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77 白黄輝の刀身


「ん♡ いっけぇー!」

 

 剣奈は跳躍した。剣奈の姿は片目になった鬼の死角に入り、鬼は剣奈の姿を見失った。

 剣奈は鬼に向かって猛烈な勢いで疾走した。順手に構えられた来国光が大きく振りかぶられた。左足が踏み込まれた。さらに。

 

「ん♡」

 

 振りかぶられた来国光を白黄に輝く剣気が包んだ。

 

「んあぁ♡」

 

 力強く踏み込まれる右足。左半身(ひだりはんみ)から右半身(みぎはんみ)に入れ替えられる(たい)。連動して振り出される右ひじ。一拍遅れて前腕、手首。そして、来国光の輝く刀身が剣奈の頭上高く表れた。ブォン。真っ向唐竹割り。

 

 鬼の身長八尺、二百四十二.四cm。剣奈の身長百二十五cm、わずか四尺。いかに剣奈が大きく振りかぶろうと、その刀身は鬼の頭に届くことはない。



………………


『剣奈、あの獅子が如き黒震獣を倒した時のことを覚えておるか?』

「もっちろん。逃げる黒獅子の横っ腹をぷしゅうっ、だったよね」

『うむ。ところでじゃ、あの時、ワシの刀身はどこにあった?』

「もちろんボクの手の真ん前でしょ?」

『うむ。して、黒獅子はどこにおった?』

「一生懸命横っ飛びで逃げてたから……、 あれ?」

『気づいたか?剣奈。おぬしは刃の届かぬ敵を斬ったのじゃ』

「あれ?え?やばっ!ボクすごくね?」

『うむ。あの時のワシの体感なのじゃが、刀身に力がみなぎっての。斬撃を繰り出された時、刀身が長く飛び出した気がしたんじゃ。摩訶不思議な思いじゃった』

「あ!知ってる!剣にオーラをまとわせると、剣がすっごく伸びるんだよね!ビュンッって!物語によっては柄しか無いのに、オーラを流すと魔法の刀身が現れるんだ!ビュンって!」

『なんじゃと!?刀身が伸びるじゃと!?無いはずの刀身が現れるじゃと?』

「うん。そうだけど?」

『剣奈はその心象を、(ことわり)とともに明確に思い浮かべることができるのか!?』


 来国光の聞き慣れない難しい言葉は理解できない剣奈だったが、言いたいことは分かった。オーラを流すとビームの剣が伸びる。何の不思議もなかった。いくらでも頭に思い浮かべることができた。


「あたりまえじゃん!だってボク、ヒーローだもん」


……………………


 振りかぶられた来国光の刀身は白黄に輝いていた。白黄に輝く刀身、輝刃は長く鋭利だった。切っ先は黒震獣鬼の頭上はるか高かくにあった。そして刀が振り下ろされた。

 ブォン。輝刃は鬼を切り裂いた。来国光の伸びた光の刀身は、鬼の頭頂から脊柱、仙骨に至るまで真っ二つに両断した。

 鬼の死角から現れた光が、一つになった目を眩ませた。鬼は何が起こったのかを理解することすらできなかった。切断面から黒い靄が立ち昇り、やがて全身が大気に解けた。


 鬼が、消滅した。


「クッ、クニちゃ、クニちゃ、クニちゃ!できたよ、ボク。やったよ、ボク!」

 

 剣奈、会心の笑みであった。

 

『うむ。うむ』

 

 来国光の理解のできない次元で剣気を使いこなし始めた剣奈だった。来国光は頷くことしかできなかった。


 剣奈が眩しかった。嬉しかった。胸が高鳴った。


 満面の笑みを浮かべる剣奈を、来国光は眩しく見つめていた。


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