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62 黒獅子出現


 ウォォォォォン!


 ボス犬の遠吠えに、剣奈を取り囲む黒震獣犬は、一斉に剣奈に殺到した。

 前方円の群れは低く駆け、後方円の群れは高く跳んだ。左右の動きに相手の意識を誘導し続け、いきなりの全方向上下からの突進である。相手の意識の虚をつくような、幻惑させるような動きだった。

 

 剣奈は、前方に低く跳んだ。左つま先で地面を大きく蹴った。

 ヒュン。左腕は大きく引かれ、右腕は左前方から低く駆けてきた黒震獣犬を横から薙いだ。黒犬が黒霧となり消えた。残十四匹。 

 剣奈の勢いは止まらない。

 ヒュン。刀身は左前方から駆け寄る黒震獣犬を薙いだ。回転する勢いのまま左前方から跳躍してきた黒震獣犬の下腹を、下から仰ぎ見るような姿勢から薙いだ。

 二匹の黒震獣犬が霧散した。残十二匹。

 

 ズザザザザザッ。剣奈は最初の位置からみて真逆方向を見る形に足を滑らせながら着地した。東を向いていた剣奈は、今は西を向いていた。

 剣奈に向って下から低く三匹の黒震獣犬が殺到し、上からは三匹の黒震獣犬が跳躍してきていた。

 ヒュン。剣奈は一重身(ひとえみ)の構えから身を沈め、前方正面低く疾走する黒震獣犬を真下から切り上げた。その勢いそのままの刃筋は円を描くようにきらめいた。

 跳躍してきた黒震獣犬は下腹から切り裂かれた。二匹の黒震獣犬がほぼ同時に消滅した。残十匹。

 

 グルルルルルル。僅かな間に半数十匹の仲間を消滅させられた黒震獣犬はそれぞれの位置で剣奈を睨み、低く唸り声をあげた。黒震獣犬の動きは止まっていた。

 西向きの一重身(ひとえみ)の構えから円を描くように刃筋を光らせた剣奈は今、戦闘開始時点と同じく東に向く形で佇んでいた。前方に跳躍した分、剣奈の位置は最初よりも東側に移動していた。


 今度は剣奈の番だった。剣奈は左前方、斜め前に駆けた。

 ヒュン、ヒュン、ヒュン。不意を突かれた三匹の黒震獣犬は何もできず、殺到する剣奈に次々と切り裂かれた。あっという間の殺戮。

 三匹の黒震獣犬は抵抗もできないまま大気に霧散した。残七匹。

 

 剣奈は南側を向いた。その剣奈の前方南側に黒犬が三匹、左手遠方西側に四匹の黒犬が群れていた。黒犬の群れは遠く離れた二つの塊に分断されていた。

 剣奈は前方、南側に向かって駆けた。前方三匹の黒震獣は、殺到する剣奈に恐慌をきたした。疾走してくる剣奈に向って、やみくもに突進した。統制の取れていないバラバラの突進。

 ヒュン。剣奈は右から円を描くように横一文字に刀を薙いだ。三匹の黒震獣犬が一瞬にして薙がれ、消滅した。

 遠くの黒犬の群れは六匹の黒震獣犬が次々と殺戮されていく様を呆然と眺めるしかなかった。残四匹。

 

 剣奈は最初の位置から右斜め前方、南東の位置にいた。そこから残る四匹の黒震獣犬の群れを静かに眺めていた。

 両者の間には距離があった。先ほどの激しい戦闘が嘘のように、静寂が訪れた。

 一人と四匹の群れは対峙しつつ、静かににらみ合っていた。膠着状態だった。グルルルルル。四匹の群れが醸し出す低いうなり声だけが響いた。


 ウオォォォォン!


 突然ボス犬が大きく吠えた。三匹の黒震獣犬は魅了されたようにボス犬に向かってしずしずと歩を進めた。

 ボス犬は近づいてきた左の黒震獣犬に嚙みついた。キャゥン。噛みつかれた黒犬は哀れな鳴き声を上げて消滅した。続けて前方の、さらに右方の黒犬がボス犬に次々に食らわれた。

 四匹いた群れはボス犬一匹だけになった。


 グルルルルルルルルル!


 ボス犬は低く大きな唸り声をあげた。残り一匹になった黒犬は黒く禍々しさを増した。そして脈動した。

 黒犬が脈動するごとに、黒犬の体が膨らんだ。ボス犬は配下を食らい己の邪気を高めた。体長一mの大きなシェパードほどだったボス犬は今や体調二mの巨大犬、いや獅子が如き大きさまにまで巨大化していた。

 身長一二五cm、小柄な剣奈にとって巨大化したボス黒震獣犬、いや黒震獣獅子は圧倒的な大きさだった。

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