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90 ボクしかいないんだ


「それにしても大層な話やねぇ。地震の元を断つか。なんでうちの孫一人だけがそんな難儀なことを背負わなあかんの?国に相談でけへんの?」

「私も同意見。でもこの話をしたとして、信じてもらえるかしら?それどころか、来国光さんも剣奈も散々調べられて実験動物扱いされるのが目に見えるもの」

「そりゃそうや。やけどねえ」

「私も剣奈が抱えるには問題が大きすぎると思ってはいるのよ。でも、信頼できる人じゃないとおいそれとは話せない。そこでね、大学の恩師に相談してみようと思ってるの。あ、その話の前に、お母さん、剣奈と来国光さんのことで聞いておきたい話はあるかしら?」

「そうやね。そしたら来さんが言うてはる剣奈との契りについて聞かせてもらえる?」

 

『ワシと剣奈は神に祈りを捧げ、神に認められて契りを結んだ。今のワシと剣奈の魂は繋がっている』

「はぁ?知らん間に結婚してもうたん?うち、剣人の結婚式、むっちゃ楽しみにしてたんやけど」

「お母さん。剣奈はしばらく結婚できないと思う。さっきの邪気払いの巫女舞いだけど、処女じゃないとダメなんだって」

「はー。このご時世に処女厨かいな」

「そうそう。私も何それ、キモっって思ったのだけど、まじめな話みたい」

「それで剣奈は幸せなん?」

「ボク、クニちゃとずっと一緒にいるよ?だってボクとクニちゃは魂で繋がったパーティーメンバーだもん。ボク、クニちゃがいればどこでも平気だよ?あ、もちろんお母さんもおばあちゃんも大好きだよ。けど魔王軍との闘いは危ないもん。二人にあんな危ないとこいて欲しくない」

「危ないの?巫女舞やればいいんやないの?」

「それがね、魔王には魔王軍がいるんだ。鬼山の闘いのときは、まず黒犬と闘ったんだ。それで終わりかと思ったら今度は弓を撃ってくる鎧武者が現れた。困ったなーって思ってたら槍の別動隊が背後からきてね、さらに城からは隊列をくんで鎧武者が迫ってきたんだ。そいつらをなんとか倒してやっと終わったーって思ったんだ。でもそしたら鬼が出たんだよ。ホントビビったよ。負けちゃうかって思うくらい強くてさ。でもクニちゃと一緒に必殺技を編み出したんだ。あと神様も手を貸してくださってね、最後は鬼を真っ二つにしてやったんだよ。お母さんやおばちゃんにも見せたかったなー。ボクのカッコいいとこ」


 唖然とする二人である。犬はまだいい。弓兵?槍部隊?鎧武者?鬼?いやいやいや。ん?ちょっとまって!鎧武者ぁ!?って剣奈っ、殺人おかしてるの?


「剣奈?あのね。お母さんちょっと聞きたいんだけど。鎧武者って「人」?」

『大丈夫じゃよ。千剣破殿。鎧武者は人ではない。人のなれのはての残留思念の残滓じゃよ。それに邪気がとりついただけのこと。ただの黒震獣じゃ。人でなく邪気じゃ』

「邪気が犬や鎧武者、それに鬼になって襲ってくるの?」

『犬、猪、狼、人型、獅子、虎、竜、色々じゃ』


 剣奈が人殺しをしていない。そのことに安堵したも。けれど想像をはるかに超える過酷さである。

 警察でも無理じゃないの!?そんな危険な目に剣奈が立ち向かってるの?

 とんでもない事実を突きつけられ、千剣破と千鶴は戦慄を覚えた。


「剣奈、ほんまに大丈夫なん?しんどかったらやめてもええんちゃう?何で剣奈一人がそんな危ない目せなあかんの?おばあちゃん心配やわ」

「大丈夫!ボク、神様に選ばれたんだよ。クニちゃにも選ばれたんだよ。ボク、ヒーローなんだもん。ボクじゃなきゃダメなんだよ。誰にもかわりはできないんだよ」

「こんな小さい子が出来ることなんか限られてるやろに」


 心配する母と祖母であった。「ボクの強さを見てもらわないと」、「お母さんやおばあちゃんに心配かけたままはイヤだ」。剣奈はそう思い、勢い込んで口を開いた。


「おばあちゃん、ボクの修行、見てもらっていい?ううん。ボクの修行見てほしいんだ!」


 剣奈は立ち上がった。来国光は左腰に履かれていた。


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