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85 銃刀法違反ですっ!

 まったく女の子であるという自覚のない剣奈に千剣破はため息をついて言った。


「女の子の自覚ないのね。なら剣人、まず大事なこと約束して。こっちの世界では来くん連れ回しちゃダメ。お部屋に戻ってもらいなさい」

「え!だってボクたちは勇者パーティーメンバーなんだよ?仲間なんだよ?宿屋とかでもパーティーはみんな一緒に泊まるもんでしょ?」

「そうね。冒険の旅ならそうね。でもね、現実問題として、来くんを持ち運ぶのは法律違反です。法律守らないのは悪者のすることでしょ?そしてね、来くんがおまわりさんに見つかっちゃったら、来くん取り上げられちゃって二度と剣人のところに戻らないわよ?」

『あー、千剣破どの。ワシならたとえ剣奈と離されても、いったん隠れ場にもどったらしまいじゃ。すぐに剣奈のもとに帰れるぞよ?』

「来くんは黙ってて!」


 いつの間にか「来くん」呼びである。剣奈と同列に扱われてしまったか。いや、剣奈は来国光の(あるじ)である。主の母から見たら来くん呼びもおかしなものではないか。

 来国光は一人で納得し、来くん呼びをすんなり受け入れた。そして千剣破のあまりにもの剣幕に来国光は圧倒され押し黙った。


「剣人、銃刀法違反です。現実社会で生きていくんだからちゃんと法律は守りなさい。法律を守らないなんて勇者失格じゃないかしら」

「う、うう……」


 剣奈は反論できなかった。ぐぅの音もでなかった。その通りなのである。法律を守らないで好き勝手する勇者。それは「ざまぁ」される側のテンプレダメ勇者である。

 剣奈は品行方正な正統派勇者にならなければならない。何しろ神様に選んでもらったのだ。神様に幽世に招かれたのだ。クニちゃにもちゃんと選んでもらったのだ。ヒーローなのだ。勇者なのだ。ここでボクが闇落ちするわけには行かない。


「クニちゃ、ごめん。ボク、法律守らないとだからお部屋に行ってもらっていい?帰還のポーズと呪文唱えよか?」

『うむ。仕方ないのお。あー、帰還の術式は感謝とともにワシを神に捧げて帰還させていただくという術式じゃ。剣奈の幽世から現世への転位を伴わなのであれば普通にワシが自分で隠れ場に帰れるがの』

「え!そうなの?」

『うむ』

「あ、待ちなさい。今は戻らなくて大丈夫です。話し合いが終わったらお部屋にもどってくださるかしら?」

『うむ。承知した』

「じゃあお母さんは顔洗って朝ごはん作らなきゃ。剣人も顔洗って歯磨きしてらっしゃい。おばあちゃんにもちゃんと話さないと」


 やがてトントントントン、ジューという朝食を作る音とともに、母と祖母が和やかに話し合う声が聞こえてきた。

 

「お味噌汁とハムエッグとサラダとご飯かなぁ」

 剣奈は漏れ聞こえる音とにおいから判断し、待ち遠しい気持ちになった。

 「あ、おしっこ」

 

 トイレに入り、無意識のまま座って用をたす剣奈であった。


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