3 小学校1年生の冒険(2) 警察で保護
「ふー疲れた やっとたどり着いた」
「お母さんどこかな」
ケントは5階建てのスーパーの建物を歩き回った。けれど母親には会うことはできなかった。
子供足で自転車。到着まで何時間もかかっている。母親が電車で来て買い物して帰るのに十分な時間。
「仕方がない 帰ろ」
ケントは疲れた足を引きずってトボトボ帰ることにした。
母親に会えたとして自転車で来たので自転車で帰ることにはなったろう。あるいはびっくりした母親は迎えに父を呼んだろうか。
一生懸命帰りの自転車を走らせる。電車のT字の分岐点。家までの距離の半分ほど。
「疲れた でももう少しで帰れる」
ここでケントはミスを犯す。T字の分岐点の下は商店街になっていた。方向感覚を惑わされて勘違いしたケントは逆方向に向かってしまった。
一駅、そして二駅。
自宅周辺とは明らかに違う街並み。
呆然と立ち尽くすケント。すでに日が暮れて辺りは暗い。
「どうしよう」
反対方向にきっちゃったんだ
いまから逆方向に4駅むり、、」
疲れた顔で自転車にまたがって思案にくれるケント。ちょうど見回りのお巡りさんが目ざとく発見。
「どうしたの?ぼく」
「自転車で寺野から府馬に行ったんですけど帰り道で間違えちゃったみたいで、、」
寺野といえばかなり遠い。見た目の割にしっかりした受け答えだけど、このまま返すわけにもいかないなぁ。とりあえず交番に連れて行こう。
「もしもし ケントくんのお父さんですか? 森野駅前交番の山下といいます。ケントくん自転車でここまできたらしいんですけど、お迎え大丈夫ですか?」
「わかりました。すぐ向かいます。」
ガチャ
「ケントくん、お父さんが来てくれるからちょっとだけ待とうね。もう大丈夫だよ。」
怒られるかな〜
ドキドキしながら
「ここまで自転車できたのか。すごいな」
「うん」
「そうか」
言葉少なげにケントの話を聞く父親。心配とあきれもあるだろうに、ただケントの話を聞き頷くのだった。否定的なことは一切言わず。
疲れ果てていたケントはいつしか深い眠りに落ちていった。