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84 女の子の自覚ない剣奈 トナラー&ストーカーだよ?

「うーん、うーん」

「あれ?お母さん?どうしたの?お母さん大丈夫?お母さん、お母さん」


 翌朝、隣でうなされている母の声に剣奈は起こされた。千剣破は心配する剣奈の声で現実に引き戻された。

 千剣破は長い夢を見ていた。夢の中で千剣破は転職して剣奈とともに実家に帰っていた。千剣破は剣奈を宝塚音楽学校に進ませようと考えていた。お受験のため、千剣破は剣奈をピアノ、舞踊、バレェなどのお稽古ごとに通わせていたのである。

 千剣破は預金通帳の残高をみて青ざめていた。千剣破は昼の仕事に頑張り夜にはパートに出かけた。てんてこ舞いの毎日で千剣破はキリキリ回っているのにどんどんお金は出ていいた。全然お金が足りなかった。

 剣奈の素晴らしい輝きを放つ演武が千剣破の脳裏に焼き付いていた。宝塚大劇場の舞台とそれが潜在意識で重なったのである。

 

 剣奈に揺り起こされた千剣破である。想い瞼を開けてぼんやりと剣奈の顔を眺めた。だんだんと千剣破の心は現実に戻っていった。


「剣奈おはよう」

「おはよう、剣奈って?」

「剣人は女の子を選んで、それで現実世界でも女の子でいることにしたんでしょ?なら、剣奈って呼ばないと」

「え?あ、あれ?そっか。あのね、昨日クニちゃと神社にお参りしたんだ。異世界の闘いで力を貸してくださった神様へのお礼しなきゃって。それでクニちゃを背中にしょって参拝したの。すごかったんだよ。お参りしてたら急に風が吹いて大きな杉が揺れて神社の中で何かピカって光ってね、気が付いたら異世界だったんだ。まあいいやってもう一つの神社に向かったんだ。そしたらなんかブォーンっていう音が聞こえてきてさ、それでさ、」


 千剣破は眉にしわを寄せ、額に中指を当てながらいったん剣奈の話を止めた。

 正直何が何だかわからない。異世界で神様が力を貸してくださった?神社の中で何かが光った?御鏡のこと?神社でブォーン?まさか鳴釜の神事?

 いやいやいや。気になるけれど、今はそれじゃない。今は剣奈が女の子のままでいることだ。まずはそれを確認しよう。


「ちょっといったんストップ。えーっと話を整理すると、来国光さんといっしょにお参りしたかったと。来国光さんと一緒にこっちの世界に来たから女性のままだったと?それでうっかり今までそのままでいたってこと?」

「うん。あ、ちょっと違うかな。異世界でクニちゃと猛烈な死闘を繰り広げてね、それでやっと勝ったんだ。勇者パーティーの仲間としてそのまま現実世界にもどったんだ。そっからクニちゃとずっと一緒にいる。それだけ」

「えっと、つまり、女の子のままずーっと数日過ごしてたってこと?」

「えっと、あ、そっかな。言われてみると、たしかにそんな感じ」

「じゃあ電車も、ホテルも、お参りも、新幹線もずっと女の子だったのね?」

「うん。そうなるね」

「変な男の人に声をかけられたりとか、危ない目に合ったりしなかった?」

「うーん。そういえば、ガラガラなのに電車の中で隣に座りたいって言ってきたお兄さんがいたけど、急に「ぶすっ」とか悪口言っていなくなっちゃった。あとお参りの時、ずっとついてきてたお兄さんもいたけど、いつの間にかいなくなってた」


 千剣破は再び眉にしわを寄せた。やっぱりそうだ。こんなかわいい女の子が一人でいて無事に済むわけがない。

 ナンパトナラーにストーカー。いや、そもそもこの子、自分の身体が女の子だっていう自覚がないのかも。


「剣奈、確認だけど、ずっと女の子でいるつもり?」

「んーっと、クニちゃといたらどうしてもそうなっちゃうんだよ。でも学校始まったらそんなわけにいかないってボクもちゃんとわかってる。だから学校始まる時にはちゃんとクニちゃにお部屋に戻ってもらうよ」


 突っ込みどころ満載である。そもそも来国光をリュックに入れて運ぶ?ダメである。銃刀法違反である。警察に見つかったらただでは済まない。しかも無登録刀である。

 

 あと一つ分かったこと。剣奈は現実世界で今後も男の子として生活するつもりでいるということ。

 

 あまりもの剣奈の考えなさぶりに千剣破は頭を抱えてうなり始めた。

 頑張れ千剣破。

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