は、

 久遠悠真とそう変わらない。


「兄の補助として、

 同行します」


「……妹か」


 葛城が言う。


「はい」


 二階堂は即答した。


「俺の妹です」


 隠す気も、

 飾る気もない。


「能力者か?」


「一応」


 皐が答える。


「前線には出ません」


「観測と補助が主です」


「……珍しいな」


 霧島が言った。


「家族同行は」


「分かってます」


 皐は頷く。


「例外なのも」


「危険なのも」


 その言い方は、

 冷静だった。


 覚悟している、

 というより。


 受け入れている。


「……大丈夫なのか」


 気づけば、

 久遠が口を開いていた。


 全員が、

 一瞬だけそちらを見る。


「……妹を」


「ここに連れてくるのは」


 皐より先に、

 二階堂が答えた。


「大丈夫じゃないですよ」


 笑って言う。


「正直」


「だから連れてきました」


 久遠は、

 言葉を失った。


 日和の顔が、

 脳裏をよぎる。


「一人にしておけない」


 二階堂は、

 軽く肩をすくめる。


「それだけです」


 皐は、

 兄の横で静かに立っている。


 だが。


「……兄は」


 彼女が口を開いた。


「無茶をします」


 淡々と。


「必要なら、

 自分を削ることを選ぶ」


「だから」


 視線が、

 二階堂に向く。


「私は、

 ここにいます」


 その言葉は、

 重くもなく、

 軽くもなかった。


 ただ、

 真っ直ぐだった。


「……そうか」


 久遠は、

 それだけ言った。


 胸の奥が、

 わずかに緩む。


 同じだ。


 守るものがある。


 だから、

 ここに立っている。


「じゃ、改めて」


 葛城が場を整える。


「能力の確認だ」


「簡潔でいい」


 まず、

 自分から。


「葛城」


「前衛、肉体強化」


「痛覚遮断、限界超過」


「代償は神経摩耗」


「不可逆だ」


 事実だけ。


「霧島」


「防御系」


 霧島が続く。


「空間圧縮」


「代償は肺機能低下」


「長期維持は不可」


「以上」


「はいはい、次俺」


 二階堂が手を挙げる。


「近接補助型」


「攻撃、防御、スピードを底上げ」


「代償は運動神経の摩耗」


「使いすぎると動きが鈍る……らしいです」


「らしい?」


「体感したことないんで」


 にっと笑う。


「測定は?」


 霧島。


「してません」


「誤差かなと」


 さらっと流す。


 霧島は、

 それ以上突っ込まなかった。


「……久遠」


 葛城が促す。


「代償肩代わりです」


 久遠は言った。


「他者の能力使用に伴う代償を、

 自分が引き受けます」


「種類は選べません」


「……無理は?」


 二階堂が聞く。


「……立っていられる限り」


「それで十分」


 二階堂は即答した。


「立てる人がいると、

 チームは助かる」


 久遠は、

 小さく息を吐いた。


 最後に。


「二階堂 皐」


 葛城が言う。


「能力は?」


「感覚拡張です」


 皐は答えた。


「空間内の能力反応を、

 ノイズ込みで拾えます」


「……精度は?」


「高い、と思います」


「思う?」


「比較対象がないので」


 困ったように、

 ほんの少しだけ笑った。


 その表情に、

 場の空気が柔らぐ。


「……以上だな」


 葛城が言う。


「次の任務は調査主体」


「だが、第七である以上、

 最悪は想定する」


「無理はするな」


 誰も、

 笑わなかった。


 だが。


 否定もしなかった。


 久遠悠真は、

 二階堂兄妹を見た。


 同じように、

 守るものを抱えている。


 それだけで、

 少しだけ。


 この場所が、

 人の集まりに見えた。


 それが正しいのかどうかは、

 まだ分からない。


 ただ。


 この五人で、

 次の任務に向かう。


 それだけは、

 決まっていた。

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